寒夜をゆく
春はすでに遠く。
冷たい雪が、からっぽの心に降り積もる。
一生離さないと誓ったはずだったのに。
腕に抱いていたぬくもりは、もう忘れてしまった。
それが悔しくて、寂しい。
それでも前に進もうとするのは、どんなことにも終わりと始まりが待っていると知ったから。
あたたかな日々を教えてもらったから。
こんな過酷な日々にも、寒凪は訪れた。
でも、やっぱり、寒くて。
いつか春が来ると皆歌うけれど、今はなにも見えなくて。
身体に打ち付けるのは、冷たい桜吹雪。
だから、強く歯を食いしばる。
春を迎えに行こう。




