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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第二章 モフモフに出会いました 〜カレン11歳〜
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 あれから六年の月日が流れ、カレンは十一才に、ラルクは十三才に成長した。

 ラルクは若干顔に幼さが残るもののだいぶ背が伸び、声変わりをしてデニス()に似た落ち着きのある声となり、昔以上に将来有望と噂されているそう(使用人談)。

 相変わらず優しいラルクだが、今日は一段とカレンから離れようとしないというか、先ほどからずっと抱きしめられて頭を撫でられ続けている。

 気のせいか、マリアの顔がいつもより険しい気がするのだけれど……。


 明日はデニス達も通った、フォード学園の入学式なのだ。

 フォード学園とは国営の学校で、中等部と高等部、そして大学部があり、全寮制(・・・)である。

 つまり何が言いたいかというと、明日から入学するラルクとは、しばらくの間離れ離れになってしまうのだ。

 今朝からずっとラルクは「カレンのいない学校なんて……」とブツブツ呟きながらカレンを離そうとせず、ずっと撫でられ続けているために、マリアが綺麗にまとめてくれた髪は見る影もなくボサボサになっている。

 使用人達は苦笑いしながら、そんな仲の良い兄妹を温かく見守るのだった。



 そして入学式当日。

 玄関先の車寄せには、ラルクとデニスが乗って行く馬車が待機中である。

 ラルクは制服であるダークグレーの細身のブレザーとスラックスに白いシャツ、エンジのネクタイを締めており、その上から赤みがかったダークグレーのマントを羽織っている。

 中等部と高等部でネクタイの色が違い、マントの内側とターンカフス部分はネクタイと同じ色なのだそう。


「カレン、長期休暇には帰って来るからねっ!」


 先ほどからずっと、ギュウッと抱きしめられて頭を撫でられ続けている。

 ずっと側に居てくれたラルクにしばらく会えないのはとても寂しいことだけれど、ここで心配を掛けるわけにはいかない。


「戻られた時には、学校でのお話をたくさん聞かせてくださいね。楽しみにお待ちしています」


 ニッコリと笑顔で言うと、更にギュウギュウと抱きしめられて。


「カレン~~~」

 

 キリがないとばかりに、デニスがカレンからラルクをベリッと引き剥がし、馬車に押し込んだ。


「行ってくる」


 一言告げると素早く馬車に乗り込み、ラルクとデニスを乗せた馬車が学園へ向かって走り出す。

 カレンは馬車が見えなくなるまで、手を振って見送ったのだった。



◇◇◇



 ラルクが学園に入学したからといってカレンの生活が変わるわけではないが、日に日に寂しさは募っていく。

 カレンは自分が思っていた以上に、ラルクに依存していたらしい。

 学園に入学するまであと二年。

 お友達を作る機会は未だなく、この寂しさをどう埋めたらよいのかわからず、日々ため息の数が増えていった。

 マリアがそんなカレンを心配し、色々な珍しいお菓子や紅茶を用意してくれるのだが、そんな風に周りに心配を掛けている自分がとても情けなくなり、更にため息が増えるという悪循環。

 これではいけないと、気分転換に屋敷の裏の森を探索することにした。

 この森は危険な生き物はおらず、庭の延長のような感じで、時々ラルクとお弁当を持って遊びに来ていた場所でもあるのだ。

 ここにはリード家の許可なく入ることが出来ないようになっているそうで、どのようにしてそうなっているのかは、カレンにも分からない。

 おそらく結界のようなものが張られているのでは? と思っている。


 マリアに頼んで用意してもらったお弁当を持ち、今日はカレン一人でのお出掛けだ。

 森といっても、木々が日を遮るほど密集しているわけでもなく、急勾配なところもなく、木漏れ日が気持ちの良い場所といった感じだろうか。

 奥に進むと小さな池があり、小動物達の水飲み場となっている。

 カレンは少し離れた場所の木の下に敷物を敷いて、そこから可愛らしい動物達を眺めることにした。

 穏やかな風が、優しく肌を撫でていく。

 ここの時間はとても優しい時間だと、ラルクが以前言っていた言葉に頷いたのを思い出し、また少しだけ寂しくなった。

 可愛らしい動物達の姿を堪能し、お弁当を広げる。

 卵をたっぷりと挟んだサンドイッチと、唐揚げと野菜のスティックが入っていた。

 どれもカレンの大好物で、きっとマリアが元気のなかった彼女のためにチョイスして、料理長に作ってもらったのだろう。


「皆に感謝ですね……」


 フフッと笑んでサンドイッチに手を伸ばそうとした時、後ろの茂みからガサガサという音が聞こえ、慌てて振り向くと、そこに居たのは……。

 ここには居るはずのない、とてもとても大きな狼だった。

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