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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第三章 フォード学園に入学しました 〜カレン13歳〜
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3

「少し外すが直ぐ戻る。それまでに適当な席に座って待っとけ。くれぐれも騒ぐなよ」


 担任の先生は教室に到着すると、そう言って何処かに行ってしまった。

 先生のすぐ後ろについていたカレン達は先頭を歩いており、それは席を選び放題というわけで。

 リンはスタスタと歩き、窓際の一番後ろの席に腰を下ろした。

 カレンが隣の席と前の席で迷っている間に、リンの隣の席には男の子が座ってしまい、慌ててリンの前の席に腰を下ろす。

 チラッとリンの方を向くと、クツクツ笑って頭を撫でてきた。

 同い年だけれど、もし姉がいたらこんな感じかもしれないとカレンは思った。

 リンに撫でられるのは、ちょっと嬉しいかもしれない。

 全員が席についた頃、担任の先生が戻ってきたと思えば生徒に丸投げする。


「全員席についているな。では廊下側の前の奴から順番に自己紹介していくように」


 ガタッと席を立つ音がして、廊下側の一番前の席の男の子が実にシンプルな自己紹介を終えると着席した。


「フォン・ガルシア。属性は風と火。ギルドは飛翔に所属予定。以上」

 

 この自己紹介を参考に、同じような自己紹介がどんどんと続いていく。

 因みにギルドの登録は十歳から可能である。

 中等部より授業の一環で、九月以降にギルドでグループ依頼を受けなければならず、殆どがその前の長期休暇中に登録をするのだ。

 どのギルドに登録するかは個人の自由となっているけれど、たいていの者は魔力量の検査を受けたギルドで登録する。

 ギルドに所属予定というのはそういったことからで、早くに登録している者はカレンの前世のような境遇の、早く自立をしなければならないなどの理由のある者達だ。

 次々と自己紹介が終わり、リンの隣の席の男の子が立ち上がる。


「ウィリアムです。属性は土と水と闇。ギルドは幻影に所属、Bランクです」


 ぺこりとお辞儀をして着席する。

 彼も特待生のようだが、この歳でBランクなんてとても凄いことだ。

 すると周りがザワザワし始めた。


「平民のくせに……」

「生意気な……」


 悪意のある言葉があちらこちらから飛んでくる。

 なぜ彼はこんなにも悪意を向けられているのだろう?

 その間も自己紹介は続いていき、ついにカレンの番となった。


「カレン・リードです。属性は光と風と水。ギルドは暁に所属予定です。よろしくお願い致します」


 特待生の彼と同じように、ぺこりとお辞儀をしてから着席する。

 次は、というより最後はリンだ。


「リンです。属性は火と水と風。ギルドは幻影に所属。Bランクです」


 リンもぺこりとお辞儀して着席。

 すると、またしても周囲がザワザワとし始めた。


「平民ふぜいが」


 悪意のある言葉がどんどんと投げつけられる。

 リンは不機嫌そうに頬杖をついて窓の外を見ている。

 リンの隣の彼は、何でもないように本を読んでいる。

 ……平民だというだけで、なぜこんなにも悪意を向けられなければならないのだろう?

 少しだけ、前世の『捨て子』と蔑まれた日々を思い出し、気分が悪くなる。

 するとカレンの隣の席の男の子が机をバンッと叩いて立ち上がった。


「うるせえな、平民だから何だって言うんだよ! お前らより努力してここにいるだけの話だろうが。……お前もさっさとくだらねえこと言ってる奴らを注意しろよ、クソ教師が」


そう言って不機嫌そうに腕を組んで座る。

 彼は入学式でカレンの隣にいた男の子だ。


「クソ教師は聞き捨てならんな。……まあ、胸クソ悪いことを言う輩のチェックをしていて注意が遅れたのは事実だがな」


 (おもむろ)に教室内を見渡してから担任の先生は話を続けた。


「丁度いい。説明してやろう。この学園内にいる間は王族・貴族・平民などの身分はないものと思え」


 その言葉に多くの者達が口々に反論し、教室内はとんでもないことになっている。


五月蝿うるせえっ!」


 先生は黒板に、後ろ手で右手の拳を叩きつけた。

 ダンッという物凄い音を立て、教室内は一瞬にして静寂を取り戻す。


「この学園の理事長は国王だ。このことについて文句があるということは、つまり。お前らは国王の決めたことに盾をつくというになるわけだ」


 先生は片側だけ口角を吊り上げて、静かにそう言った。

 不満を口にしていた者は、国王様に盾をつくことになると言われてしまっては言い返すことも出来ず、悔しそうに先生を睨んでいる。


学園内(ここ)では王族だろうと貴族だろうと関係ない。ここは身分をひけらかすための場所でもない。お前らはここに何をしに来た? ……学ぶために来たのだろう? まず教えを請う立場だと言うことを理解しろ。教師の説明を聴き漏らさず、自分のものにしろ。これだけ言っても理解せずに身分をひけらかすような輩は、最悪退学も有り得るからな。俺からは以上だ」


 そして学園内の地図や授業スケジュール、学園・寮での注意事項などのプリントを配布して。


「まだ入寮手続きが済んでいない奴は、寮の受付で名前を言って鍵を受け取れ。明日からは通常通りの授業だ。各自プリントで確認して、忘れ物がないように気を付けて来るように。では解散」


 そう言って、スタスタと教室を出て行ってしまった。

 ……あの、まだ先生の名前を伺ってませんけど?

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