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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第一章 転生しました 〜カレン5歳〜
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8

 少しして、サーナが長い金髪を後ろで結んだ、長身で線の細い中性的な綺麗な顔立ちの男性を連れて戻って来た。


「デニス、久しぶりだね~」

「ツァイも元気そうだな」


 父は嬉しそうに男性に近寄るとガッチリと握手を交わし、二人はとても仲が良さそうに見える。

 彼が父の親友のギルドマスターなのだろうか?

 ちなみに父の名前はデニス・リードである。

 二人はにこやかに二言三言交わし、ツァイがカレンの方をチラリと見る。


「ここじゃ~何だから、上に行こう」


 そう言って、足早に部屋を出て行った。

 それにサーナとデニスが続き、ラルクとカレンも慌ててあとを追った。

 今いた小部屋横の階段を三階まで登り、一番最初の扉の部屋にツァイが入って行き、カレン達も順番に中に入る。

 その部屋は応接室で、座り心地の良いソファーとテーブルのみの、六人まで対応出来る部屋のようだ。

 他にも四人まで対応可の部屋、十人まで対応可の部屋、二十人まで対応可の部屋があるらしい。

 片側のソファーにはツァイが、反対側のソファーにはカレンを真ん中にデニスとラルクが座る。

 いつの間にかいなくなっていたサーナが、紅茶とお菓子の用意をして戻って来た。

 喉が乾いていたので紅茶をひと口飲んで……カップをソーサーへと戻す。


(うん、マリアの紅茶が飲みたいな)


 せっかく淹れてもらったのに、失礼ながらそう思ってしまった。申し訳ない。

 そうこうしているうちに、カレン達(主に私だろう)を安心させるような笑顔でツァイが自己紹介を始めた。


「さて、この部屋の中での話は外には聞こえないようになっているから、安心してね~。僕は君達のお父さんの友人のツァイ。このギルド『暁』のギルドマスターをしているよ~。ラルクくんの検査の時は仕事で留守にしていたから、二人とも初めましてだね~」


 やはりこの方はギルドマスターで合っていたようだ。

 とても綺麗な方だが、話し方が少しというか、だいぶ残念な感じがする。


「初めまして。リード家長男のラルク・リードです」

「初めまして。妹のカレン・リードです」


 ラルクに続いてカレンも挨拶した。

 ちなみにサーナはお茶を淹れ終えると直ぐに出ていったので、部屋の中にはいない。

 この部屋には、ギルドマスターのツァイとデニスとラルクとカレンの四人のみ。


「それにしても、カレンちゃんは凄いね~。魔力量もだけど、全属性に複数の特殊属性とはね~」


 そう言って、紅茶を一口飲んで渋い顔をして呟く。


「相変わらずサーナの淹れる紅茶は渋いな~」


 この紅茶、マスター好みにわざと渋く淹れていたのではなかったようだ。


「その属性のことでツァイに話したいのだが……」


 デニスがそう口にすると、ツァイはニッコリ笑みを浮かべた。


「うん、分かってるよ~。ここだけの話にして欲しいんでしょ~?」

「ああ、話が早くて助かる。お前なら誰よりも分かってもらえると思っていたよ」


 デニスはホッと一息つくと、少し渋い紅茶を口にした。

 一瞬だけ眉間にシワが寄ったのは、見なかったことにする。


「ラルクくんとカレンちゃんは、お父さんから聞いてないかな~? 今までこの世界で一番の多属性持ちは、実はこの僕だったんだよね~」


 ニコニコしていたツァイが、急に真顔になり、少し考えながら話し出した。


他人(ひと)はね~、手の届きそうなことに対しては憧れや尊敬といった感情を持つけど~、手の届かないことに対しては、恐怖や妬みの対象になるんだ~」


 そして一つ大きく溜息をつくと、ツァイの学生時代の話をしてくれた。

 デニスとツァイは、フォード学園(中等部)で出会った。

 貴族であるデニスは初めての学校、初めてのクラスメイトだったけれど、平民の出であるツァイは初等部から通っており、デニスと出会った頃には既に孤立していたのだ。

 ツァイは他人を信用せずむしろ拒絶していたけれど、デニスと幼馴染のライアテック公爵の二人は、純粋に自分たちよりも多い属性を持つ彼に興味を持ったらしい。

 ツァイ曰く二人はストーカーのようについてまわり、結局彼が折れる形で友人となったとのこと。

 今の二人を見ていると、デニス達にツァイがストーカー……の方がしっくりくる気がするが、それを言っては失礼なので黙っておく。

 詳しく話してはくれなかったが、周りの人々のツァイに対する態度はとても酷かったようだ。

 そんな中でデニスに『神様に愛されて託されたギフトだから、大切にしろ』と言われ、


「あの言葉に、俺は救われたんだ~。ありがとうな」


 ツァイはとても綺麗な笑顔でデニスに微笑んだ。

 前世での自分にも、デニスのような友達がいたらどうだったのだろうか……という想いが一瞬浮かぶが、たらればなことを考えても仕方ない。

 以前の自分は、嘆くだけで友達を作る努力をしていなかった。

 今のカレンには『友達』と呼べる人はまだいないけれど、何もせずにただ受け身でいるのではなく、デニスやラルクのように、信頼できる友達を見つけるために頑張ろうと思う。

 ……とはいえ、中等部まで学校に通うこともないし、外に遊びに行くこともお家柄誘拐などの心配もあり出来ないので、今は機会があればということになるけれど……。


 あれからツァイとデニスで色々話し合った結果、属性は基本属性の中から三つを選び、魔力は平均より少し多いくらいで申告することに。

 本来ならばキチンと申告しなければならないのだけれど、父の言うように危険な目に合わぬよう、そして私がツァイのように辛い思いをせずに済むように、と。

 前世では、こんなにも私のことを考えてくれる人達はいなくて。

 心配してもらえることが嬉しいだなんて、不謹慎かもしれないけれど。

 色々感謝の言葉を伝えなければと思うのに、胸がいっぱいでカレンの口からは、


「ありがとうございます」


 という言葉を絞り出すのが精一杯で。

 俯くカレンをラルクがぎゅうっと抱きしめ、デニスが頭を撫でてくれて。

 カレンという存在をとても大切にしてくれていることに、この環境を与えて頂いたことに、他にも色々と並べたらきりがないほど沢山のことに、感謝という言葉だけでは表しきれないけれど、こんな私でも皆のために何か出来ることは全てさせて頂こうと、心に誓った。

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