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足跡まみれの異世界で  作者: 馬込巣立@Vtuber
第十二章 三ヶ国首脳会談編

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第十三話 大穴に哭き声は響いて

「う、ぉおおああああああああああ!?」


 自由落下などでは決してなく、魔術的な要因によって体が空中から大地へと降ろされている。

 否、落とされている。


 どうにか無事に着地するため念動力で上へと浮かぶ力を発生させるも、抗いきれない。


「ぐっへ!」


 少しは緩和させることができたものの、どうしても“アクチュアリティトレイター”越しに伝わる衝撃で体に痛みが走る。

 とはいえ痛みに耐性を持つ圭介だ。構わずすぐに立ち上がって周囲を見渡す。


「ケースケ!」

「ケースケ君!」


 地上で駆けつけていたらしいエリカとユーの声が聞こえ、しかし危機感から振り向くより目の前で発動された魔術を捉える方を優先した。


 見えたのは地中に潜る紫黒色の巨大な尾びれ。


「ケースケ、まだ油断するな!」

「いや、油断しなければどうにかなるってわけでもないんすけど! 何すかさっきのやつ!?」

「今行くから待ってて!」


 焦燥感に浮き立つエリカとレオの声がすぐ近くで聞こえたため、目視するより早く文字通り飛んで合流する。

“アクチュアリティトレイター”で地面を削りながら集まっている仲間達のすぐそばへ移動した圭介は、まず現状を確認することとした。


「あいつ何しやがった!? こっちはよくわからないまま地面に叩き落とされてわけわかんないんだけど!」

「な、なんかおっきい魚みたいなのが出たと思ったら……地面に潜ってった……」


 ミアの明らかに動揺している声を聞いて圭介も戸惑ってしまう。


「魚ぁ?」

『先ほどとは別の第三魔術位階によるものです。私も離れた位置から確認しましたが間違いなく魚の形状を模した何らかの魔術が使用されていましたね』


 ルドラに弾き飛ばされたアズマが空から圭介の頭上に戻った。僅かな安堵を覚えつつそこから油断に繋がらないよう、現状の把握に努めた。


「僕以外に二人、上にいたけど……他はどうなったか見えた?」

「さっきケースケと一緒に突っ込んでったハイドラの姉ちゃんとラステンバーグのイケメンも別々の方向に落ちてったな。着地体勢に入ってたから多分大丈夫だろうけど……うおっ」


 他二人の安否についてエリカが軽く触れたところで、激しい地響きがその場に立つ全員を襲った。

 ルドラが何を目的として先ほど魔術を発動したのか、同時にどれだけ周囲への被害を顧みない相手であるかを知る身としては気が気でない。


「エリカ!【チェーンバインド】で全員を繋いで、早く!」

「あ、お、おう!」


 圭介の声に込められた危機感を受け取ったエリカが急ぎ魔力の鎖を魔術円から伸ばし、パーティメンバー全員の体を繋ぐ。


「ちょっと全員飛ばすから、しっかり掴まって!」

「け、圭介君何するつもりっすか?」


 レオの疑問に応じるより優先して、五人全員が乗れそうな大きさの瓦礫を【テレキネシス】で引き寄せる。次いで【サイコキネシス】で全員の体を強引に浮かび上がらせて上へと移動した。


「あの野郎さっき地盤から掘り起こすって言ってた! それが本当なら今からこの辺り一帯の地面が吹っ飛ぶから、普通に立ってたら危ない!」

「え、えええぇぇ!?」

『早急に空中へ避難することを推奨します』


 アズマの言う通り、すぐに瓦礫とともに真上へ避難する。

 他のパーティの様子を見るとイスモ達は砂で構成された巨大な鳥を足場として滑空し、テレサ達の方は灰白色に輝く結晶の円盤に乗って勢いよく地面から飛び上がるのが見えた。


 それぞれがそれぞれの形で地上から離脱した瞬間。


 大地が、砕け散った。


「うおっ」

「きゃっ!」


 無数の土くれと瓦礫が空へと舞い上がり、一定の高度で静止する。


 結果として作り出されたのは眼下の闇と宙を揺蕩う建物の残骸。


 底が見えない大穴を中心として渦巻くような形で浮遊する足場は、ある部分からは破裂した水道管と繋がっていたのか水を吐き出し漂わせ、ある部分は灯るように優しく輝く炎に包まれていた。

 地獄を立体的に再現した芸術のようにも思える光景の狭間、撫子色の光をぼんやりと纏う球体が一つ。


「そこかァ!」


 そして圭介から見てその光より更に奥、紫黒色の塊が喜色に満ちた叫びを上げる。

 全身に魔力を纏い小舟ほどの大きさとなった姿はイサキに似ているものの、間違いなくルドラ・ヴァルマだ。


 気づいた圭介らが止める暇もなく、一本の矢と化した魚がデニスによるものであろう結界を貫いた。

 上部がかち割られた結界を通り過ぎて、禍々しい魚影が身をよじる。どうやら細かい旋回は難しいらしい。


「あいつっ、レオ! 頼む!」

「わかったっす!」


 ルドラはともかく、デニスがいるであろう球状の結界は下部を足場と残して未だ空中に留まっている。負傷者がいたとして今すぐレオが回復させれば救助できる可能性は高い。


 あの場所にはフィオナとセシリア、他の騎士もいるだろう。

 デニスが即死している可能性は極めて低いはず。


 だとしても救助は急務となる。いち早く彼らのいる場所まで辿り着かなければならないのだが、


「何だ!? オイオイ変な動きしてンぞあの人ら!」


 エリカが驚嘆の声を上げた通り、淡い光を宿しながら再び球状の結界を修復した彼らは何故かルドラがいる方へと引っ張られていく。傍から見て自殺行為以外の何物でもない。


(あの魚みたいな魔術、近くにあるもの引っ張りながら移動してんのか!)


 見れば確かに、周辺に浮かぶ無数の岩や瓦礫も流れに巻き込まれる砂粒が如く紫黒色のイサキに引かれていくのが見えた。

 内部にいるルドラが方向転換する度に弧を描いて結界があちこちに浮かぶ障害物に衝突し、中にいる人影も動きに対処しきれず振り回されている。


 何度目かのカーブに伴い、空中でルドラが突然魔術を解除した。


 紫黒色の魚は泡沫と消え、結界とその内部にいる各国の権力者らがまとめて彼の手元に引き寄せられる。

 やがて追跡していた圭介達を乗せた足場も互いの声が届く程度の距離まで接近したところで、砂の鳥と結晶の円盤も追いつく。


 再度、今度は空中で国防勲章受勲者に囲まれながらもルドラは変わらず涼しい顔でとうとう捕まえた王の集いに目を向けた。


「さて、役者も揃ったところで改めて自己紹介といこう。俺が今回こんな真似をするに至った理由にも繋がるしね」

「な、なんで」


 もみくちゃにされたらしく衣服がところどころ乱れている王族の中。

 顔面蒼白となったラステンバーグ現皇帝、アブラム・ラステンバーグ四世が悲鳴に近い怒声を吐く。


「なんで貴様が……いやそうか、奴の息子かっ! それとも孫か!?」

「違うよアブラム。若い姿に戸惑うのもわかるけれど、俺は間違いなくルドラ・ヴァルマ張本人だ」


 それを聞いて呆気に取られた様子の老爺に、国防勲章受勲者が、のみならず彼の近くにいる騎士から息子たるラウリまでもが訝しげに視線を向ける。


「転移後はラステンバーグの国営施設に預けられた客人の孤児にして」


 しかし、続くルドラの言葉にそれどころではなくなった。


()()()()、お前が開催していた盤上遊戯(ボードゲーム)における数少ない脱走成功者だよ」


 五〇年前。

 ルドラは確かにそう言った。


「……は? 何言ってんだ?」


 ハイドラ王国から来た一人であろう少年が、目を丸くして思わずといった様子で疑問を呈した。

 当然の反応と言えよう。目の前にいる褐色の青年は二十歳ほどにしか見えない。


『やはり生身ではありませんでしたか』


 だがその言葉の意味するところと彼の現状を理解する者が一人だけ――否、一羽だけいた。


『彼の体を構成しているのは機械です。魔力反応が胴体の中心部分に集中している事実から推察するに、恐らく内蔵したマナタイトを魔力の起点としているのでしょう』

「マジかよ。じゃああいつ、見た目こそ若いけど実際にはかなり歳食った改造人間ってことか」


 アズマと圭介の会話を聞いたルドラが苦笑いを浮かべて応じる。


「年寄り扱いはともかく改造人間かぁ……。一気にカッコ悪いな、俺」

「モノが何であれ、大陸全土で禁術指定されている類の魔術が使用されているのは間違いなさそうだな」


 ハイドラ国王たるルフィノが肩についた埃を払いつつ、招かれざる珍客へと視線を飛ばした。

 王と言えども戦場を知る者である。迸る殺意と闘気は常人のそれではない。


「我がハイドラ王国は、言ってしまえば[デクレアラーズ]の被害が小さい。そのため国内でも諸君による“大陸洗浄”の脅威を甘く見る風潮はある」

「正直な王様だな。まあ、好感は持てるけれど」

「とは言えこのような狼藉を見逃すほど無法の輩となった覚えもない。然るべき措置として君を拘束、最悪の場合は始末しなければならないわけだが……」


 そう言いながらもルフィノはグリモアーツを取り出す様子を見せずにいた。

 まるで、戦うべき時が未だ来ていないかのように。


「……先に確認する必要があるな。盤面遊戯(ボードゲーム)とは何だ?」

「聞く必要などない!!」


 誰よりも激しく動揺しているアブラムの口から怒声が吐き出される。


「こんな、こんなテロリストの言うことを聞く必要がどこにある! 見よ! 人も街もめちゃくちゃだ、殺したのも壊したのもこいつだ、そんな男の言葉にいかほどの重みが、価値が、意味がある!?」

「ラステンバーグのとある場所を舞台とした代理戦争ですよ、ハイドラ王」

「なっ……」


 今度こそアブラムの言葉が完全に途絶えた。

 言葉に含まれた大雑把な意味を説明したのはルドラではなく、先の攻撃を受けて負傷したらしい右肩から血を流すデニスだったからである。


「……そうなのか? 恥ずかしながら私が王になってからそういった情報は入っていないが」

「間違いないよ。とはいえ貴方の口から説明されるとは少々予想外だったけどね、アガルタ国王。我らが道化は君も若い時分に何度か顔を出していたと言っていたから、てっきり黙り込むかと」

「あの戦いを傍観していた件について否定も言い訳もしない。当時の私には必要な選択だった」


 言葉と声に宿る誠意と覚悟は確かなものだ。それを感じ取ったのか、ルドラの手は結界に貼りついたまま次なる攻撃に移らない。


「なるほど“戦い”と来たか。ハイドラの王としては充分な情報から公平な判断を下したいところだな。なので覚悟の上での子細な説明を求めよう」

「ええ、もちろん」

「きぃぃっ!」

「父上、動かないでください! もし今の話が本当なら私も聞かないわけにはいかない!」


 今にも掴みかかりそうな雰囲気のアブラムと暴れる父を羽交い締めにしているラウリを無視して、ルフィノから続きを促されたデニスが続けた。


「厳密にいつから慣習化していたかは不明ながら、我が祖父が国王として現役だった時代には既に催されていたそうです。ラステンバーグ皇国が当時の帝国からの支配を逃れる、あるいは平和的に受け入れるべく提案したのがそれだった」

「平和的にってのも欺瞞だがね。当時の皇帝が守ろうとしていたのは国民の生活ではなく皇族の地位でしかなかった」


 呆れたようなルドラの言葉に反論する者はいない。


 ハイドラが帝国として機能し領土的野心に燃えていた頃、ラステンバーグ皇国の戦力はハイドラとおおよそ拮抗していた。

 戦争において力の拮抗はお互い望ましくない。どちらが勝つか確信を持てない以上、国を動かす立場の人間にとってあまりにもリスクが高いためだ。


 そこでラステンバーグが提案した平和的な解決方法。

 それこそが盤面遊戯(ボードゲーム)と呼ばれる代理戦争である。


「戦乱の中でハイドラが抱えていた大量の戦災孤児や負傷兵、ラステンバーグに流れてきた難民……。他にも浮浪者や廃嫡された貴族の子供なんかを集めて、そいつらに殺し合いをさせたのさ」


 言って、ルドラは少し離れた位置にある豪奢な建造物に視線を送った。


「皇帝が住まうラステンバーグ大宮殿。その地下にある広大な闘技場で、俺達は殺し合いを強要された。それこそ盤面遊戯(ボードゲーム)の駒としてね」

「う、うう嘘を! 大嘘を吐くなこの犯罪者が!」

「全部事実じゃないか。それに……デニス、でいいかな? 君の話に一つ追加するならば」

「構わない。こちらで言う」


 まるで友人かのように気安く犯罪者の言葉を遮り、国王たるデニスが淡々と話を続ける。

 その様子はどこか自暴自棄になっているようで、圭介には己の死を受け入れた人間の挙動にも映った。


盤面遊戯(ボードゲーム)が終焉を迎えたのは三十年前、ハイドラが内紛によって一度国の在り方を変貌させたのとほぼ同時だった。逆を言えば少なくともそれまでラステンバーグはこの催しを継続していたことになる」

『となると陛下の着任時期と部分的に一致しますね』


 アズマの冷徹で無慈悲な指摘は、その場にいた全員にデニスの話の方向性を告げるものだ。


 即ち。

 アガルタ王国の現国王も、そのおぞましき盤面遊戯(ボードゲーム)に関わっていたと。


「倫理的に許されないという難点を除けば画期的な手段だった。諜報員を用いてこの戦いを嗅ぎつけた我々アガルタの王族も途中から便乗し、三大国家間で戦争を表面化することなく様々な決定をしてきたのだ」


 帝国時代のハイドラから逃げ出した難民はラステンバーグにばかり集結したわけではない。

 中にはもちろん、アガルタへ渡った者らもいたのだろう。


 当時のアガルタはそういった彼らを全員受け入れてきたが、常識的に考えて際限なく外部の人間を受け入れるなどできようはずもない。


 どこかで減らす必要がある。

 それも、極力利益となり得る形で。


「私も若い時分、まだ第一王子として国営を学んでいた頃に父に誘われ幾度か見学に行った。その際に見聞きした情報が直接役立つ機会は結局得られなかったが」

「なるほど。つまるところ貴殿はルドラという反社会的な人物と異なり、公的な立場から盤面遊戯(ボードゲーム)の実態を語れる生き証人というわけですか」

「そうなります」


 王の中で唯一関わりのないルフィノはそれで納得したらしい。


 だが急にとんでもない情報を知らされて一番戸惑っているのは国防勲章受勲者ら一同である。

 特に教会警備隊に属するイスモは信じ難いものを見る目でアブラムの表情を見つめるしかできておらず、その様が逆にこれまで保ってきた皇国への高い忠誠心を示していた。


「ま、彼の場合は望んで参加しに来たわけでもなかったから構わないよ。けれどねアブラム。君は、君に関しては別なんだ」

「ひっ」


 デニスの結界を手に貼りつけながら、ルドラはアブラム・ラステンバーグ四世として皇国の頂点に立つ老人を睨む。


「アガルタ国王。ここまでの話で一つ、君の罪を告白する上で必要性がないからと省略した部分があるね。アレは決してただの代理戦争なんかじゃなかった」

「予想はできるしその言いぶりで察するに余りあるが」


 ルフィノの言う通りだった。

 これまで少なからず国や権力の裏側にあるものを見てきた圭介にも、盤面遊戯(ボードゲーム)なる戦いが持つ意味は何となくわかる。


「大方のところ各国の貴族や王族といった権力者が集い、どの勢力が勝つかを賭けの対象にでもしていたのだろう」


 道楽。遊興。愉しみと金。


 生きている人間を駒に見立てて遊びに例え名付けられた戦いだ。当然そういった側面を持っていても疑問はない。


「そうさ。俺と俺の仲間達が脱走したのも、命をオモチャにされて使い潰されるのが嫌だったからだ」


 今回の襲撃を圭介や他のメンバーは、いつもと変わらない[デクレアラーズ]の襲撃としか考えていなかった。

 しかし現実はそう単純ではない。明確に国家から被害を受けた者により実現されたこれは独善的な懲罰に在らず、憎悪を起点とする復讐である。


「俺らは国の違いなんてどうでもよかったよ。ラステンバーグもハイドラもアガルタも、出身地や人種でああだこうだ言っちゃいなかった。いい奴らだった。転移したばかりの俺に優しくしてくれた、年上ってだけで少ないメシを分けてくれた、洗濯や掃除のコツを教えてくれた、しんどい時には水の汲み取りを代わってくれた、こっそり捕まえた狼の肉を焼いて皆に食わせてくれた、本当に誰もが優しかった」


 機械の体は人間のそれと大きく異なるのだろう。


「違う勢力に引き込まれた弟を心配してた、母親の死に顔を思い出して眠れない子供を寝かしつけてた、病気してる誰かのために大人に殴られながら薬を求めてた、傷が深い誰かのために大人に蹴られながら包帯を求めてた、生きるためなら何だってやった、靴を舐めた変なもん食った毒とわかってても飲んだ、中には妊娠させられた子だっていた。みんなが誰かを想い、誰かのために生きていた。必死だった」


 悲鳴にも似た声で紡がれる彼の鬼哭は、涙を伴わない。


「それをお前は遊び半分金稼ぎ半分で何人も死なせた! 俺達は脱走できたから幸せに暮らせた、なんて甘い話で終わらなかったぞ、だってこの手と頭が自分と同じ境遇の子供を自分が生きるために殺したと覚えているんだからな!」


 凄絶な過去を起因とする根深い憎悪はやがて周囲の瓦礫を残骸を、ルドラのもう片方の手に集合させて物理的な形を得る。


 二度目の【ハッチポッチスター】が発動されようとしているのだと理解した圭介は、彼の言い分や境遇を一旦頭から追い出して自分達の足場が引き込まれないよう踏ん張った。


「んぎぎ、キッツ……!」


 地面という安定した土台が目視もできない遥か下まで離れている今、【テレキネシス】でかき集めた足場を失うわけにはいかない。

 しかしただ耐えているだけではルドラの攻撃を防げないだろう。そしてこの戦いが始まってから今に至るまで有効打を与えられていない以上、どう止めるべきか何も考えつかなかった。


 と、内心でややアブラムの生存を諦めそうになった時。


「そろそろ準備できたか?」

「はい、お父様」

「よし。やれ」


 どこか聞き覚えのある声でのやり取りが聞こえた。


「第三魔術位階【サンクチュアリフォース】」


 途端、ここまで何も発言してこなかったフィオナの周囲に黒い斑模様が浮かび上がり、球状の結界を包み込む。


「……あ?」


 間抜けな声に目を向ければ。

 集合しつつあった即席の隕石とルドラが、眼下の闇に向けて自由落下を始めていた。

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