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今カレン達はギルド『幻影』に赴き、真剣に依頼板を見ていた。
パーティーを組んだ実践授業を明日に控え、午後の授業は『依頼をギルドで選んで戻ってくること』であった。
依頼はパーティーの皆で何にするのかを決めなけれならない。
とはいえ、パーティーのメンバー全員が同じギルドに所属しているとは限らない。
カレン達も幻影と暁で分かれている。
まずはどのギルドで依頼を受けるのかを決め、そしてどんな依頼を受けるのか決めるのである。
暁の依頼板はランク毎に板が分けられているが、幻影では横長の大きな板に、下が低ランク、上に行くほど高ランクの依頼が貼られている。
これは幻影には子どもの登録者も多いので、低ランクで背の低い子どもにも見易いように配慮しているとのことだった。
見た目ゴツい人が多いが、リンの言う通り優しいギルドなのだろう。
カレン達はCランクの依頼書の辺りを探していたが、ゴブリン討伐の依頼が多い。
討伐以外の依頼では、キラービーの巣の近くに群生している薬草の採取や、マッチョゴリラの縄張り内の清水を汲んでくるなどがあった。
ゴブリンは身長百~百二十センチほどで全身緑色の人型の魔物だが、見た目が醜悪で知能はあまり高くない。
体にはボロ布を纏い、棍棒を持って振り回してくるのが特徴といえば特徴だろう。
キラービーは体長五十センチほどの、見た目はクマンバチを大きくしたような感じだ。
お尻の針には毒があり、これに刺されると早く治療をしないと刺されたところから壊死していき、最悪死亡することもある。
ちなみにキラービー単体の討伐はBランク、キラービーの巣の破壊依頼はAランクだ。
針と毒は売ることが出来る。
マッチョゴリラは名前の通り二足歩行の筋骨隆々なマッチョなゴリラで、縄張り意識がとても強い魔物だ。
拳は岩をも砕き、一メートル大の岩くらいであれば余裕で投げてきたりもする。こちらも討伐はBランク。
毛皮を売ることが出来るが、状態によって値段が変わる。
「カレンとキースは、受けてみたい依頼ってある?」
リンに聞かれるが、受けてみたいと思うような依頼は特になく、出来たら討伐以外が……とは言えず、カレンは首を横に振った。
「見事にゴブリンばっかりだな」
キースが嫌そうに顔を顰めている。
ウィリアムも困ったような顔をしながら依頼版を覗き込んでいた。
「Bランクの依頼からは魔物の種類が増えます。ゴブリンは他の魔物のように、牙や毛皮や肉など売れるものがありませんからね。(見た目も醜悪でギイギイ煩いですし)とりあえず採取ものを受けて、キースとカレンのランクをCまで上げてから討伐依頼を受けるというのはどうでしょう?」
一部ウィリアムの心の声が聞こえたような気がするが、とりあえず討伐は回避出来そうで、ホッと息を吐く。
ゴブリンの討伐は、確か右の耳をナイフなどで切り落とし持ち帰ることで討伐完了の証明になる、だったはず。
遺体をそのまま放置するのはダメで、火属性持ちの者は焼却、土属性持ちの者は埋める、どちらの属性も持っていない場合自力で穴を掘って埋めることが義務とされている。
遺体をそのままにしておくと、アンデッド(亡霊)が寄ってくるためである。
アンデッドが増えると土地が汚され浄化が必要となり、それを防ぐために義務化されたのだ。
魔物によって持ち帰る部位は決められており、ゴブリンの耳というのは……正直気持ちの良いものではない。
カレンは絶対に触れることは出来ないだろう。
ウィリアムの言った通りに、採取依頼の中から選ぶことになった。
探していると、食虫花の種の採取というのがあった。
食虫花は根を張っているので移動はしないが、棘のある触手を伸ばして攻撃してくる。
薔薇のような大きな花の中央に口があり、普段は花弁で口を隠しているが、触手で捉えた獲物を食す時や、攻撃のために口から種を飛ばす時は花弁が開くのだ。
食虫花の種は、粉末状にして飲むと熱を下げる効果がある。
種の採取方法としては、触手が届くか届かないかのギリギリの位置で挑発し、怒った食虫花に種を吐き出させ、それを回収するという何とも言い難い方法なのだが……。
食虫花は爽やかな甘い香りを発し、近付いてきたキラービーなどを捕食する。
その香りのもととなる蜜は少量しか摂れず、高値で取引されているのだ。
この蜜は香水に加工され貴族女性の間で大変人気の高い商品となっており、それを狙って食虫花は乱獲され、個体数は年々少なくなっている。
本来討伐はCランクとなるが、数が少ないために絶滅危惧種として討伐非対象となり、現在は種の採取依頼のみとされている。
討伐者は捕まると罰金刑となりますが、それでも密猟者が後を絶たないのだ。
種の採取方法といい、何だか少し気の毒である。




