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目覚めるとそこは、見覚えのないとても豪華な部屋だった。
どうやら私はその部屋のベッドに寝ていたようだ。
キングサイズ以上はありそうな、フカフカの天蓋付きのベッド。
そんなものがあっても圧迫感のないほどに広い部屋。
左側には大きな窓があり、バルコニーにはテーブルと椅子が置かれている。
正面には多分クローゼットであろう扉が一面にあり、右側には応接セットと廊下に続くだろう扉、そして部屋の中には私だけ。
こんな豪華なお部屋を見るのは初めてだ。
どうしたものかと悩んでいると、コンコンとノック音がした後にガチャッと音がして、誰かが部屋の中へ入ってきた。
その誰かと目があった瞬間、相手の大きな瞳がこれでもかというほどに見開かれ、叫びながら抱きつかれる。
「カ~レ~ン~~~」
ギュウギュウときつく抱きしめながら、心配しただの何だのと一人喚いている。
そこにまたノック音がして新たな誰かが入ってきたみたいだけれど、抱きしめられて視界が塞がれているために私からは見えない。
「カレン、目が覚めましたのね」
「ラルク、カレンが苦しそうだ」
優しそうな女性の声と、低いけれども耳に心地良い男性の声が聞こえた。
私を抱きしめている誰かは、少し力をゆるめてはくれたが、全く離す気はないらしい。
腕の力を緩めてくれたお陰で少し首が動くようになり、視線を横にずらす。
そこには二十代後半であろう亜麻色の長く緩やかなウェーブの髪に菫色の瞳をした優しげな女性と、金髪を短くカットしエメラルドのような瞳をした二十代後半くらいの逞しい男性の姿が見えた。
どちらもとても整った、美しい顔立ちをしている。
ちなみに私に抱きついているのは、金髪にエメラルド色の瞳をした可愛らしい男の子。
男性のミニチュア版といった感じにそっくりだ。
年は小学校低学年くらいだろうか?
いつまでもこうしていられないので、とりあえず尋ねてみる。
「あの、ここはどこでしょう?」
◇◇◇
今この部屋には、たくさんの医者が集められている。
何でもカレンの『ここはどこ』発言で、そこにいた全員が大慌てで医者を呼びまくった結果らしい。
原因を作っておいて何だが、こんなに医者は必要だろうか? とカレンは思う。
というより、自分のために急遽呼び出された彼らには、本当に申し訳ないとしか言えない。
彼らも戸惑っているようで、先ほどから「どうぞどうぞ」と譲り合いが続いている。
幾度かの「どうぞどうぞ」を繰り返した後、「では」と恰幅の良いオジサマが一歩前に出てきた。
「気分はどうだい?」
「特に悪くありません」
オジサマ医師の質問に答えていると、気付けば他の方達は帰られたようだ。
そして今、一人残ったオジサマ医師はとても難しい顔をしている。
彼は先ほどの二十代の男女二人と何やら話をした後、
「今日はゆっくり休んでいなさい」
そう言って私の頭を優しく撫で、心配そうな顔をする皆を伴い、部屋から出て行った。
部屋に一人残され、わけの分からないこの状況に多少なりとも混乱していたカレンは、言葉に甘えて少しゆっくりさせてもらうことに。
そして、ゆっくりと瞼を閉じた。




