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昨日と同様に、四人で寮に向かっている。
「いやあ、さっきは助かったよ。ありがとう、キース」
「あのクソ教師、ぜってーこうなるのが分かっててお前の名前出したんだろうな」
爽やかな笑顔のウィリアムとは反対に、キースは渋い顔をしてボソッと呟いた。
先ほどジェイクがウィリアムに失礼なことを言い、とても不愉快な気持ちにさせられて。
あの時カレンは何も出来なかったけれど、その後ヴァイスとキースが見事ジェイクを撃退し(完全に嫌っているために辛口)、気持ちがスッキリしたのでそのお礼の気持ちも込めて。
「あの、わたくしに何かお手伝い出来ることがありましたら、いつでも仰って下さいね」
カレンの台詞にリンはウンウンと頷き、ニッコリ笑顔でカレンの頭をナデナデしながら「私も手伝うよ」と言った。
キースはニカッと笑顔をみせて。
「おう、期待してるぜ。で、元凶のお前は手伝ってくれねえのか?」
ウィリアムの肩に腕を回して、今度は悪戯っ子のような笑顔になる。
「もちろん、誠心誠意お手伝いさせて頂きますよ、キースお坊っちゃま」
「だから、坊ちゃまはやめろって言ってるだろっ!」
顔を真っ赤にさせて慌てるキースに、それを楽しそうに笑って弄るウィリアム。
それを見て声を上げて笑うカレンとリン。
今、とっても楽しいです。
◇◇◇
入学して初めての週末。
今日はリンとキースとウィリアムとカレンの四人で、町まで遊びに行く約束をしている。
……遠足前の子どものように、ワクワクして眠れずにいた。
昨日、晩御飯を食べ終えゆっくりとお茶を頂きながら、何を着て行くかをマリアに相談していると、『町』というキーワードにアルが反応し、
『食べ歩きには我もついて行くのだっ!』
と言って、高速で尻尾を振りだしたのだ。
皆に了解を得なければいけないことを説明すれば、アルは渋々頷いた。
カレンとしても、出来ればアルも一緒に連れて行きたいところではあるのだ。
リード家にいる時は自由に森を駆け回っていたアルだったが、学園ではそういう訳にはいかず、専ら部屋の中でゴロゴロしている。
たまには気分転換で外に連れ出してあげたい。
そんな気持ちから、もし了解を得られない時はラルクと三人で食べ歩きをしようと、ラルクの了承なしについアルと約束してしまった。
勿論その時には、ラルクの都合の良い日にちにしてもらうつもりだ。
マリアが起こしにきたが、カレンが起きているのを確認すると苦笑されてしまった。
「カレン様、お出掛けから帰られたら少しお休みになられてくださいね」
マリアはいつもカレンの気持ちを汲んで言葉を選び行動してくれるので、本当に感謝している。
顔を洗い歯磨きし、昨日アレコレ選んだ服に袖を通すとマリアがカレンの髪を結い始める。
今日は両サイドを緩く三つ編みし、後ろで纏めてお団子にし、残りの髪はダウンさせたスタイルで。
「いつも思いますが、マリアは本当に手先が器用ですね。羨ましいわ」
「お褒め頂き、ありがとうございます。それでは朝食を頂きましょう」
一緒にリビングへ向かう。
今日の朝食は、焼魚と大根おろしのシラス乗せ、卵焼きに豆腐の味噌汁にほうれん草のお浸し。
朝からきちんとした和食を食せる……なんて幸せ!
「マリア、いつも美味しい食事をありがとう。いただきます」
「どうぞお召し上がりください。いただきます」
入寮してから、カレンはマリアと一緒に食事を摂るようになった。
一人で食べる食事は味気なく寂しいと、マリアに無理を言ってお願いしたのだが、初めは丁重に断られた。
それでも諦めるつもりは毛頭なかったカレンの粘り勝ちで、マリアの了承を得ることが出来たのだ。
やはり一人でなく、誰かと一緒に食べるご飯は美味しい!
その後歯磨きをし、そろそろ待ち合わせの時間が近くなったので、マリアとアルと一緒に部屋を出てロビーへと向かった。
アルを一緒に連れて行くことに了承が得られなければ、アルを連れてマリアは部屋に戻り、了承を得られたらマリアのみ部屋に戻ることになっている。
ロビーに着くとすでにウィリアムがソファーに座っていた。
「ウィリアム様、おはようございます」
「おはようございます。後ろの方は?」
「おはようございます。カレン様の侍女のマリアと申します」
「ウィリアムと申します。よろしくお願いします」
にこやかに挨拶を済ませ、ウィリアムの目線がアルへと注がれる。
「この子はアルジャンといいます。もし皆様の了承が得られたら、一緒に連れて行きたいのですが、ウィリアム様は如何でしょうか?」




