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「やった~、終わった~!」
半ば叫ぶようにして万歳ポーズをするキースは、今日も元気だ。
本日は中間テスト最終日で、今最後の科目のテストが終わったところである。
リンとウィリアムにみっちり教えてもらったお陰で、しっかりと解答欄を埋めることが出来たのだ。
リンとウィリアムに感謝である。
そしてそれは、マリアの協力がなければ出来なかったことでもあった。
マリアにも感謝である。
テストが終わって浮かれポンチな四人は、校舎より少し離れたところにあるカフェへと向かい、(中間テスト)お疲れ様会の開始である。
ランチタイムの少し前だったので、一番奥のテーブルに着くことが出来た。
まずは紅茶を人数分注文し、一息ついてからメニューを見ていく。
学園内にカフェは二ヶ所あり、一つは貴族専用のカフェ。
こちらは校舎に併設されており、飲食した分は月毎にまとめて家の方に請求がいくので、その場ではサインのみで支払いはしない。
そして今いるカフェは誰でも利用可能なカフェで、校舎からは少し離れており、こちらはその都度支払いとなっている。
ランチメニューは日替わりと、パスタとサラダのセットやサンドイッチとスープのセットなど、他にも数種類ある。
何よりデザートが充実しており、メインよりもデザートに目がいってしまうのは、仕方のないことだろう。
散々迷いながらようやく何を注文するのか決めて、店員を呼ぶ。
「デミグラスソースハンバーグ、ライス大盛りで」
「私はパスタのサラダセットで、パスタはカルボナーラ」
「僕はカレードリアのサラダスープセットを」
「わたくしは日替りサンドイッチのスープセットをお願い致します」
上からキース、リン、ウィリアム、カレンである。
店員は注文を確認し、カウンターの奥へ入っていった。
「とりあえず、お疲れ様」
リンが労いの言葉をかければ、キースが八重歯を見せて、今日一番の笑顔でお礼の言葉を口にする。
「ウィルにリン、ありがとうな」
「リンちゃん、ウィリアム様、本当にありがとうございました」
カレンも二人にお礼を伝えると、リンとウィリアムは視線を合わせ、少し照れ臭そうにしている。
「大したことはしていません。頑張ったのはキースとカレンですから」
「そうそう。特にキースは呪いの呪文吐きながら頑張ってたしね~」
照れ隠しなのか、リンのキース弄りが始まった。
「呪いの呪文じゃねえよっ!」
きっと歴史の年号を暗記していた時のことだろう。
カレンも思い出しながらクスクス笑っていると、キースは恥ずかしかったのか顔を赤くして、
「カレンまで笑うんじゃねえよ」
と、軽く額を小突かれる。
それを見たリンが大袈裟に、
「やだっ、キース様ったら。暴力反対っ」
とふざけてカレンを抱きしめ、皆で笑い合っていると頼んでいた食事が次々と運ばれてきた。
サンドイッチの具材はベーコンとレタスとトマトの、所謂BLTサンドで、スープは玉葱がタップリ入ったコンソメスープだった。
皆で和気藹々と食事を進めていると、突然リンが何かを思いついたような、少し悪そうな笑みを浮かべて小声で囁いた。
「で? あんた達、同棲始めたでしょ?」
キースが豪快に飲んでいたお茶を吹き出し、ウィリアムは口にしていたドリアに咽せて。
「ちょっと、汚いじゃないっ!」
「ばっ、おまっ、何言っ……」
キースは顔を真っ赤にして、慌ててお手拭きで口を拭いながら言葉にならない言葉を発し、ウィリアムは未だ咽せている。
ようやく落ち着きを取り戻したウィリアムは大きなため息を一つついた。
「それを言うなら同居と言って欲しいものですね。いきなり何を言うかと思えば……」
ナプキンで口を拭うと、呆れた口調でリンにデコピンする。
バチンと結構な音を立てた。
「ちょっと、痛いじゃないのよっ!」
「お仕置きです。これに懲りたら変なことは口にしないように」
目の奥が笑っていない笑顔に背筋がザワつき、ウィリアムは決して怒らせたらいけない人なのだと皆が心に刻んだ瞬間だった。
「それと、学園側に暴露るとマズイので、外ではこの話はしないように」
寮の貴族が使用する部屋は、使用人が一人付いて来ることと、急なパーティーへの出席などで屋敷に帰る時間がない時のための、ドレスなどの衣装や装飾品などの保管のための部屋として、3LDKの部屋となっている。
使用人以外の人物を部屋に住まわせるなど学園側では許可していないので、今回のキースとウィリアムの同居が学園側に知られてしまうのは、実はとっても大変なことなのだ。




