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「「おはよう(ございます)」」
一階のロビーでキースたちと合流して、校舎へと向かう。
こうして四人揃うのは二ヶ月ぶりだ。
カレン以外の皆は日焼けしており、健康的な小麦色の肌である。
カレンは日に焼けるとすぐ赤くなり水膨れが出来てしまうので、常に日焼け止めでガードしなくてはならないのだ。
とはいえ貴族令嬢として日焼けは良くないのだけれど。
久々に集まったので、話は尽きることなくあっという間に教室に到着した。
席は四人かたまっているので、先生が教室に入ってくるまで話は続く。
「あ、そうです。これ、皆さんにと思って……」
カレンが鞄から取り出したのは、自分で稼いだお金で購入した、パワーストーンのブレスレットである。
皆とお揃いで着けられたらと思い、色違いのものを四つ選んだのだ。
リンには人生の成功を守護する奇跡の石である、翡翠を使用したもの。
キースには勝利と成功へと導く太陽神の石である、サンストーンを使用したもの。
ウィリアムには豊穣と富を象徴しツキを呼び込むと言われる、イエローアベンチュリンを使用したもの。
そしてカレン自身には、恐怖心を克服し迷いを断ち切る、チャロアイトを使用したものを。
「気に入って頂けたらよろしいのですが……」
石の効果を重視したために、皆のイメージの色とは若干異なるので、もしかしたら好みでない色かもしれない。
……という心配は無用なものと言うほどに、皆喜んでくれた。
石の効果を説明すると更に喜んでくれて、散々悩んで選んだ甲斐があったというものだ。
ヴァイス先生が「おはよう」と教室へ入り、出席をとり終えるとすぐに始業式のためホールへ向かう。
入学式と同様に各学年、クラス毎に別れて着席していく。
校長先生の長い話が始まるとともに、横のリンが夢の中へと旅立つ。
前に座っているキースは大きな欠伸をし、ウィリアムに小突かれている。
始業式が終わり、リンとキースを起こして教室へ戻った。
今日は始業式とHRのみで授業はないのだ。
「全員席ついたな、よし。皆も知っているとは思うが、今学期からは実践授業の一つとして、パーティーを組んでギルドの依頼を受けてもらう」
教室内が騒めきはじめたが、先生の「説明はまだ終わってないぞ」の一言で、再び静かになる。
「四~六人でパーティーを組んで、ここに用紙を置いておくから今日中にメンバーと(パーティーの中での)リーダーを記入して提出するように。俺は職員室にいる。提出終わった奴から帰っていいぞ」
そう言っていつものようにサッサと教室を出て行った。
「騒ぐなよ」の一言を添えて。
キースが席を立ち用紙を手にして戻ると、その用紙をウィリアムの机に置いて「書いといて」と席に座る。
「リーダーはウィルでいいよな」
カレンとリンの方を見ながらサラッと言われ、当たり前のようにパーティーメンバーの中に自分が入っていることに、感動しているところである。
前世ではいつも最後まで残って、人数の少ないチームに押し付けられるようにしてメンバー入りし、申し訳なくも肩身の狭い思いでいたのだ。
「賛成~」
リンが片手を上げ、カレンも「ウィリアム様がお嫌でなければ」と、賛成の意を示す。
キースがニヤッと笑いながら「よろしく、リーダー」と言うと、ウィリアムも悪そうな笑顔を向けた。
「リーダーの言うことは絶対だ。キース、腕立て百回な」
「ふざけんな」
このやり取りを見るのも二ヶ月ぶりだ。
やはり四人でいるのは楽しい!
ウィリアムが用紙に記入を終えると席を立ち、四人で職員室にいるヴァイス先生の元へ行き、用紙を渡して寮へと向かう。
「腹減ったな~」
キースがお腹をさすりながら切なそうに呟いた。
「マリアに言って、勝手に昼食の用意をさせて頂いておりますが……」
「マジでっ!?」
キースが満面の笑みを浮かべて喜ぶ。
「マリアさんの作るご飯、何でも美味しいんだよね~」
リンもご機嫌である。
「いつも作ってもらっているお礼に、お菓子でも買って行きましょうか?」
ウィリアムにリン達が賛同したけれど、お菓子は母から山のように頂いており、これ以上増えては困ると理由を話し、丁重にお断りさせてもらった。
「じゃあお茶は……」
それも父から山のように頂いたので、丁重にお断りさせてもらう。
「「「……」」」
「マリアはアロマオイルなどの良い香りがするものが好きですよ?」
マリアはきっと何でも喜んでくれると思うが、これならば更に喜んでもらえることだろう。
さらっと提案させてもらった。
それならばと、ウィリアムが新作のアロマオイルを商会より取り寄せて、後日改めてマリアに渡すことに決まる。
新作とか、きっとマリアは大喜びすることだろう。
皆の顔にもホッとしたような笑みが浮かぶ。
そして止まっていた足を寮へ向け、再び歩き出すのだった。




