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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第五章 戦えません
35/114

3

「全員いるな~」


 ヴァイス先生は返事を待たずに続けた。


「まずテニスボール大の魔力の球を作れ」


 そう言って真っ黒な綺麗な球体である、一つの魔力の球を作る。

 皆がそれを見本にして、一斉に作りだした。

 ほとんどのものが形が(いびつ)だったり、真っ黒ではなく(まだ)らだったり薄かったりする中で、リンとウィリアムは少し色は薄いが、綺麗な球体をしていた。

 キースは綺麗な球体ではあるが、少し斑らになっている。


「カレンのは黒って言うより漆黒って感じだな」


 キースがカレンの魔力の球を見て感心したように言う。

 実はこれ、カレンがいつもやっている魔力のコントロール方法だったりするのだ。

 綺麗な球体にするためには細部までコントロールしなければならず、込める魔力の密度によって、濃ければ濃いほど黒が強くなる。

 キースのように斑らのものは、魔力の密度が均一ではないということを表しているのだ。

 カレンはこれを更に圧縮し、十分の一まで縮めたものを影の中に隠して維持するという訓練を毎日続けていた。

 魔力のコントロールに少しだけ自信があるのは、この訓練によるものだ。


「これは魔力の密度が高ければ高いほど黒くなるし、魔力のコントロールが甘いと綺麗な球体にはならない。目に見えるぶん、分かりやすい訓練方法だろう?」


 ヴァイス先生はニヤリと悪そうな笑顔で、生徒一人一人の顔を見やる。


「今日から対戦を行う。呼ばれたものはステージに上がって対戦し、それ以外のヤツはそれを見るもよし、魔力コントロールの練習をするもよし。ただしサボってる奴は見つけたら期末の点数はゼロだからな。先ずはアルベルト・セントとアン・マルティネ、ステージに上がれ」

「「はい」」


 呼ばれただろう二人がステージに向かって歩いて行く。

 皆が初めての対戦を前に、緊張気味にステージの方を見つめる。


「来たな。一試合の時間は三分。相手が負けを認めたり、戦闘不能と見なされた場合はその場で終了。三分経っても決着が付かない場合は引き分けとする。魔法と体術のみで、武器は不可とする。始めっ」


 ……とうとう始まってしまった。

 最初に動かれたのはアンだった。


「水よ集いて敵を貫け、ウォーターランス」


 水の初級魔法を放つものの、密度が薄く魔力のコントロールが乱れており、(わず)か五本の大きさがバラバラな槍たちは簡単に避けられてしまった。

 そしてアルベルトの接近を許してしまい、午前中の体術で行った投げ技を受けてアンが負けとなり、初戦は呆気なく勝敗が決まったのだった。


「次。イルナ・バーナードとウィリアム」

「では行って来ます」


 早々に名を呼ばれたウィリアムはニッコリと笑顔を見せて、ステージに向かう後ろ姿には余裕が見てとれる。

 ウィリアムとイルナがステージ上で向かい合った。


「始めっ!」


 先生の短い号令により対戦がスタート。


「火よ集いて爆ぜろ、ファイアボム」


 まずはイルナが火の初級魔法を詠唱、発動すると火の玉は真っ直ぐにウィリアムに向かっていった。

 ウィリアムは水の初級魔法を詠唱破棄する。


「ウォーターウォール」


 水の障壁が張られ、ファイアボムはそれに当たって小さな爆発を起こすものの。

 水の障壁はビクともしない。

 通常詠唱ありと詠唱なしでは、詠唱ありの方が威力は増す。

 本来、同じ等級同士であれば詠唱されていたイルナのファイアボムがウォーターウォールの壁を破壊するはずが、破壊出来なかった。

 それはイルナの魔法とウィリアムの魔法では、魔法に込めた魔力の質量と、魔力のコントロールが圧倒的にウィリアムの方が優れていたということを指していた。

 続けてウィリアムが土の初級魔法を詠唱破棄する。


「アースバインド」


 イルナが土の手によって拘束され、身動きが取れなくなったところで更に、


「ウォーターランス」


 十本の均等な大きさ、密度も申し分ない水の槍を浮かべた状態で近寄り、満面の笑みを浮かべて「続けますか?」と。


「こ、降参します」


 こちらも呆気なくというか、危なげなく終了。

 ウィリアムの黒さが垣間見えた試合であった……。

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