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数の少ない食虫花を探すのは大変というのもあるが、先ほどの理由からなんとなくその依頼を受ける気がせず、違う依頼を見てみる。
キラービーの巣の近くに群生している、薬草の採取というものに目が止まった。
これは、なかなか悪くないのではないか。
清水を汲む依頼は嵩張って重く、持ち帰る量も決まってしまう。
異世界では収納ボックス的なものは、空間属性持ちの者でないと使えない。
収納の魔法陣を刻んだバッグもあるにはあるが、収納出来るものは精々1メートル四方くらいまでだがとても高価で、例え貴族の子息令嬢とはいえ簡単に手の出るような代物ではない。
空間属性持ちの者でも、魔力量によって収納出来る量が変わってくる。
この属性を持つ者は少なく、パーティーに一人居るととても喜ばれるのだが……。
奴隷制度は百年ほど前に廃止され、現在は売っても買っても極刑となる。
だが珍しい属性を持つ者は悪い輩に目を付けられ、連れ去られた後に奴隷として従属強制の首輪をつけて売られるなど、裏ではまだ奴隷制度はなくなっていないのが現状だ。
カレンは空間属性も持っているが、父と兄様とギルドマスターとサーナ以外の者には秘密にしている。
このことは例えリン達でも決して話すことは出来ない。
珍しい属性持ちということがどこかで漏れてしまった場合、周りにいる者も巻き添えになる可能性があるだ。
なので皆の前でというより、人目のある所で収納ボックスを使用出来ない。
せっかく(閻魔大王様より)頂いた能力ではあるが、そういった意味でこの力はないものとして扱おうと思っている。
カレンは先ほど見ていた薬草依頼の紙を指差した。
「こちらの薬草採取は如何ですか?」
「うん、いいね。僕もそれがいいかなと思っていたんだ」
ウィリアムとの会話にリンとキースも同意し、明日の依頼はこの薬草採取に決まった。
依頼書を依頼板から外し、受付に持って行く。
受付には目に眩しい蛍光ピンクのタンクトップを着用した、マッチョでボウズな男性が鎮座していた。
「アンドリュー、これお願いしたいんだけど」
リンがピンクでマッチョなボウズの男性に声を掛る。
「あら、リンじゃない。もう、アンドリューじゃなくて、アンて呼んでって言ってるじゃな~い」
……オネエ様のようだ。
「後ろの子はお友達?」
「うん、ウィリアムは分かるでしょ? この子がカレンでこっちはキース。学校の授業でもパーティー組んでるんだ」
「あらまぁ、お友達が出来たのね! ならお祝いしなきゃね~」
言うが早いかオネエ様はスクッと立ち上がると、奥の酒場に向かって野太い声で叫ぶ。
「野郎ども、祝杯だっ。リンが友達連れて来たぞ!」
「「「うぉぉぉぉお」」」
異世界では十五歳からお酒が呑めるのだが、カレン達はまだ十三歳なので、ジュースを手渡される。
「みんなグラスは持ったわね? じゃあ、リンが目出度く友達作れた記念に」
「「「乾杯っっっ」」」
皆ご機嫌にお酒を呑み、リンに口々に「おめでとう」の言葉を掛け、キースは奥で何やら筋肉自慢のギルド員達と腕相撲を始め、ウィリアムはその横でどちらが勝つか賭けごとのようなことを始め、収拾がつかない状態である。
ぼけ~っとその様子を見ていると、アンがお酒を呑みながらカレンの前にやってきた。
「リンはね、特待生として学園に入ることで、友達作りを諦めてたのよ」
カレンの横に着席すると、視線はリンの方に向けながら話し出す。
学園では、特待生は貴族と同じSクラスということが決まっている。
すべてではないけれど、平民と同じ教室で学ぶことを良く思わない貴族は多いとのこと。
とても残念なことだが、カレンも自身の目で見ているので、アンの言いたいことは分かる。
Sクラスは他のクラスとはフロアが違うため、なかなか通常クラスの者と交流するチャンスがない。
平民であるリンを受け容れる貴族などいないだろう、と。
学園を優秀な成績で卒業し、両親と弟妹達のため、少しでも良い条件の就職先を見つけるため、特待生としてこの学園に入るのだ、と。
友達は出来なくても、勉強する時間はたっぷりあるし、長期休暇になれば戻ってくるから、その時は愚痴を聞いてもらうからね、と笑顔で入学していったとアンは語った。
それからアンは視線をカレンへと向けて微笑んだ。
「リンと友達になってくれて、ありがとう。あの子とっても楽しそうだわ」
「わたくしも、リンちゃん達が一緒にいてくれて、毎日が楽しいです」
その後ギルドの皆から、
「今日は祝いだから、遠慮しないで食って行け」
と言われ、お言葉に甘えてご馳走になりました。
実践授業でギルドの依頼を受けるのは月一回ほどあるようなので、「今後ともよろしくお願い致します」と挨拶をして、学園に戻ったのだった。




