第十六話 山に轟く
これまでエリカ・バロウズの魔力弾は人に向けられる際、意図的に威力を抑えられていた。
理由は単純なものだ。
最高出力で撃つと過剰な破壊力により、魔力の無駄遣いになるためである。
初めて彼女が魔力弾を撃った時、彼女に襲いかかってきた山賊を山道ごと吹き飛ばした。
相手が死ななかったのは足元だけを狙ったからに過ぎず、当てていれば命中した部位とその周辺の肉が弾け飛んで絶命していただろう。
だからこれまでエリカは人に向けて本気で魔力弾を撃ったことが極端に少ない。
殺してしまうほどの憎悪など、滅多に抱くものではないから。
そして彼女にとって極端な例外となったロザリア・シルヴェストリなる客人は、殺意と憎悪を一身に受けて全身に風穴を開けた。
既に失っていた両手の他に頭部の右半分、右肩、左胸、腹部、右大腿、左足首がそれぞれ吹き飛んで欠損している。
命中した箇所から炸裂したためだ。常識的に考えれば絶対に助からない傷だろう。
そうしてエリカが人を全力で撃ったことに対して一抹の悔悟を抱く暇もなく、
「少しも迷わないのね。そういうところはご両親に似たのかしら」
深紅の少女は残された左目で己の傷を睥睨した。
千切れた大腿の断面を土につけて、強引に体を立てながら。
「あの二人も私と対峙した時は迷わなかった。全く本当に、出逢わなければ殺さずにいられたんだけどねぇ」
「……おいどうなってやがる。そんだけあちこちボコボコ撃たれて死ぬどころか痛がりもしねぇのか、お前」
相手はこれまで苦戦を強いられてきた[デクレアラーズ]において、最強の存在と言っても過言ではなかろう“王の札”である。
流石のエリカも一筋縄ではいかないと認識しながら攻撃したが、まさか全て防がず受け切った上で殺せないとは予想できていなかった。
加えてこれまでに聞いていた話と異なる点もある。
「死にはしないし痛くもないけど無事じゃあないわね。肉も骨もぐちゃぐちゃ、血だって結構流れちゃったし」
以前戦ったルドラ・ヴァルマがそうであったように、[十三絵札]の面々は全身を機械に置換している改造人間であるはずだ。
だが目の前の少女はどう見ても生身であり、明確に血を流している。事前情報と目の前の現実が符合しない。
ただ、本当の意味で生身とも思えなかった。
彼女が真にただの人間であった場合、この時点で死んでいなければおかしい。
「ところでそろそろ私に勝てないくらいの認識は持ってもらえたのかしら。この場で全員相手にするのは面倒だから避けたいんだけど」
まるで自身が尋常の存在ではないと証明するかの如く、ロザリアの肉体に異常な変化が生じる。
蚯蚓めいた細かな肉の触手がズルズルと生えて傷口を塞ぎ、失われた両手両足を再生していき、欠損した顔の半分を覆って元の形状へと復元していく。
明らかに人外の動き。この時点で周囲にいる全員が、目の前の少女を何らかの魔術で作られた人形のような何かであると判断した。
「気持っち悪いンだよお前は!!」
怒鳴り声と同時、圭介が“アクチュアリティトレイター”を振るって【サイコキネシス】が形成した刃を飛ばす。
ユーの【首刈り狐】を模した斬撃は、見事相手の真横に命中した。
「あらら」
一度は元の少女の姿に戻ったロザリアだったが体を前後に分断され、呑気な声を漏らしながら前面と背面を反対方向に倒す。
その瞬間、
「【解放“フラジール”】!」
結晶で構成された無数の棘が飛来してロザリアの全身に突き刺さった。
「落ち着いてエリカちゃんにケースケちゃん! こういうタイプは傷口に異物埋め込むのが一番効くわぁ!」
叫ぶのはハイドラ王国の冒険者、ウーゴ・スビサレタ。
彼のグリモアーツであろう刺突用短剣の柄には灰白色の術式が付与されている。
かつて迎賓館での戦いでも見せた物質具現化魔術による攻撃だ。
ガラスのような細かい刃が浸透するように肉に沈んだ今、ロザリアが元通りに肉体を再生させても異物混入による継続的な痛みが走る。
痛みなど感じていないとしても、肉体の挙動には影響を及ぼすはず。
相手が負った傷を即座に回復させる以上、闇雲に攻撃するより効果的な一手と言えた。
じゃりじゃりと音を立てながら肉同士を密着させて、ロザリアが不快そうな表情を浮かべる。
「流石は“酷双”の片割れね。えげつない真似してくれるじゃない」
「まだまだ、私なんか序の口よ。そうでしょヘラルド」
「おうよ」
ケイ素の結晶による傷口への追い打ちが功を奏している間、ヘラルドは指先から放たれる魔力で空中に魔術円を描いていた。
そこから生み出されるのは、発条を内部に仕込んだ筒状の仕掛け。
アイビーグリーンに輝く四本の支柱を薄い板が囲み、それを砲塔としているようである。
ウーゴがメロンほどの大きさはあろう結晶の塊を創り出すと、その仕掛けに砲弾として装填した。
「脚が治る前にしっかり潰れてもらうぜ、[デクレアラーズ]!」
引き伸ばされた発条が末端部分の接着術式を解除され、一気に縮む。
叩きつけるようにして撃ち出した結晶の塊はそのまま紅い少女に向けて直進する。
対してロザリアは特に反応せず。
砲撃を受けて吹き飛び、轟音を伴って岩壁に衝突した。
背後には亀裂が蜘蛛の巣状に走り、砲弾として射出された結晶は肉ごと岩にめり込んで落ちる様子もない。
口からは血が漏れ、千切れた状態から復元された手足もぶらりと垂れ下がるのみ。
常識で考えれば内臓を潰されて死んでいる。
事実、周囲のドラゴン達の空気が弛緩していく。
だが一度[十三絵札]と対峙した者達は、これで終わりではないと理解していた。
「……ごめんなさい。もしかすると余計な勘違いを二つほどさせてしまっているようだから、これだけ言っておくわね」
砕かれた肉から少女の声が聞こえる。
朗々と語る声に違和感はなく、あたかも雑談に興じるが如く落ち着いた声だった。
「まず一つ。族長のアーマミャーフが死んでいる時点で、後はそこの交渉しに来た人達が帰ってくれれば私の目的は達成される」
着弾してから消失していく巨大な結晶の向こうで、沼にも見える赤く平べったい肉から無数の触手が天に向かって伸びている。
それらはブルブルと震えながら、ロザリアが取り込んでしまった細かな刃を振り払っていた。
人間としての姿を捨てることに躊躇いがない。
それでいてここまで攻撃を受けながらも冷静に、まだ相手と話し合う余地があると見なして説得しようとしている。
度し難いとしか言いようのない、気持ちの悪い相手だった。
「だからもうそれぞれの国に戻ってもらえない? それさえ約束してくれればここで私が戦う理由もないし、犠牲になったのはこの竜棲領の族長だけで済むわ」
ある程度まで異物を取り除けたのか、再び挽肉と化したそれらが少女の姿に成形されていく。
作り出された相貌には友好的とも取れる笑みが浮かんでおり、事実として敵意を感じさせない。
「エリカ・バロウズの気が済むなら好きなだけ撃たれてあげるし、何なら他のドラゴンもアレでしょ? 族長の仇とか言い出すんでしょ? なら引き裂くなり燃やすなり勝手にやってなさいな」
淡々と述べるロザリアの言い分は、どこまでも王国を代表するパーティとドラゴン全体を下に置いていた。
事実、どういう魔術を使っているのか彼女はいくら体を傷つけられても再生してしまう。
不死身と言っても過言ではあるまい。加えて突如洞窟に現れた際の、未知なる移動手段も無視できなかった。
把握できていない情報が多い。
ただでさえ実力差の大きな相手と向き合う中で、それは致命的な要素である。
「それともう一つ。東郷圭介は確かに脅威なんだけど、実のところ部下の藤野ちゃんがご執心でね」
軽くウィンクして場違いな茶目っ気も見せながら、ロザリアは圭介の目を見る。
「まあさっき事のついでに襲いはしたけど結果死ななかったし、良かった良かった」
目が合っただけのはずだった。
睨まれたわけでも殺気を振り撒かれたわけでもない。
本当にただ、人混みでも偶発的に起こり得る程度の事象として圭介はロザリアと視線を交わしただけ。
だというのにその一瞬で、耐え難い不快感と恐怖が全神経を駆け巡った。
「ッ!」
「というわけで要求さえ受け入れてくれればこの場は見逃してもいいと思ってる。普通は“王の札”を敵に回して生き残れることなんてまずないし、今回はラッキーだったとでも思っててくれればいいわ」
「調子乗るなクソ女!」
「ふざけんじゃねえ!」
話を完全に終えるより先に、エリカの魔力弾とドラゴンの炎が別々の角度からロザリアを襲う。
再び全身に無数の穴を開けられ炎に包み込まれたロザリアが、体を支え切れず燃え上がりながら転ぶように倒れた。
笑いながら。
「アハハ、すっごく怒ってる」
「族長殺してケースケも殺しにかかった奴が都合いいこと抜かしてんじゃねーぞダボ!」
倒れたロザリアと圭介の間に複数のドラゴンが割って入る。
族長アーマミャーフを殺害した今、彼女にとって次なる標的は圭介だ。
となれば彼の近くにいればロザリアは接近してくる。そう踏まえての動きだろう。
その中の一体が背後、洞窟に近い位置で“シルバーソード”を構えながら様子を見ていたセシリアに語りかける。
先ほど圭介と話していたアーマミャーフの側近、イクルビであった。
「アガルタから来た騎士よ。奴が貴殿らの言っていた[デクレアラーズ]という敵なのだな」
「……ええ。ただその中でも特に厄介な部類の相手です。お互いのためにハッキリ申し上げますが、ここまでの動きを見ていた限りドラゴンより強力でしょう」
「だろうな。だが戦わない理由にはなるまい。こちらは族長を殺されている」
怒りを表すかのように牙の狭間から炎を滲ませ、ロザリアを見据える。
敵意、害意、殺意。
ありとあらゆる感情を無数のドラゴンから向けられた当の本人は微笑んだまま、静かに溜息を吐いた。
同時に黒く焦げた部分が内側から爆ぜるように生じた肉で剥がされ、またも無傷の状態へと戻っていく。
「うーん、交渉決裂かあ。悲しいわね」
「交渉もクソもなかっただろ。僕らの中に納得してた奴一人もいなかったぞ」
「じゃあ仕方ない。敵対意思を確認した以上はきちんと殺しておきましょう」
言って、ロザリアが手をパンパンと二度叩いて鳴らす。
すると彼女の頭上に純白の術式が出現した。
形状は球。
円環を成す術式と帯状の術式が組み合わさり、一つの術式として機能しているようだ。
「あ?」
「じゃ、雑魚狩りは頼んだわよ」
展開された球状術式の中心に光が集合していき、膨れ上がる。
やがてその内部に一瞬で蓄積した熱が爆発し、無数の矢となって周囲に拡散された。
「おわ――」
レーザー光線。
圭介の【バニッシュメント】と類似した原理で繰り出されるそれらは、竜棲領のドーム状住居と警戒が充分でなかったドラゴンの体を貫いていく。
着弾と同時に爆発も起こすため、瓦礫と竜の骨肉が生き残った誰かにぶつかろうと構わずそこかしこに四散していった。
急ぎ【サイコキネシス】で障壁を作り仲間達とともに防御態勢に入るも、そこでレーザーに意識を割かれてしまう。
「じゃあ私達は私達で」
気づけば無傷のロザリアが眼前に迫っており、
「楽しみましょうか」
「ブッ……!」
圭介の腹部に拳が叩き込まれる。
またも物理的な一撃で殴り飛ばされた圭介は、己の防御だけで防ぎ切れないほどの威力を確かに感じ取った。
空中でどう着地するかを考えるよりも先に、背後にある何かが体の動きを受け止める。
「さっきから何だあの動き!? キメェ!!」
レオのグリモアーツ“フリーリィバンテージ”だ。
縦横に伸ばされた複数の包帯がネットの役割を担い、圭介の体を衝撃から守ってくれた。
どうやら仲間達のいる場所にまで戻されたらしい。未だ降り注ぐ光の矢に意識を奪われて把握しきれていなかったが、全員既に【解放】を終えていた。
「総員、狙撃に気をつけろ!」
歩み寄るロザリアと圭介の間に入り、セシリアが指示を飛ばす。
「あの光の矢は間違いなくアガルタで私の飛空艇を狙撃した者の魔術だ! 恐らくロザリアとは別の[デクレアラーズ]によるものだろう!」
「知ったところで対処するだけの余裕もないでしょうに」
悠然と向かってくる“シャルルの座”は光の術式の正体を知られて、特に惑う様子もない。
そして彼女が一歩ずつ踏み込む度に光線の数は増していき、竜棲領の被害もその背後で拡大していく。
「そろそろ真っ当に戦おうと思ってる私の前で、私以外に意識を向けて無事でいられるものなら是非そうすれば……」
言って右手を振り上げた、その直後。
これまでドラゴンを襲っていた純白の光が、ロザリアの右手を穿った。
「……ん?」
黒く焦げて煙を上げる穴が開いた手を見ながら、彼女の動きが一旦止まる。
すると即座に理解したのか「ああ」と呟いてから損傷した右手を自ら左の手刀で斬り落とした。
「なるほどね。空間歪曲術式か」
「一発でバレたぞおい」
「頭がどこかもわかんない割に頭良いなぁ……」
緊迫した状況で軽口を叩くのは、スクトゥム型グリモアーツ“パラベラム”を構えるテレサ。
彼女の空間歪曲術式が遠隔で発動しているのか、途中から光線はドラゴンや住居を避けて空に向かうよう軌道を歪められていた。
ロザリアの手を貫いた光線も空間ごと進行方向を変えられたものだ。
「ともあれ皆さん、悪いけど私達は一旦その光線撃ってる奴を探しに行ってきます!」
「ありゃ誰かが探して直接叩かなきゃ無理だ!」
言うと同時、ヘラルドが魔術で三角形の足場らしき金属板を生成する。
その上にハイドラのパーティが乗り込むと、金属板はふわりと浮かび上がった。
「狙撃の方はどうにかするんで、ドラゴンの皆さんはアガルタの人達に協力お願いします!」
そう言って振るわれた鞭のように伸びてしなる刃が、展開されている純白の術式を切断する。
竜棲領を襲っていたレーザー光線の発生源は、それだけで光の粒子となって散った。
遠隔でドラゴンを殺傷する威力を出力し続けるとなると、繊細な魔力操作を求められるのだろう。
そこに光線を屈折させながら術式に到達する攻撃が介入したため、レーザーを撃っていた何者かは魔術を維持できなくなってしまったのだ。
だが次が来ないとも限らない。
対処するには急いでその何者かを見つけ出す必要があった。
「手下の方は俺らに任せな! そこの女は悪いけどケースケ達に任せる!」
「また来るわねぇ! それまで絶対死ぬんじゃないわよぉ!」
「頑張ってください」
やがて浮かんだ金属板は西の空に向かい、緩やかに加速し始める。
捨て置けば厄介と判断したのか、ロザリアがそれを見て右手を即座に手首の断面から生じさせた。
「好き勝手してくれる!」
「第三魔術位階【サンドストーム】!」
何らかの攻撃を繰り出そうとするロザリアを中心に、中規模な砂嵐が発生する。
圭介がアーマミャーフにも使った【サンドストーム】である。
「なっ……」
不思議なことにこれまで使ってきた空間転移のような移動を、この時ロザリアは見せなかった。
否、見せられなかったと言うべきか。
先ほどまでと何が違うのか、がむしゃらに動きを止めようとした圭介にはわからない。
ただ彼女の口からは小さな呟きが漏れている。
「無視する? いや、でもまだ……動くにしてもここは……」
「ゴチャゴチャうるっせんだよカスボケゴラァ!」
「んオゥ!?」
テレサ達の姿が遠くなり、砂嵐も消えたタイミングでエリカの魔力弾がロザリアの側頭部に命中した。
ただし今度は肉が弾け飛ぶことも弾丸が貫通することもない。
魔力弾は頭部に埋まったまま術式を展開する。
「【もう一つ上へ】!」
エリカが魔道具ルサージュを起動すると同時。
ロザリアの頭部、眼窩の空隙や耳、鼻、口などといった部分から赤銅色の魔力が溢れ出す。
「何、を」
「【いっぱい笑って早く寝ろ】!」
詠唱が完了した。
した、ものの。
何か目立った変化があったわけでもなく、一瞬静寂が訪れる。
それを破ったのは何らかの第六魔術位階を付与されたロザリアだった。
「………………あ、うわああ気持ち悪っ! いや何え、気持ち悪っ!!」
見えざる何かを振り払うように四肢を振り回し、全身のあらゆる箇所を歪ませ、膨張と収縮を幾度も繰り返す。
何が起きているのかと圭介がエリカの方を見るも、彼女もまた不可解そうな目でロザリアの変化を見ていた。
「何やってんだお前? そんな全身ブクブク動くような魔術じゃねえぞそれ」
「あ、ああぁぁぁぁぁあ?」
ここに至って初めて動揺したロザリアが、口から土をも溶かす唾液らしき何らかの液体をこぼしつつエリカを睨む。
「体の一部をくすぐったくする第六魔術位階【フェザータッチ】の効果をルサージュで強化したから、今のあいつはあくまでも全身を指で強く擦られてるような感覚になってるだけなんだが」
「そら気持ち悪いわ! すげぇなエリカ、ちょっと今だけあいつに同情しそうになってるよ僕!」
「何てことしてくれてんのよアンタは!」
奇妙な形状に変化し続ける肉塊と化したロザリアが明確な敵意をエリカに向ける。
その瞬間、ロザリアの真上からロッキンズンの拳が振り下ろされた。
「びっ」
「こんなものでは死なんか」
地面にロザリアごとめり込んだ拳を引き抜く。
拳にこびりついた肉は砕けた状態から再び少女の形へと集合していくが、微妙に元通りの形状になれずにいる。
まだ【フェザータッチ】の効果が残留しているらしい。
「だが怪しげな光線は止んだ! 者ども、今のうちに族長の仇を討つぞ!」
「こ、の……!」
未だ人の形を保てないロザリアに向けて、ドラゴンの大群が鯨波の声を上げながら押し寄せた。
これまで物理的損傷を受けても平然としていた相手が、精神的な攻撃を受けて止まっている。
好機はここだ。
これを逃せば勝ちの目はない。
未だ決定打はないが、そんなものを探っているだけの余裕もない。
わかっているからこそ、全てのドラゴンが、頂点捕食者たる種族の群れが一切の油断も慢心もなくロザリアに爪牙を向ける。
彼らの決死の突撃とは反対方向で、きっかけを作り出したエリカも熱量では彼らに負けていない。
「おっしゃ次はミアちゃんあたしを全力で強化してくれ! あのクソアマにもっと気持ち悪い魔術叩きつけてやる!」
「まあうんそうだね今回はあんたに乗るわ! 勝てそうだし!」
「ギャハハハハ! テメェさっき楽しみましょうかとかほざいてたよなぁ、笑ってみろよこの状況でよぉ!」
「まあ……一応状況を打破したわけだしな……うん…………」
呆れているのか真面目に評価しているのかわからない顔で、セシリアがエリカを見つめていた。




