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「ここまでのあらすじを整理してみよう。仕事に疲れたみなみちゃんは、ペットのパンパンを道連れに、自宅に帰って来て玄関で寝転がって気絶する。そして目が覚めると異世界の虫歯ランドにいる。そこで虫歯であるトゥース・デッケーと死闘を繰り広げる、とここまでいいかな?」
美代先生が会議の内容を整理する。
「完璧ですね。」
「キュル。」
歯科助手とパンダも納得のあらすじである。
「これで厚生労働省と日本歯科医師会とのコラボが決まれば、スポンサーになってもらいアニメ化も決定で、日本全国にみなみちゃんの、ああ~、白い歯って、いいな、ポスターが貼りまくられるぞ。」
「これでみなみも貧乏を脱出ですね。長い苦労でした。ウルウル。」
「キュル。」
もらい泣きするパンダ。
「ただ、これを偉い機関の人々が読んで知ってくれている保証がない。」
あくまでも非公認であり、歯科医師の願望である。
「ということは、子供向けでしょうから、パンパンだけでなく、ゆるキャラのような動物ばかり出てくるような作品にした方が良いのでしょうか?」
「キュル!?」
パンダだけでは不十分なのかと怒るパンダ。
「そうだね。異世界、虫歯ランドの仲間は、ポケットモンス〇ーみたいに全部、動物系にしてみようか? 人間は私とみなみちゃんがいれば十分だろう。」
「そうですね。人が増えたら、みなみの出番が減りますからね! 新キャラクターや新入社員は人気が出る前に、仕事を覚える前にいじめて、いじめて、退職させるのが1番です!」
「キュル!」
その通りだとパンダも言っています。
「みなみちゃん、可愛くしてないとファンが減るよ。」
「それは困りますが、みなみは現在の等身大の女の子です!」
「キュル!」
最近の女子大生や新入社員はアイドルやアニメの影響か、昔の小学生ぐらいの価値観である。日本って、争いの無い豊かな国になったんだな~と感じてしまう。例えると、親が政治家や公務員、大手企業にお勤めで、働かない引きこもりと、親が貧乏で生活保護を受給して、働かない引きこもりのどちらかがメインであり、社会人として働いている日本人の方が稀である。街中はファーストフードもコンビニも留学ビザの外国人ばかりで、日本人の若者はアルバイトする場所すらない。
「荒んだ世の中だね。」
「だから、みなみが過労死しそうなぐらい過酷労働をさせられているんですよ。」
「キュル。」
悪いのは経営者の美代先生だ。
「すいません。歯が痛いので見てほしいんですが?」
ここで患者が登場する。
「おお! 救いの神だ! みなみちゃん、後よろしく。」
「ああ!? 逃げた!?」
「キュル!?」
立場が悪くなると休憩室に逃げ込む歯科医師。
「クソ!? 美代先生め!? さっさと治療をして、懲らしめてやる!」
「キュル!」
燃える復讐は、ダイジェスト虫歯治療の後でお楽しみください。
「みなみ、いきます!」
「出たな! トゥース・デッケー!」
「みなみに治せない虫歯は無い!」
「究極奥義! クリーニング波動砲!」
「ああ~白い歯って、いいな!」
「キュル!」
みなみちゃんの虫歯治療は完璧である。
「2度と来るな!」
「キュル!」
医者に行って、2度と来るなと追い返される。まずまず、面白いな。
「美代先生! 首はもらい受ける!」
「キュル!」
鎧武者姿のみなみちゃんとホラ貝を吹くパンダ。
「みなみちゃん5のあらすじの続いができたよ!」
「な!?」
「キュル!?」
振り上げた歯科助手の刀が止まる。みなみちゃん5のことになると手が出せない歯科助手。
「続きはこうだ。みなみちゃんとパンパンは異世界、虫歯ランドに飛ばされる。そこで虫歯のクマクマと出会う!」
「パンダはパンパン。クマはクマクマ・・・リラック〇とも似ているような・・・。」
「細かいことは気にするな! 押し切る! 巻いていこう!」
前向きな歯科医師。経営者には、これぐらいの強引さが必要だ。
「パンパン、良かったな。仲間が増えるぞ。」
「キュル。」
友達ができることを喜ぶパンダ。
「パンパン、あなた出番が減るわよ。へっへっへ。」
「キュル!?」
やっと、ことの重大さに気づいたパンダ。
「で、クマクマの虫歯を、魔法か呪文・・・魔法の方がロマンティックで夢があるな。子供向けだし、ハリーポッ〇ーの2匹目のドジョウを狙うか?」
美代先生は歯科医師になれるぐらいなので、バカではない。まあ、歯科医師も会社の社長も親の金でなっている人間ばかりというのが現実である。貧乏人の起業は、金を貯める所、スポンサーの金持ちを見つける所、宝くじで1億円を当てる所から始めなければいけない。まず成功するのは難しい・・・。ラノベは自分の自由になるので幸せ。
「虫歯ランドでは、虫歯治療のことを魔法としよう。一躍、みなみちゃんは優秀な歯科助手で有名になる。」
「さすが、カワイイみなみです。」
「キュル。」
ペットも良い飼い主に飼ってもらうと幸せである。
「しかし、虫歯ランドは悪いキング・トゥース・デッケーに支配されているんだ!」
「なんですって!?」
「キュル!?」
ここにきて、最大の虫歯。キング・トゥース・デッケーの存在が明らかに。
つづく。