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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第十五章 守るということ
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「実力差があまり無いようですから、まだ時間が掛かりそうですね」

 ため息混じりにウィリアム様が仰います。

「面倒くせえから、もう両グループ共に倒しても良いんじゃね?」

 少しイラついた様にキース様が仰り、エヴァンス様たちも頷かれます。

「時間の無駄だな」

 目の前のグループの方々は、自分達の知らない所で次々と酷評されております。

「では行きますか」

 ウィリアム様が「散歩に行きましょう」くらいの軽い言い方で戦闘中のグループの方へ向かわれました。

 皆様もそれに続きます。

 私達から向かって左側のグループは、七人の男女混合グループで、向かって右側は六人の男性のみのグループです。

 戦闘中だったグループの方々は、いきなり出て来た新たな敵に初めは吃驚した顔をされておりましたが、私達がSクラスだと分かると一旦休戦にし、手を組むことにされたようです。

 十三人と六人のグループ対決となりました。

 エドワード様とエヴァンス様が素早く身体強化を図って飛び出して行かれます。

 人数は増えたかもしれませんが、にわかグループのため連携も何もあったものではなく、次々と二人に蹴散らされていきます。

「リン、このままですと私達の活躍がなくなってしまいますから、行きますよ!」

 ウィリアム様の言葉に短く「了解」と返し、二人も素早く身体強化を図って走り出しました。

 私は全体が見渡せる少し離れたこの位置から、皆様に向けられる魔法攻撃を魔法の盾で防いだり、皆様の身体強化の上から強化魔法を掛けたりと、サポートさせて頂いております。

 強敵が現れました時は、私が念話で皆様に状況説明や指示を出すこともあります。

 キース様の『私を守る』という役割ですが、最初は女神の障壁を張るので大丈夫だとお断りさせて頂いたのですが。

 ある意味そういった私の魔法は(ずる)いのだそうです。

 確かにサバイバル中に障壁の中に籠もっていれば、必ず最後まで残ることが出来てしまいますし。

 でもそれでは(私を含む)自分達のためにはならないと、戦闘経験を積むためにも、戦闘中は障壁の使用を控えようということになりました。

 私は誰よりも魔力があるけれど、もし万が一にも魔力切れが起こる可能性もゼロではないということで、ウィリアム様に「今回のサバイバルの戦闘中は、出来るだけ魔力を抑えながら戦ってみるように」と課題を出されております。

 私が同行出来る時は良いですが、もし同行出来なかった場合。

 障壁を張る人間がいない訳で、その時にどう行動すれば良いか。

 治癒出来る人間がいない訳で、如何に怪我をせぬように戦うか。

 今までは私がいることによって怪我をしても直ぐ治してもらえるので、「多少の怪我くらい平気」的に無茶をすることがありました。

 もし私が同行出来ない場合。

 もし私が魔力切れを起こした場合。

 その怪我が命取りとなる可能性もあるということです。

 魔法に頼り過ぎず、経験を積むことはとても大切なことです。

 ありとあらゆる可能性を考え、その時に対処できるよう、そのために訓練をするのです。

 私は私に課された宿題をサバイバル中に解かなくてはいけません。

 今までは魔力切れの心配をしながら魔法を使うことなどありませんでした。

 誰よりも多い魔力量に、慢心していたのです。

 気を引き締め、目の前の戦闘に集中します。

 相手グループの後衛で魔法を放っている女の子は、初級の物まで詠唱を唱えており、発動までの時間が無駄に掛かり過ぎております。

 炎を剣に纏っている女の子も、あの炎は魔力がスカスカで、相手に大したダメージを与えられるものではありません。

 前衛の男の子二人も、普段エドワード様たちの動きを見ている私にはぎこちなく、無駄な動きが多く感じます。

 改めて思うことは、(私の)グループの皆様、優秀過ぎませんか?

 私が補佐せずとも、余裕で勝てる実力が皆様にはあると思います。

 実は攻撃系の魔法も、ずっと練習してはいるのです。

 ……未だに魔法の発動する気配さえ感じませんが。

 小さく溜息を吐き出すと、キース様が頭を撫でてくれました。

「カレンはちゃんと頑張ってる。助かってるよ」

 言葉になどしておりませんのに、どうして貴方には分かってしまうのでしょう。

 そして、どうして私の欲しい言葉をくれるのでしょう。

 戦闘中でなければ、迷わず胸に飛び込んでしまったかもしれません。

 ……と、いけない、いけない。戦闘に集中しなければ。

 再び目を向けると、今最後の一人のペンダントが砕け、強制転移されていきました。

「大した運動にもなりませんでしたね」

ウィリアム様の毒舌度が高くなっている気がします。

「これから先は実力派が残ってくだろうから、苦戦するかもね」

 と言いながら、リンちゃんが言外に「そんな事言わないの」と言った風にウィリアム様の肩を叩きます。

 そして私の方に小走りでやって来て小声で仰います。

「カレン、相談があるんだけど」

「何でしょう?」

「あのね、ウィル昨日から機嫌が悪いじゃない?」

「……そうですね。毒舌度がいつにも増してますしね」

「お昼になんちゃってカレーパン作らない?」

「なんちゃってカレーパン、ですか?」

 リンちゃんは一つ頷いて。

「ウィル、カレー好きでしょ? 野菜がないからちゃんとしたカレーは作れないけど、パン擬きの実はあったし、肉をミンチにしてカレー粉で味付けて。……ダメかなぁ?」

 困ったような顔をされるリンちゃん。

 ウィリアム様のために何かしてあげたいというそのリンちゃんの乙女心に、どうして私が協力しないなんてことがあるのでしょう。

「美味しいカレーパンを作りましょう!」

 少し鼻息荒く両手をグーにして握って言うと。

「あ、ありがとう」

 何故かリンちゃんが少し引き気味に見えるのですが?

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