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「やっと、3分の2だ。」
美代先生はグダグダしながらも4万字を終えた。
「お疲れ様です。先生。」
「キュル。」
歯科医師の労をねぎらう歯科助手とパンダ。
「長いね~、ラーメンの麺が伸びちゃうよ!?」
カップラーメンは3分待つと麺が伸びていて、不味い。
「まだ続けるの?」
「はい。あと10話20000字が残っていますよ。」
「キュル。」
「ゲソ・・・。」
あと3分の1も残っているという現実にゲッソリやつれる歯科医師。
「もう話の流れはテンプレ貼り付け型のように決まっていて、新しい患者という新キャラクターを毎回登場させていけば、永遠に続くスローライフの日常モノなんだか、もう、いいじゃん。どうせ、書籍化やアニメ化なんてしないんだから。」
最近の美代先生は愚痴っぽくなってきた。苦労が報われると努力に変わり、苦労だけしていると苦労のままなので疲れてきた。
「何を言ってるんですか!? 美代先生は延命のために休憩室でイスに座って、サボってばかりじゃないですか!? 本当に実務をこなしているのは、みなみなんですからね!?」
「キュル。」
パンダも、その通りと頷いている。
「さあ、オープニングトークも500字稼いだし、そろそろ本題に入ろうか?」
話を切り替えて逃げる歯科医師。
「今日のお題は、スマートニュースは、渋谷と原宿の間にある会社か? ということだ。」
「近所ですね。」
「キュル。」
みなみちゃんは渋谷設定なので近い。
「とてもじゃないけど、大手町の大手の新聞社がゴロゴロあるのとはイメージが違うんだよね。」
「そうですね。かなりチャラそうですね。」
「夜中でも若者がキャンプファイヤーをしていそうな場所にあるな。」
「キュル。」
渋谷と原宿の間はキャットストリートだったか、イメージ的には、そういう所だ。
「私たちは、よく生きていけるな。」
「不思議ですね。」
「キュル。」
そろそろ世間話で話をつなぐのも難しいので、新キャラクターを投入。新アイテムを投入すると猫型ロボットの話になる。
「虫歯を見てほしいんですが?」
患者さんが美代歯科医院にやって来た。
「ギャアアア!? イエテイ!?」
患者さんは前髪が長い女の子であった。
「違います! 妹は怪獣ちゃんです!」
「え!?」
患者は2人でやって来た。
「私は姉の渋井栞です。妹が歯が痛いというのでやって来ました。はい、怪獣ちゃん、挨拶して。」
「谷子です。」
今日の患者は渋井姉妹であった。
「渋井? どこかで聞いた名字だな?」
「美代先生、ハチ太郎と同じ名字ですよ。」
「ああ、ハチ太郎ね。」
ハチ太郎とは、美代先生の旦那である。まだ結婚はしていない。
「美代先生、さっさと結婚して、大学病院の医院長をしてあげたらどうですか?」
「嫌だ! 自分で成功しないと面白くないじゃない!」
「お金が好きなくせに、へそ曲がり。」
「キュル。」
ハチ太郎は渋谷塚大学病院のお坊ちゃまである。美代先生の美学は、お金はもらうものではなく、自分で稼ぐものである。これは貧乏な美代先生のプライドである。
「ハチ太郎なら、親戚ですよ。」
「なに!?」
ここで渋井という名字が同じなので、渋井姉妹とハチ太郎を親戚にしてみる。
「ということは、お姉さま!?」
「誰がお姉さまだ!?」
栞は美代先生をお姉さまと呼ぶ。
「お姉さま。」
「もう・・・やだ・・・。」
谷子は美代先生をジッと見つめる。
「ということは、美代先生と渋井姉妹は親戚になりますね!」
「キュル!」
何が何でも美代先生とハチ太郎を結婚させて、自分の給料と食事を良くしたいと狙っている歯科助手とパンダ。
「そうなれば、みなみは渋谷塚大学病院の医院長の助手! こんなしょぼい町医者の助手とはおさらばです!」
「キュル!」
野心的な歯科助手とパンダ。
「しょぼい町医者で悪かったな。しょぼい町医者で。」
冷たい目線を送る歯科医師。
「みなみちゃん。後よろしく。」
美代先生は、いつも通り休憩室に去って行こうとする。
「ええ!? 親戚さんですよ!? 美代先生が治療してくださいよ!?」
「私はしょぼい町医者なので、治療は優秀な歯科助手とパンダでやってください。」
「い、いじけてる・・・。」
美代先生はいじけて去って行った。
「仕方がない! みなみがやらんで誰がする!」
「キュル!」
パンダも千両役者と言っている。
「それでは治療するので診察室に行きましょう。」
「はい。」
「怪獣ちゃん、がんばって!」
こうしてダイジェスト虫歯治療が始まる。
「みなみ、いきます!」
「このプレッシャーは!? 虫歯は、そこか!?」
「みなみに治せない虫歯は無い!」
「これで終わりだ! クリーニング波動砲!」
「ふう~、白い歯って、いいな。」
こうして渋井谷子の虫歯は治った。
「エロ・エロ・エロメス!」
「キュル!」
休憩室に歯科助手と渋井妹が治療を終えて帰って来た。すると魔法少女ばりに渋井姉が魔法を使い手品で花や笹を出して遊んでいた。パンダは大喜びである。もしかしたら魔法パンダが主役の物語が始まるかもしれない。
「なにをやっているの?」
「キュル。」
歯科助手は自分が頑張っている間に手品で遊んでいたパンダを僻む。
「お姉ちゃん、虫歯が治ったよ。」
「良かったわね。怪獣ちゃん。」
素晴らしき姉妹愛。
「ありがとうございました。さようなら。」
こうして、いつものように無事に一日の診療を終える美代歯科医院であった。
つづく。