第二十六話 強大なる者
背後から投げかけられた声に思わず圭介が振り向いたのと、ヨーゼフが反応を示したのはほぼ同時だった。
「……無戒さん…………どうして、ここに」
無戒と呼ばれたその存在は、夏だというのに暑苦しくも漆黒の外套を纏った二十歳ほどの青年の姿をしている。名前から推察するに圭介と同じ日本人だろう。
「残党を処理するついで、下の迷宮に女共が残っていないのを確認し終えたのでな。貴様の箱を回収しに来たところだ。あの中には戦闘機や機関銃の他にも様々な兵器が収納されていただろう」
黒い短髪に黒い目。
身長は圭介よりやや高い程度。
暑苦しさに目を瞑れば、服装も奇抜な造形ではない。
外見だけならどこにでもいるであろう、至って平凡な男に見えた。
「ならばせめて中身は保存しておいてやろうと老婆心を働かせてみたものの……こうも見事に破かれていては復元も期待できまい。やれやれ無駄足に終わったか」
なのに圭介の眼には、その無戒なる男が山脈よろしく巨大な世にも悍ましい怪物に見えてしまう。
原初的な恐怖に震える膝を抑えつけるのも儘ならなかった。
錯覚の要因は、これまで様々な戦闘能力の持ち主達と出会ってきた圭介自身の経験だ。
最近ではカレンとの模擬戦、ユーとの鍛錬を通して強者が纏う特有の空気に触れ続けていた。
だからこそ、目の前の男が怪物に見える。
カレンのように隠すでもなく、ユーのように近いでもない。
どこまでも遠い相手と向かい合った時に、圧倒的実力差から生じる弱者側の畏怖。
圭介を襲っていたのはそういう類の衝撃だった。
(なんっだ、コイツ……!?)
慄くと共に理解する。
[プロージットタイム]に来てから【サイコキネシス】の索敵網に奇妙な感覚を与えていた微弱な振動。
目の前にいる存在は、その発生源だ。
「とはいえ通じている倉庫自体は無傷、加えて今回は相手が相手だ。仕事も達成しているのだから殊更責めるような真似はせんよ。それで、と」
意識を向けられる。ただそれだけの事で頭上のアズマは何も言わず双翼を広げて威嚇体勢に入り、逆に圭介の体は急激に動きを鈍らせた。
最低限の警戒心すら死への恐怖に塗り潰される感覚で、根本的に次元が違い過ぎるのだと否応なしに思い知らされる。
「朝から掻痒にも似た違和感はあったろう。しかしこうして顔を合わせるのは初めてになるか」
聞こえる声はどこか遠く、しかして遠雷よろしく確実に届いた。
「俺の名は平峯無戒。貴様と同じ日本出身の客人だ、東郷圭介」
同郷の客人に出会った割に感慨深さなど微塵も漂わせていない。ただ常識に当て嵌めるなら挨拶を要する場面だから声をかけただけなのだと、無戒の態度が如実に語る。
「話は色々と聞いている。学校では暗殺者を瀕死に追い込み、森に潜む奇天烈機械との死闘を乗り越え、城壁防衛戦では藍色の巨人の背骨を砕いて内側から脱出した。最近では白狼族の生き残りに首を二度狙われながらも生き延び、絡繰り仕立ての都をのたうつ黒蚯蚓から救ったとも。いやはや見事な立ち回りじゃないか」
それは圭介がこの異世界に来てから体験した戦いのほぼ全て。
有名であることのデメリットが早くも己が身に降りかかってしまっていた。
「さて、俺としては部下のヨーゼフが無事な内に預かろうと思っていたのだが」
無戒が一歩前に出る。
その瞬間、圭介は半ば反射的に周囲の瓦礫を【テレキネシス】で浮かび上がらせていた。
断じて意図しての挙動ではない。彼を突き動かしたのは勇猛さでも冷静さでもなく、僅かばかり残されていた防衛意識だけであった。
その様子を見た無戒もそれ以上前には出ない。
「……ここで戦闘に入る旨味は無いな。それに、悪目立ちは苦手な性分だ」
一つでもぶつけられれば致命傷になるであろう瓦礫の群れを前に、無戒は苦笑を漏らしながら背中を向ける。
炎による熱と圭介の敵意に晒されながら、快適な自室にいるかのような余裕ぶりだった。
「ヨーゼフ、すまないがしばらくは捕まっておけ。その間に娘との仲違いも終わらせるといい」
「無戒さんっ、しかし……」
「そう長く放っておくつもりはないとも。しかしそうさな、貴様の方で何か不都合があればこじれている間は待ってやろうか」
「いやそれちょっと……」
部下の浮いた話を茶化すようなその微笑みを見ながら、それでも圭介は瓦礫を浮かせ続ける。
どのタイミングで仕掛けても殺されるイメージしか湧かない。
相手の隙は愚か、自分自身の油断さえ一片たりとも許されなかった。圭介の正直な心情を述べるなら、瓦礫などほんのささやかな牽制と防衛の意味しか為していないのだ。
戦えるかどうかではない。
死ぬ可能性を僅かにでも減らすしかできない、ただそれだけの時間。
「ではそろそろ俺もここを去る。ヨーゼフのことは宜しく頼んだぞ」
「…………」
内心で安堵しながら迂闊に声も出せない。そんな中で、
「ああ、それと」
無戒がパチリと右手の指を擦らせ鳴らす。
途端、圭介の念動力で浮かせていた瓦礫全てが音を立てて砕け散った。
「……あぁ!?」
グリモアーツの【解放】などしていなかった。詠唱も、どころか魔力の発現さえも。
だというのにこの無戒という男は第四魔術位階相当の威力を、ほんの動作一つで複数個所同時に発生させたのだ。
何をされたのか認識にすら及ばない、理不尽なまでの力量差を叩きつけられる。
「難敵を前にしての反応、力に自負を持つ身として光栄に思う。だが膨れ上がった感情をそのまま力の形にするのはよろしくない。そうなれば綻びは容易に視えてしまうからな」
それだけ言い残して今度こそ無戒は陽炎揺らめく景色の向こうへと歩き去っていった。
無防備な背中を見送りながら、圭介は考える。
(さっきの攻撃、僕に当てられてたら死んでた)
いつ殺されていたかわからなかった。
そんな極限状態の終わりを未だ実感できないままでいる圭介の視界から、漆黒の外套が巨大な気配と共に消失した。
* * * * * *
満身創痍の中でヨーゼフを連れて出入り口に辿り着いた圭介を待っていたのは、気まずそうな笑顔の騎士団と笑顔すら浮かべられないまま気まずそうにしているアイドル一同だった。
頭をポリポリと掻きながら騎士団長が声をかけてくる。
「あー……お疲れさん。立場的に厳重注意とかするべきなんだろうが、真正面からぶつかった日にゃ俺らが殺されてたかもしれんような相手だ。逃がさずに済んだ事と第一王女様の顔もあるし、今回は不問とする」
「あざーす……」
『どうも』
彼らの配慮に感謝こそするも、気の利いた返答をするだけの余裕などとうの昔に尽きている。まず何よりも水分を摂りたかった。
だが順序として、最初に肩を貸しているテロリストを騎士団に預けなければならない。
「…………」
「…………」
騎士団長が待っている連行用の車両に近づく途中、一瞬だけヨーゼフとナディアの視線が交差した。
何か言いたげなナディアは、それでも声一つ出さない。
いかにアガルタ王国の国風として自分の意見を主張しやすい雰囲気があったとしても、限度はある。
国民的アイドルが騎士団とファン一同の視線を受けながら犯罪者となった異性の幼馴染に声をかけるというのは、到底許されないものなのだろう。
そして何よりも、アガサの言葉を受けて彼から拒絶されたという事実を受け入れてしまったのが大きい。
対するヨーゼフは口を真一文字に結んでいたが、ナディアの近くにまで来ると少しだけ隙間が生じた。
「……圭介さん、ちょっといいですか」
「え、僕?」
てっきりナディアに話しかけるものと予想していた圭介が、虚を突かれてびくりと反応する。しかもあれだけ口汚く話していた男が今更敬語を使うというのもおかしな気分だった。
「あり得るかどうかわかりませんけど……もし、僕の幼馴染に会うようなことがあったら伝えておいてくれません?」
それはこの状況において、ある意味誰よりもナディアの立場を配慮した発言だっただろう。
ファンや騎士団はナディアとヨーゼフの関係について聞いておらず、故に彼にとっての幼馴染がナディアを意味しているとは認識していない。
「それ、は……ええと、何て?」
その残された思いやりを尊重するように、圭介も一旦立ち止まって話を促した。
「…………周り見えてねぇのはガキの頃から成長してねえんだな」
「うぐっ」
「好きだからっていい加減スナック菓子控えねえとすぐに太るぞ」
「げはぁっ」
「どうせ腹だけ出っ張って胸はそのままだろお前の体は花瓶かよ」
「ナディアたん、落ち着いて。グリモアーツしまって!」
「あー、それと」
暴れそうになっているナディアをニヤニヤと眺めつつ、言葉の締めくくりに入る。
「歌、割と上手くなったなと。犯罪者の僕に代わって、伝えといてください」
「え……」
もしもの話となるが。
もしもヨーゼフが有名アイドルとなったナディアの存在を、否応なしに見聞きさせられる日々を過ごしていたとするのなら。
その中で彼女の歌声が成長していく過程をも、実感できたのかもしれない。
「……別に、最初から下手でもなかったけどね」
不機嫌そうなナディアの呟きが誰に向けられたものか。
幸いにもそれを知る者は全員、沈黙を守ってくれた。
騎士団長がヨーゼフの両手に一応の拘束魔術を付与して車両に乗せる。
「まあ、お前さんも連れの娘っ子もまだ若い。加えて民間人を率先して危険地帯から安全な場所まで誘導して怪我すら負わないように配慮して、尚且つ目的がアレだ。裁判所が汚れてなけりゃあ軽い判決に終わるだろうな」
「……そーですか」
「とにかく罰は罰として受けて、そこからやり直すといい。俺はお前さんらみたいなの、迷惑ではあるが嫌いじゃあねえよ」
ニカッと笑いながら告げると、騎士団長は次に圭介に向き直った。
「義務は義務ってことで言っておこうか。二度とこんな真似はしないように。ああいうのはどんなに無茶だろうと、俺達騎士団の領分なんだからな」
「ええ、すんませんした」
『緊急時の対応として間違ってはいなかったはずですが』
「対外的にそれを容認できねえって話さ。ま、深く考えんな。俺がお前さんらの立場でも同じ真似をしてたかもしれねえしよ」
さらっと問題発言をかましながら、騎士団長は自身の懐をまさぐり始めた。
「えーっとそれでだ。それとは別にケースケ君、君にちょっとお願いがあるんだが……」
「はあ、何でしょう」
「これだよ、これ」
言ってとある物が圭介の目の前に差し出される。
色紙と、ペン。
「ウチの若いのにはサインくれたんだろ? ちょっと一筆頼むよ」
『騎士団の間ではアイドルより人気があるようですね、マスター』
「なんでアイドルそっちのけで騎士団連中にサイン書かされてるんだよ僕は! 書くけれども!」
半ばヤケクソ気味になりつつ、残された体力を使ってサインを書く。
若干文字が走り書きになったが、騎士団長は喜んでいた。
* * * * * *
「「「「「この度は本当に申し訳ありませんでした!!」」」」」
夜の二十時丁度、[バンブーフラワー]のホームにて。
目を覚ましたミアとホテルで充分な休憩を済ませてきた圭介に、アイドル五人が揃って頭を下げていた。
「ほんっとこういうのこれっきりにしてよね! 護衛対象に危険な真似されるのって冗談抜きで全員が危険な目に遭うんだから!」
ケジメをつけるという意味合い以上に溜まっていたストレスもあったのだろう。ミアの剣幕は同じく無茶に巻き込まれた圭介ですら気圧される程に激しかった。
「はい、今後は絶対に無茶しません! ナディアちゃんにもよく言って聞かせておきます!」
「すみませんでした! 反省してます!」
「次やったらその場で契約違反と見なして依頼放棄するからね!」
「自然と次も仕事が入ることを想定してるのか……」
とはいえ、そもそもの遠方訪問の目的がコネ作りなのだから認識としては間違っていない。
ミアの支援能力と防御力の高さは、今回の戦いを通して[バンブーフラワー]全体にアピールできたことだろう。
「ええと、それで今回の報酬なんですが……まず最初の契約内容に基づき、お二人にはそれぞれ八五〇シリカを報酬として支払う形になります」
日本円に換算すると一二七五〇〇円。丸一日の護衛としては妥当な金額だが、そういった仕事に不慣れな圭介にとっては馬鹿にならない値段だ。
しかも今回は、それだけではない。
「そして私達の責任によってお二人にご迷惑と更なる負担をおかけしました事も考慮して、追加で六〇〇シリカを報酬に加える形となります」
これも日本円に換算するなら九〇〇〇〇円に相当する。
報酬の合計は一三五〇シリカ、つまり二一七五〇〇円。
しかもそれは一人分の報酬なのだから、[バンブーフラワー]が圭介とミアに払う総額はその数字の二倍だ。
「……確かに迷惑かけられたしそれで報酬が増えるのはわかるけど、こんなにもらってそっちは活動大丈夫なの?」
同年代に近いアイドルグループが気前良く大金を支払う様子を見て、思わず圭介がおずおずと訊き出す。
すると全員が朗らかな笑顔でそれに応じた。
「大丈夫だよ、ケースケ君。これから一ヶ月全員がパンの耳で生活するだけだから」
「栄養あるもんを食えぇ! ていうかそんなん聞いて受け取れるか!」
「工夫すればパンの耳だって色々できますから……」
「そうそう、グループ結成して間もない頃とか何度もパンの耳に助けられたし」
何とも切ない話である。
「ま、それこそこれから稼いで取り戻すだけよ。こちとら全国レベルで有名なアイドルやってんだから」
「今日一の戦犯が自信満々に言っても説得力がないよ。どうすんのホント君ら」
「新アルバムが出ますので、収入はまだまだ入ります。本当はそこまで極端なことにもなりませんよ」
「それに最悪、ギルドでクエスト受ければその日食べる分には困らないですし。……アイドルなのか冒険者なのかわからなくなるからあんまりやりたくないんですけど」
「ほぇー……そういやギルドとかあったなこの異世界にも」
クリスの話を聞く限り、最低限食うに困る生活には陥らずに済むのだろう。そこはやはり売れているアイドルであり、優れた魔術の使い手が持つ強みといったところか。
「じゃ、じゃあ報酬の話はそれで……僕はホテル戻るね」
「私もー。今からじゃ夜行バスも間に合わないだろうし、明日は空挺で帰った方がいっそ安く済むかなあ」
「んじゃそうしようか。具体的な時間は後でスマホで話し合おう」
宿泊施設に戻る準備も済ませて、二人が立ち上がる。
「あのっ」
そこに控えめな声量で声がかかった。
何かまだあるのかと二人揃って振り返った先には、視線を泳がせるナディアの姿がある。
「……その、謝りはしたんだけどさ。二人にはまだ、ちゃんとお礼言ってなかったから」
やらかした、という自覚は最初に動いたその瞬間からずっとあったのだろう。その上で彼女は、圭介とミアの二人に言うべき言葉を告げようとしていた。
「ありがとう。おかげで私、ちょっとは割り切れそうだよ」
その晴れやかな笑顔を見て圭介は確信する。
やはり彼女は人気を得るべくして得た、アイドルなのだと。
「今度ヨーゼフ君に面会しにいってみるね。そんで、もう今後会わないならちゃんとそう約束してくる」
失恋を乗り切った……否、乗り切りつつある少女は、恐らく二度と無茶な真似はしないだろう。
そして彼との話し合いを終えた先で、ようやく本当の意味で折り合いをつけるのだ。
「やっぱそうだよな。君はそういう強さを持ってるって、知ってたよ」
微笑みながら圭介は手を振って、今度こそ彼女らのホームから外に出る。
東京で育った圭介にとって、夏の夜は常に不快な熱気と湿気を伴うものだった。
しかし環境の異なる異世界で迎えた夏だからか、扉の外に出た瞬間に浴びる空気はどこか清々しい。
「じゃあ、またいつか!」
後ろから聞こえる声に「お疲れー」と応じながら、圭介とミアはホームの敷地外に出た。
「これで皆より一足早く遠方訪問終わりかー。何だかこの一ヶ月、凄く長かった気がするよ」
『お疲れ様です。一応休憩はしましたが、お二人はくれぐれも水分補給を怠らないようにしてください』
隣りで背伸びするミアと頭上から二人にまとめて忠告を飛ばすアズマに、慣れつつある異世界での日常を感じ取る。
その平穏な時間に至って、急に圭介は今日の出来事を振り返った。
(転移して間もない僕に優しくしてくれたこの異世界にも、常識では考えられないような悪意の持ち主が間違いなくいる)
天然資源の独占と、人身売買。
それを斡旋していたというどこぞの何某という貴族を、圭介は知らない。直接会って話したりもしていない。
ならば一方的に絶対悪と決めつけるのも早計なのだろうが、何にせよそれは人間として手を出してはならない領域の話であるはずだ。
とある夜、一人の排斥派が口にした言葉が脳裏に蘇る。
――例え今日飢えて死んだ子供の亡骸を見たとしても、明日パンを盗む子供を許さないと決めた。
(ホント、難しいもんだよな)
一応それでも貴族だからと厳罰は免れるかもしれない。
あるいは排斥派だからと厳罰に処されるかもしれない。
結果がどうあれ、圭介にはこれ以上関わりのない話だ。
彼は裁判官でもなければ、処刑人でもないのだから。
(考えてもしょうがない話ではあるんだろうけど)
悪を欠片も残すまいとする、絶対的な秩序。
そんなものがこの世にあるのか、あったとして本当に役立つのか。
素朴な疑問は眠気に混じって虚ろになる。このまま眠ってしまえば翌朝には消えている程度のちっぽけな考えだ。
だから、今だけ考える。
例え誰かを護ろうとしても、例え我を通そうとしても答えは同じ。
(僕にもいつか、人を傷つける日が来るんだろうな)
今日のような戦いを通しての物理的な話ではない。
もっと複雑な事情が絡んで、その結果として起こり得る話だ。
パン泥棒を見逃せばパン屋が儲けを失い、困窮する。
見逃さなければパン泥棒は飢えて死体となるだろう。
困ったことにこの異世界に来てから、荒事に巻き込まれる機会は極めて多い。そういった場面に出くわす機会が増えるのは目に見えていた。
(じゃあどうすれば後悔だけはせずに済むのか、って話だよなあ)
悩み迷って答えを得られず、少年は今日の寝床を目指して歩く。
少なくとも今はその先に、明日が待っていると信じながら。
「ケースケ君、晩御飯食べた?」
「ごめん食べた。ていうかミアまだだったんだ」
「いやいや、別にその辺のコンビニかどっかで軽めに済ませる予定だったし。そっちも食べてないなら一緒に寄ろうかなってだけだよ」
「でもコンビニなら僕も飲み物買いたいから一緒に行く。まだ喉が渇いてるような気がするんだよね」
「へー。んじゃあそこにしよう、今は五シリカ分の買い物するとくじ引き引けるみたいだよ」
「相変わらずどうかしてんなこの異世界……」
その前に一つ、寄り道などもいいものだ。




