表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第三章 フォード学園に入学しました 〜カレン13歳〜
20/114

4

 先生の姿が見えなくなると、それまで黙っていた者が一斉に不平不満を口にする。

 聞いていて、思わず耳を塞ぎたくなるような言葉が重なり合う。

 そんな中でもリンはどこ吹く風とばかりに立ち上がり、カレンの隣の席の男の子の前まで来ると、


「さっきはありがとう。それと入学式では蹴り上げて悪かった」


 と頭を下げた。

 男の子は突然のリンの行動に驚いた顔をしている。


「えっ? や、別にお前のために言ったわけじゃないし、蹴り上げられたのも自分のせいだし。だから謝る必要はねぇよ? ま、ちょっと痛かったけどな」


 そう言うと、八重歯を見せて笑った。


「うん。私のためでなくても、私はあんたの台詞(セリフ)でスッキリしたから、だからありがとう。改めて、私はリン。よろしく」

「おう。改めて、キース・ウォーカーだ。後ろの席の奴はウィリアム。俺の悪友だな」


 そしてリンはカレンの方を向くと、


「この子はカレン・リード。さっきお友達になったの」


 と、紹介をしてくれた。


「あのっ、よろしくお願い致します」


 勢い良く立ち上がり頭を下げた途端、目の前に火花が飛び散った。

 ……ゴンッという大きな音と共に。

 リンは慌てて赤くなったであろう(ひたい)を撫でまわして確認し、心配そうな顔をしている。


「いやだ、大丈夫? コブは出来てないわね」

「だ、大丈夫か?」


 そう言うキースとウィリアムは視線が明後日の方を向いていて、心なしか肩が震えているようにも見える。

 カレンは恥ずかしいのと痛いので若干涙目になっている。


「あの、大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」

「もうっっっ、この子可愛過ぎるっ!!」


 お礼を言うと、リンにギュウッと抱きしめられた。

 しばらく抱きしめられた後ようやくリンは落ち着き、今四人で寮に向かっているところだ。

 ウィリアムの家は(あきな)いをしているとのことで、キースの屋敷には商売の手伝いでよく出入りしていて、気付いた時には仲良くなっていたらしい。

 よくよく聞いてみれば、ウィリアムのサンチェス商会は、リード家にもよく出入りしていた。

 カレンはあまり顔を出さないので、ウィリアムとは顔を合わせたことがなかったのだけれど。



 何となく分かってはいたが……。

 目の前には、寮とは思えないほどの建物がいくつも並んで建っている。

 リンとウィリアムは昨日入寮したらしく、真っ直ぐ一つの建物に向かって歩いて行き、カレンとキースはその後を大人しく着いて行く。

 この学園の寮は学年ごとに建物を分けていて、全て同じ造りの建物なので分かりにくいが、基本中等部一年から高等部三年までの六年間を同じ部屋で過ごすのだ。

 この世界では、魔法研究所や魔法薬学研究所での研究者を目指す者が、大学部へ進学する。

 大学部へ進むのは約一割ほどだそう。

 その者達は、六年間過ごした寮から大学寮へ引越しするのだとか。

 なのでこの学園の寮と呼ばれる建物は、中等部から高等部までの六棟と、大学寮の合わせて七棟ある。

 一階には受付とロビー、色々な自動販売機に体を鍛えるための器具(マシーン)が取り揃えられている空間があり、二階には食堂がある。

 三階以上が居住階となっていて、十二階から十五階が貴族階、十六階が王族階となっている。

 自動扉を潜ると、入って正面に受付カウンターがある。

 受付を挟んで左右にエレベーター代わりの魔法陣が二つづつあり、カウンターを正面に見て右側が女性寮、左側が男性寮になるようだ。

 同じ階でも、男性寮から女性寮には直接行くことは出来ず、面倒でも一階か二階に降りてから女性寮用の魔法陣に乗って行かなければならない。

 女性寮から男性寮へも同じである。

 受付で名前を伝え、(カードキー)を受け取る。

 カレンは1510室、キースは1403室とのこと。


「リンちゃんとウィリアム様は何号室ですか?」

「私は1122室だったわ。ウィリアムは?」

「僕は1101室だよ」


 お互いの部屋番号を確認し、キース達と別れ、リンと女性寮用の魔法陣の前まで来た。


「リンちゃん、明日の朝一緒に登校しませんか?」


 友達と一緒に登下校することは、前世からの憧れだった。

 だからこの一言を言うために、カレンはものすごく勇気を振り絞って頑張ったのだ!

 リンは優しく笑って、


「ロビーで待ち合わせにする?」


 と言ってくれた。

 校舎まで多少距離があるので、八時丁度にロビーで待ち合わせすることにした。


「また明日」


 リンは先に魔法陣に乗り、すぐに姿が見えなくなった。

 行き先階へ行ったのだろう。

 カレンもその後魔法陣に入り、十五階を思い浮かべると直ぐに景色は変わり、到着したようだ。

 カレンの部屋は一番端の部屋だった。東南角部屋だ。

 ドアノブの部分に鍵を(かざ)すと、ピッという音とともにガチャッと鍵の開く音がした。


「お帰りなさいませ、カレン様」


 笑顔のマリアが出迎えてくれる。


「マリア、ただいま帰りました」


 扉を入ると左側がシュークローク、右側がコート専用のクローゼットに扉が鏡になっており、こちらで全身のチェックをして出掛けられるようになっている。

 正面には廊下が続き、左手に二部屋、右手に一部屋と、お風呂に洗面所にお手洗いなどの水回り系が纏まり、正面奥の扉を開けると広いリビングダイニングになっている。

 扉の右横がキッチンだ。

 全ての部屋にウォークインクローゼットがついていた。

 ちなみにテラスはない。

 リード家の部屋よりも大分コンパクトではあるけれど、前世四畳半ほどの部屋にベッドと机の部屋だったので、それからしたら十分過ぎるほどの部屋だ。

 これから六年間お世話になる、カレンの部屋。


「これからよろしくお願いいたします」


 壁に手を触れ、カレンは小さく呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ