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効率よく二人で手分けしてククイの実を集めることに。
アルもせっせとお手伝いをしてくれている。
少しずつ場所を移動しながら、小一時間ほどでギルドから渡された袋二つがククイの実で一杯になった。
「これだけあれば、大丈夫だろ」
一つでも結構な重さがあるのに、キースが両方の袋を持ち上げた。
「一つ持ちます」
「いいから、いいから」
「すみません」
「違うだろ? そう言う時は、何て言うんだっけ?」
「あ、ありがとう……ございます?」
「そうそう」
キースは八重歯を見せてニカッと笑う。
キースのこの笑顔を見る度に、不思議とカレンの胸の奥がホッコリと温かくなるのだった。
三十分ほど歩いて街の東門に到着した。
中に入るためには通行税として住人は銅貨三枚を支払わなければならない。
ちなみに他国から来た者は銅貨十枚である。
キースと、中に入るための列の一番後ろに並ぶ。
十分ほどで順番が来て、二人とも真新しいブロンズカードを提示する。
お金を支払い、門をくぐったその足で真っ直ぐにギルドへ向かい、納品することで依頼達成となった。
初めて稼いだお金は少ない金額だが、自分で働いて得たものだ。
カレンは嬉しさに自然と笑みをこぼす。
それからはキースとほぼ毎日のように依頼を受け、FランクからEランクとなり、そして……。
「おめでとう! Dランクに昇格よ。はい、これに魔力を流してね」
古いカードと交換で渡された新しいカードに魔力を流し、サーナに渡す。
受付にある機械で処理されてから、シルバーカードを受け取った。
「「ありがとう(ございます)」」
遂にシルバーカードである。
「やったな」
キースと二人揃って浮かれポンチになり、ハイタッチを交わす。
これで少しでもリン達に近付くことが出来ただろうか?
◇◇◇
長期休暇明け前日。
父、母、使用人達に挨拶をし、久しぶりに学園寮へと戻ってきた。
ラルクは生徒会の引き継ぎがまだ終わっていないとのことで、一足先に学園寮へ戻っていた。
……約二ヶ月ぶりの寮。
入学してから三ヶ月ほど生活していた部屋だったが、すっかり馴染んでしまったのか、『帰って来た』という気がする。
リンはまだ帰っていないようだ。
今のうちに両親と使用人達から頂いた(持たされた)お土産を整理しておくことにした。
母からは友達とのティータイムにと珍しいお菓子を、父からは珍しいお茶を、使用人達からは巷で話題の小説を頂いた。
……とてもありがたいが、どれも山になっている。
後ほどキースとウィリアムの部屋に、お菓子とお茶をお裾分けに行こう。
それでもかなり余ってしまいそうだが……。
「カレン様、お茶のご用意が出来ましたので、少し休憩されませんか?」
「ありがとう。すぐ行きますね」
本の山を本棚に入れ終わり、リビングへ向かう。
凡そ二ヶ月間の長期休暇の半分ほどを、キースと過ごした。
何とかDランクまでランクを上げた辺りでお互い忙しくなり、Dランクの依頼はまだ一度も受けてはいない。
討伐依頼は正直尻込みしてしまうけれど、いつかはやらなければならないことで。
授業で受けるグループでの依頼が、カレンの初めての討伐になるだろう。
リンとは長期休暇中に一度だけ、カフェでお茶を楽しんだ。
彼女は一人でギルドの依頼を受けており、「稼げる時に稼がなきゃね」と弟妹の学費の足しになるように頑張っているようだった。
ウィリアムは商会の手伝いで忙しいらしく、残念ながら長期休暇中に四人で行動する時間はなかったのだけれど。
明日から新学期となり、また四人で一緒にいられると思うと、カレンの顔に自然と笑みが浮かぶ。
『カレン……その締まりのない笑顔はどうにかならんか?』
アルにも呆れられているけれど、こればかりは仕方がないだろう。
だって、嬉しいのだから。
マリアの淹れたお茶に癒され、母から頂いたお菓子に感動し、アルを撫で回して更に癒されながらも、リンの帰りを今か今かと待ち焦がれるカレン。
夕方になり、ようやくリンが「ただいま」と寮に戻ってきた。
「お帰りなさい!」
カレンが玄関まで迎えに出ると「新妻かっ」と、笑顔でツッコミを入れるリン。
その夜は長期休暇中にあったことなど色々な話で盛り上がり、いつもより遅い就寝となったのでした。