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いつもならマリアに弱音を吐くところですが、私の社交界デビューを何よりも楽しみにしているマリアには、このような弱音は吐けません。
「とても疲れたましたので、夕食はお部屋で頂きます。それまで少し休みますね」
「かしこまりました」
丁寧に頭を下げ、マリアは部屋を後にしました。
扉が閉まり、マリアの気配が無くなるのを確認し、ハアァァァと大きな溜息をつきながら、横向きでソファーに突っ伏します。
「景色の綺麗な所で、のんびりと風を感じたいですね……」
アルとエテルノさんと三人(一人と二匹?)でピクニックも良いですね。
ドレス関係も今日で終わり、明日は特にやるべきことは無かったはず。
「明日、アルと初めて会った森にピクニックに行きませんか?」
アルがピクリと耳を立てる。
『弁当に唐揚げは入っておるのか?』
「ふふっ。では料理長に頼んでみますね」
『主とアル殿が出会った森とは、どのような場所なのかのう?』
首を傾げるエテルノさんに、小さな湖に小動物が集まる穏やかな森だと説明をしますと、とても興味を持たれた様子。
『明日が楽しみだのう』
と、ご機嫌にアルとソファーで寛ぐのでした。
翌日、料理長にお弁当(唐揚げ大量)をお願いし、三人で森へと向かいます。
籠の中身はBLTのサンドイッチ、唐揚げ、玉子焼き、グラタンなど。
アルとエテルノさん用の大量の唐揚げの入った別の籠と一緒に、魔法で浮かせて運びます。
アルはご機嫌で尻尾を振りながら歩いており、エテルノさんは小さな羽を動かしながら飛んでアルに着いて行き、私はその後をゆっくりと着いて歩きます。
あちらこちらで花が咲いており、風に乗って甘い香りが漂っている。
少し歩くと小さな池が見えて来ました。
池の側には行かず、少し離れた場所に敷物を敷きます。
「池に近付くと、小動物達が逃げてしまいますから、ここでお昼にしましょう」
アルとエテルノさんの前に大量の唐揚げの入った籠を置くと、二人(二匹)は目をキラキラさせて。
『『頂きます(なのだ)』』
と、唐揚げの山に挑むように食べております。
私も籠を膝に乗せ、まずサンドイッチからいただきます。
穏やかな風が肌を撫でるように抜けていき、鳥の囀りが耳に心地が良い。
『ああ、その大きな唐揚げは、我が次に食べようと思っていたやつなのだ』
『他にもまだ沢山あろう。これは儂が先に手にしたのだから、儂のものじゃ』
時々雑音? も入るけれど、それもまた楽しかったり。
何も考えずにゆったりと穏やかに過ごす時間は久しぶりな気がします。
敷物の上にゴロンと仰向けに転がり、ゆっくりと流れる雲に視線を移す。
……学園に戻っても、こういった時間を作るようにしようと思ったのでした。
『主、そろそろ起きねば風邪をひくぞ』
エテルノさんの念話で、目が覚めました。
「エテルノさん、ありがとうございます。いつの間にか眠ってしまったのですね」
『よく眠れたのなら良かった。最近の主はあまり眠れていないようだったからの』
心配掛けてしまっていたようです。
『まぁ、横のアルはいつでもグッスリだがな』
苦笑いのエテルノさんの言葉に横を見ると、アルが丸まってスヤスヤと気持ち良さそうに眠っています。
ふふっ。自然と笑いが込み上げてきて。
『主は笑っている方がいい』
と、エテルノさんがパタパタと小さな羽を動かして私の顔の目の前まで飛んできて、短い腕を伸ばして頭を撫で撫でしてくれました。
「ありがとうございます」
穏やかで幸せな時間。
こんな時間がずっと続けばいいと、そう願うのでした。
◇◇◇
週末を実家で過ごし、学園寮に戻って参りました。
ドレスの類は出来上がり次第連絡が来ることになっておりますが、正直興味はありませんので。
当日まで私が目にすることは無いでしょう。
パーティーのことは忘れて、今を楽しまないと時間が勿体無いですよね。
アルとエテルノさんのお陰で、少しだけですけど気持ちが復活致しました。
このところサボってしまっていた魔力コントロールも再開し、魔武器である『月虹』を使い熟すべく、練習し始めました。
月虹は形状変化で色々な武器に変わる素晴らしい武器ではありますが、私が使いこなせなくては意味がありません。
剣や槍、鞭は私には合わないことが早々に分かりました。
意外にも指で操る綱糸との相性は悪くないようで、銃との相性も良さそうです。
今後はこの二つを中心に訓練していきたいと思います。
パーティーのことを(わざと)記憶の隅に追いやり学園生活を満喫しておりましたが、いよいよ、遂に、今度の週末は私の社交界デビューの日です。




