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夏になり、ラルクが長期休暇で屋敷に戻ってきた。
……沢山のお土産と共に。
「カレン、ただいま!!」
車寄せに停まった馬車から勢いよくラルクが飛び出すと、カレンをギュウギュウと抱きしめる。
また少し背が伸びただろうか?
久しぶりの再会に嬉しくなり、カレンもラルクの背中に回した腕に力を込めた。
「お帰りなさい、ラルク兄様!」
すると。
「いっっっ!」
ラルクの体に力が入り、何かを見ているようなのでその視線を辿って見ると、アルジャンがラルクの左足にしっかりと噛み付いていたのだ。
「アル、この方は私のお兄様ですから、噛むのはやめて下さい」
ラルクの腕から抜け出し、慌ててアルジャンを引き離す。
この数ヶ月、アルジャンと常に一緒に居て、アルジャンをアルと呼ぶほどまでに仲良くなっていたカレン達。
今までにアルが誰かを噛んだりなどしたことはなかったのだが……。
(カレンに害を加えようとしている者を除いて)
「お兄様、噛まれたところは大丈夫ですか?」
「あ? ああ。少し痛い程度の甘噛み? だから大丈夫だよ。それよりカレン、その犬は?」
『我は犬などではないっ!! 誇り高きフェンリルなのだっ!』
念話はカレンのみにとお願いしていたため、周りにはアルがただラルクに向かって吠えているようにしか見えない。
「この仔はアルジャンといいます。私の大切なお友達です」
『そうだ、我はカレンの大切な友達なのだ』
「そうかアルジャンか、私はカレンの兄のラルクだ。よろしくな」
ラルクがアルの頭を撫でようとするも、牙を剥き出してヴ~っと唸り、全身で拒否している。
「なんか嫌われてる?」
ラルクは眉をハの字にさせて凹んでしまい、カレンが慌てて謝罪した。
「ラルク兄様、すみません……」
『なぜカレンが謝るのだ。謝るなら我だろう? ……謝る気などないが』
「私にはラルク兄様もアルも、とても大切な存在なので……(仲良くして頂きたかったのですが……)」
最後の方は尻窄みになってしまった。
仲良くして欲しいのはあくまでもカレンの希望であって、押し付けてよいものではないから。
『……カレンがそう言うのなら、善処する』
「カレンの大切な存在ならば、私にとってもそうだ。仲良くなれるように頑張るさ」
先ほどまで凹んでいたラルクは、優しく微笑んでカレンの頭を撫でる。
二人(一人と一匹?)の優しさに、自然とカレンの口角が上がっていく。
「二人とも大好きです」
「カレン~~~」
ラルクは体当りするかの如くカレンにガバッと抱き着き、その勢いで腕の中にいたアルが落ちた。
『やはり貴様は好かぬっ!!』
と、ラルクの足にアルが噛み付く。
仲良くなる日は遠い……?
◇◇◇
「ラルク兄様、これは少し……というか、多すぎませんか?」
部屋に積まれた、お土産の山。
カレンのために選んでくれたことは大変嬉しく思うのだが、それにしても数が多すぎるのだ。
「ついついカレンに似合うだろうなと思って買っていたら、この量になった」
ラルクも流石に買い過ぎたと思っているのか、視線は明後日の方を向き、頬を掻いている。
そんなお土産の山を前に、カレンはラルクに分からないよう小さな溜息を一つついた。
カレンには物欲というものが、あまりない(全くないわけではない)。
前世では教会の信者の方達からの頂き物のみを着用し、洋服は動きやすさ重視、アクセサリー類は雑用の邪魔になるので一切身につけていなかった。
今世では、カレンのクローゼットには見事なドレスやワンピースが並んでおり、充分すぎると思っている。
髪飾りやアクセサリーなども、時々行商人が持って来るものを見せてもらったりはするが、綺麗とは思っても欲しいとまでは思わないのだ。
「お兄様、沢山のお土産をありがとうございます。私のために選んで頂いたことはとても嬉しく思いますが、次からはお土産は不要です」
「えっ?」
ラルクはどうして? という顔をしている。
「私のために沢山のお金を使って欲しくはありません。私のことを思って頂けるのでしたら、お土産ではなくお手紙を送って頂いた方が嬉しいです」
カレンの言葉を聞いて、ラルクはカレンをギュウッと抱きしめた。
「カレン~、次からは手紙いっぱい書いて送るからね~」
その言葉に手紙の山が何となく想像出来てしまったので、
「そこは普通でお願いします」
と苦笑いで返すのだった。




