6
「魚は半分塩焼きにして、半分煮魚にしちゃおうか?」
「良いですね。どちらも大好きです」
二人共に両手に抱える程の量の枯れ枝を持ち、拠点へと戻ります。
浄化の魔法を掛けてから、リンちゃんは塩焼き担当、私は煮魚担当として準備していきます。
半分程の処理を終えた所でエドワード様達が戻って来られました。
猪豚一頭に野苺のような物に生姜、そしてこれはシソでしょうか?
匂いを嗅いでみますと、ちゃんとシソでした。
生姜とシソが手に入ったので、煮魚分の魚の更に半分をなめろうへと変更です。
煮魚を作っている間になめろうを作ります。
生姜をみじん切りにし、魚は三枚におろして細切りにします。
ナイフ二本でたたき、ある程度たたいたらみじん切りにした生姜と味噌を加えて更にたたきます。
本当はネギがあるともっと美味しいのですが、このような状況で贅沢を言っていられません。
シソを細く切り、なめろうの上に乗せて出来上がりです。
うん、なかなか美味しく出来たのではないでしょうか。
お昼ご飯が出来るまでの繋ぎと言いますか、おつまみ的な感じで皆様になめろうを配ります。
白米があればお茶漬けが出来たのですけど、残念です。
ホロホロ鳥は竜田揚げにすることになりました。
適当な大きさにカットし、コッソリ持ち込みましたお酒に砂糖と塩を揉み込みます。
更に醤油、味醂、おろした生姜を加えて揉み込み、しばらく置きます。
その間にウサギ肉を三~四回煮こぼし、丁寧にアクを取ります。
本来であれば根菜などと一緒に煮たいところですが、生姜のスライスした物と酒と醤油と砂糖を入れて、コトコト柔らかくなるまで煮ていきます。
猪豚は半分は塩胡椒してステーキに、半分は角煮やチャーシューにするつもりです。
そして唐揚げ用の油はラードを使用致します。
こうしてみると、見事に肉と魚ばかりですね。
口には出せませんが、やはりお野菜が欲しいです。
調理をしておりますと、遠くで微かに爆発音が致します。
戦闘が始まったようです。
私が魔力探知出来ますのは半径二キロ内で、その中に今現在七グループが拠点を置いております。
一番近いグループの拠点でも八百メートル程離れておりますが、先程の戦闘音は私の探知外で行われているようです。
「どっかで派手にやってるな~」
と言いながら、キース様が寄って来られました。
「ご馳走様。これ美味かった。また今度作って」
頭を撫で撫で。
「なめろうを乗せた白米にだし汁をかけて頂くと、更に美味しく頂けますよ」
「それ早く食べたいな」
「ではサバイバルから帰りましたら、早速作りますね」
「楽しみにしてる」
キース様の笑顔に俄然やる気が出てきます。
残りもちゃっちゃと調理してしまいましょう。
全ての食材の調理と下拵えを終えました頃に、ウィリアム様が来られ
「カレン、一番近い拠点の奴らがこっちの方へ移動してるようだが、確認出来るか?」
少し集中して魔力探索を行いますと、確かに八百メートル程離れていた筈のグループがこちらの方へと移動されております。
グループ全員で固まって移動していることから、拠点を移すつもりで移動されているのでしょう。
「確かにグループ全員でこちらの方へと移動されておりますね。このままいくと、鉢合わせの可能性が高いですね」
「やはりそうか。今のうちに拠点に障壁張ってもらえるか?」
「わかりました」
ウィリアム様が作って下さったカマクラのようなものと、調理場を囲むように『女神の障壁』を発動致しました。
これで仮に戦闘になってもカマクラ擬きとご飯は守られます。
「あと100mまで接近中!」
全員で大岩の陰に隠れる様にし、接近中のグループを待ちます。
接近中のグループは八名のグループで、こちらの存在には気付いておられないご様子。
エヴァンス様が呆れた様に小声で呟かれます。
「緊張感まるで無しとか……」
私を含めた皆が同意の意味で頷きます。
「大方さっきの戦闘音にビビって拠点を移動することにしたんだろうけど。多分最後まで逃げ切ろうとか舐めた考えしてる奴らじゃないか?」
キース様も呆れたように苦笑気味に呟かれます。
そして、ウィリアム様の「行くぞ」の掛け声に合わせて、私とキース様以外の方々が出て行かれます。
キース様と全体を見渡せるように大岩に登ると、既に相手グループの半分の方がネックレスの強制転移の発動でサバイバル場より退場されておりました。
「お粗末すぎるだろ」
キース様が盛大な溜息と共に吐かれた言葉に尽きると思われます。
エドワード様とエヴァンス様のお二人で相手グループを全滅させ、リンちゃんとウィリアム様はつまらなそうにその状況を見ておられます。
「降りるぞ」
キース様が先に大岩から跳び下り、こちらを向いて手を広げられて。
「ほら、おいで」
あの、それは私にも跳び下りろということでしょうか?
キース様が私を受け止めると……?




