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リン目線です
現在七時半、朝食を食べ終わって食器を洗い終わったところ。
今までは大家族での賑やかな食卓に、一度ゆっくり食事をしてみたいものだと思うこともあったけれど。
いざそうなると、一人の食事はとても味気ないと知ってしまった今、少々ホームシックに掛かっているみたいだ。
……らしくない。まだ始まったばかりだというのに。
私にはこの学園を優秀な成績で卒業して、いい就職先を見つけて家族を支えるという目標があるのだから、寂しがってなどいられない。
気合を入れるために自分のほっぺたをバチンと叩く。
……うん、ちょっと力入れ過ぎた。
鏡で見たら少し赤くなってしまっている。
溜息をつきつつ、六畳ワンルームの部屋のベッドを背もたれにしてちゃぶ台の前に座る。
決して広くはない部屋なのにガランと寂しく感じてしまうのは、こんな静かな環境にいた記憶がないために落ち着かないだけで、きっと直ぐに慣れるだろう。
友達も出来たことだし。
しかも飛びっきりのお貴族様の。
貴族といっても、二人とも私の知っている貴族像とはほど遠かったけれど。
……言葉遣いを気にしなくていいと言われたのは、正直助かった。
うるさい弟妹達を相手にしていたら、言葉遣いはとても綺麗ではいられない。
私の言葉が結構乱暴なのは自覚している。
だから、この学園にいる間に少しずつ直していこうと思ってはいる。
カレンから、
「明日の朝一緒に登校しませんか?」
と誘われた時、彼女の表情からは緊張と、多分だけど断わられたらどうしようという思いと、それでも一生懸命なのが見て取れて。
この子は全然スレていない、とても素直な子だと思った。
気がつくと笑顔で
「ロビーで待ち合わせにする?」
なんて答えていた。
それを聞いた彼女は瞳をキラッキラさせて、ピンと立った耳と千切れんばかりに振られた尻尾が見えた気がしたのだけど。
そんな昨日の事を思い出して「めちゃ可愛かったわぁ」と一人にやけていれば、すでに時計の針は七時五十七分を指していて。
「やば、遅れちゃう」
慌てて鞄を掴み部屋を後にした。
魔方陣を使い一階のロビーへ降りると、すでにカレンはソファーに座って私を待っていた。
私を見つけると弾けんばかりの笑顔で立ち上がり、こっちに向かって歩いて来る。
……多分走って来たいところだけど、お貴族様ゆえにそれをしないでいるって感じかな?
「おはようございますっ!」
「おはよう、カレン」
なんとか挨拶の言葉を口にしたけど、今朝も元気に尻尾が振られているように見える。
ついつい我慢できずに吹き出しちゃったのは、仕方がないことだよね?
首を傾げてこちらを見るものだから「何でもない」と言ったけど、しばらくの間、思い出しては笑うを繰り返していた。
……決して私はムッツリではない。