表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/114

2

「おめでとう。君は私が閻魔大王を継いでから、一億人目の亡者だ。特別に君の望みを聴いてやろう」


 ……緊張し過ぎて聞き間違えたのだろうか?

 何だか『望みを叶える』的なことを言われた気がするのだけれど。


「ただし永遠の命など、全てが可能なわけではないと言っておく」


 ……聞き間違いではなかったらしい。

 何と言ったらいいのか分からず閉口してしまう。

 いきなり望みを叶えると言われても。

 色々頭で考えながらも、ふと一億人目云々がなければどうなっていたのだろうかと気になった。


「あの、私は一億人目云々がなければ、どう裁かれていたんでしょう?」


 天国へ行くほどの善行を積んではいないだろうけれど、地獄へ行くほどの愚行もなかったと信じたい。

 閻魔大王は分厚い本のようなものをめくって、何かを調べるような仕草をしている。

 きっとアレに、生前の行いが記されているのだろう。


「うん、君は現世に生まれ変わる予定だな」


 生まれ変わる……。


「あまり嬉しそうではないな」


 地獄は問題外だけれど。

 誰も私を必要としてくれない、自分の居場所と言える場所がない、そんな寂しい人生を送るのはもう勘弁願いたい。

 でも、自分が天国へなんておこがましいことは言えない。

 ならば。


「あの、普通の人生がおくれるようにお願い出来ますか?」


 お父さんお母さんがいて、兄弟がいて、大人になったら誰かと結婚して子どもを産んで、みんなに看取られながら死んでいきたい。

 どれも前世で叶わなかったことだから。


「それだけか?」


 閻魔大王様が怪訝(けげん)な顔をしている。


「十分じゃないですか?」


 逆に、何を望めと?


「いや、もっとこう、あるだろう?」


 あるだろう? と言われても。

 贅沢(ぜいたく)がしたいわけじゃない。

 地位も名声も興味はない。

 ただ私を必要だと抱きしめてくれる、家族という暖かな愛情に包まれたい。

 それが、それだけが私の望みだ。

 すると、目の前の閻魔大王の口から信じられない言葉が飛び出した。


「つまらん」


 今「つまらん」と聞こえた気がしたのだが、私の聞き間違いだろうか?

 ……きっと、閻魔大王を前に緊張しているのだろう。

 だから、聞き間違えたのかもしれない。

 私が軽く呆けていると、大きな扉から赤鬼が入ってきた。


「随分と時間が掛かっているようですが、何か問題でも?」

「いや、例の望みを聴いていたんだが。……この娘、つまらん」


 やはり聞き間違いではなかったようだ。

 しかも閻魔大王は面白くなさそうに頬杖ついて、眉間に皺寄せて唇を尖らせている。

 ちなみに例の望みというのは、閻魔大王という役職についてから一億人目、十億人目、百億人目、千億人目~~~と、私のようにちょうどその順番に当たった亡者に恩赦として願いごとを聞く……というものらしい。

 そして、私はこの閻魔大王の初めての恩赦に当たり、彼はとても楽しみにしていたという。

 以上、赤鬼情報でした。


「ところであなたは何を望んだのです?」

「普通の人生をおくれるようにと、お願いしました」


 赤鬼の質問に答えると、彼は一瞬ビックリしたように目を見開いた。

 それから何か残念なものを見るような目をし、無表情で閻魔大王の側へ歩いて行く。

 そして生前の行いが記されているだろう本のようなものを覗き込むと、閻魔大王と二人、何やらヒソヒソと話し始める。

 あ~でもない、こ~でもないと二人はとても楽しそうだ。

 その間私は蚊帳(かや)の外で。

 一体いつまで待てばいいのだろうか?

 いい加減、外の亡者たちも待ちくたびれていると思うのだが。

 ……どれくらい話し合ったのか、満足した風に二人が急にこちらを向き、何やら揃って黒い笑みを浮かべた。


「「行ってらっしゃい」」


 と言う言葉を聞いた瞬間、私の意識はそこでプツリと途絶えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ