ひとりごと
愛する人の愛する人を殺してしまいました
あのひとは悲しむでしょうか
悲しんでくれると嬉しいです
私は今が一番幸せなんです
この幸せは永遠なのでしょうか
永遠でないわけはないのです
幸せなまま時が止まり
ずっとずっと幸せなままなのです
あのひとが悲しんでくれるといいと言いましたが
やはり愛する人の悲しむ顔を見るのは辛いものです
私は幸せですが
あのひとが悲しむのをみると自分のした事が悪かったような気もします
私のやったことは
ただのエゴであり
傲慢な私がこの幸せを保ち続けようとしたゆえの結果だったのかもしれません
いや
きっとそうでしょう
幸せが永遠であってほしいという思いは人間誰しもが持っているものだと思います
きっとあのひとも幸せでありたかったはず
でもあのひとは私とは違って愛する人を失った悲しみまで感じてしまった
愛する人との思い出の中だけで生きてゆくことはもうできないのです
私は愛する人との思い出の中だけで生きてゆくことができます
あのひとはそれができない
可哀想
そういうふうに思います
私まで辛くなります
自分がやった事なのに
そう思うことさえエゴだというのはわかりきっていることなのです
私はきっと他の人から見れば異常者なのでしょう
愛する人の愛する人を殺すだなんて
ありえない
狂ってる
信じられない
そこまですることはなかった
そういう言葉が聞こえてきそうです
でもこれはそういうのもわかってやったこと
私は愛する人の愛する人を
嫌っていたわけじゃない
むしろ少しだけ好きだった
なぜなのだろう
きっとそれは私の愛する人に愛されていたから
こんなふうにぐだぐだ考えていても
愛する人の愛する人はもうすぐいなくなる
いなくなってほしくないけれど
この幸せを永遠のものにするために
これはしかたのないことでした
ああ
足元に液体がぼたぼたと垂れる
きたならしいと思う暇もないぐらいに
それほどまでにさっきよりも速いスピードで
私の手首から血が吹き
そして落ちる音が
耳の奥を蝕みながら
うるさいぐらいキッチンに響く
床に垂れたその液体に
私は頬ずりするようにゆっくりと浸り
最後に喉がひとつ
酸素を噛もうとする嫌な音を立て
愛する人の愛した人はいなくなった