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足跡まみれの異世界で  作者: 馬込巣立@Vtuber
第二章 変態飛行の藍色船舶編

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幕間 雌伏

 森の中から戻ったエリカが意識を取り戻したミア、ユーの二人と共にシャワー室に向かった後の広場。

 フィオナは今回の合同クエスト中止に伴い関係者各所に謝罪し終えたレイチェルと共に、学生や教員が一人でも森の中に残されていないかの最終報告をテディから受けていた。


「獣道から木々の狭間まで徹底して確認し終えました。名簿との照合も問題なし、現在森の中には我々以外誰もいません。引き続き森林内部の調査も済ませたいと思っています」

「ありがとうございました。常駐騎士団の皆様もキリのよいところで休憩に入って下さい」


 レイチェルの言葉にテディが軽く会釈し、森の中へと入っていく。

 とりあえずの急場は凌いだ。後日改めて保護者を集めて今回起きた事態の詳細な説明も求められるだろうが、対応の早さと真摯な態度が功を奏して彼女を強く責める声は今のところない。


 ハンカチで冷や汗を拭きつつ、レイチェルがフィオナに頭を下げた。


「姫様、本日はわざわざお越しいただいたというのにこのような事態になってしまって誠に申し訳ございませんでした」

「何をそのような。そもそも合同クエストに参加したのは私個人のわがままです。寧ろ今日は生徒の皆様に大変なご迷惑をおかけしてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます」


 恐縮するレイチェルに対してフィオナも頭を下げはしないものの謝罪する。

 謝罪の応酬になってもいけないと判断したのか、レイチェルは「いえ」とだけかぶりを振りつつやんわりと否定する。

 その様子を見て察したのか、互いにそれ以上は謝らなかった。


「それでは私も一旦失礼致します。またケースケさんが目覚めたら今回皆様に依頼したクエストの話をさせていただきますので」

「はい。お待ちしております」



   *     *     *     *     *     *



 言ってフィオナは広場から離れると、しばし歩いて公衆トイレに入る。


 現在この場に存在する女性はそう多くはない。いるのはシャワー室でお喋りに興じるエリカら三人と缶コーヒー片手に束の間の休息を得るレイチェル、森の中でテディと共に行動するセシリア。


「レイチェル女史の業務能力に問題はないでしょう。来年もアーヴィング国立騎士団学校は彼女に任せることになりそうね」


 そして女子トイレに入ってそんなことを口にするフィオナと、


「それを聞いて安心したの。私、レイチェル先生好きだから卒業までは一緒がいいの」


 返事をしながら突如姿を現したコリンだけである。


 それまで姿を見せなかった彼女の手には銀色に輝く一眼レフのカメラがあった。どこか丸みを帯びたフォルムは片手で握り込める程度のコンパクトなもので、小さな少女の手には丁度よさそうに見える。


 名を“カレイドウォッチャー”。撮影にも用いられるコリン・ダウダルのグリモアーツである。

 光の屈折や虚像の生成による視覚情報に影響する魔術を好んで習得する彼女は、普段このカメラで姿を隠しながら情報収集する。


 例えば、自身が仕える姫君の興味を引く客人の動向など。


「しかし末端とはいえ王城諜報部に属する貴女らしくもない。先日提出したケースケさんのインタビュー記録は何なのかしら。誰が秘密基地に最適な施設の案内や煙草屋の宣伝、怪談話の類について取材してくるように頼んだというの」

「自分でもわけがわからん内にあんな結果になってしまっていたの。本当に申し訳ないの」

「全く……。しかし面白い人ではあったわね。ちゃんと私を嫌いになれたようだし、あれなら信頼できるというものだわ。私、珍しくこれから先が楽しみで楽しみでしょうがないのよ」

「わざわざ自分から嫌われるような発言してまで反応見るとか物好きなお方なの」


 嫌われた、と楽しげに語るフィオナも大した捻くれ者だがそれを微笑ましく眺めるコリンも大概である。


「だってようやく見つけた念動力使いだもの。それも客人の。権力に対して媚びるしか出来ない太鼓持ちなら邪魔なだけだし何らかの方法で排除していたでしょうけど、彼なら今後も私に協力してもらっても問題ないでしょうね」

「あーこりゃケースケ君も災難なの。……それで姫様、今日一日ケースケ君を後ろから見てきて気付いたことがあるの」

「何かしら?」

「彼はまだこっちの世界に来てから日が浅いのもあって、詠唱も術式の準備も充分に習得できているとは言い難い状態なの。このまま放置してたらまたぞろ排斥派にちょっかいかけられた時にどこまで対処できるかわからないの」

「つまり?」


 問いつつその顔にはコリンの言い分を見透かした確信がある。

 わかってはいたが、と呆れつつコリンも話を続けた。


「彼の【テレキネシス】はあらゆる魔動兵器と相性がいいの。そして魔動兵器という分野においてこの国で最も顔が広く最も多くの知識を持っているのは姫様なの」

「それで?」

「もうここまで言えばわかるだろうけど」


 その時彼女らが浮かべた十代の少女らしからぬ邪悪な微笑みを、もしも圭介が見ていればどうなったか。


商売ビジネス時間チャンスなの」


 恐らく「女って怖いなあ」などと、今更なことを言ったかもしれない。

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