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「やっぱり治療はダイジェストにしよう。」

美代先生は前回の普通治療がおもしろくなかったことを反省した。

「普通だと、みなみの面白さが全部死んでましたね。」

「キュル。」

パンダも思わずダメだし。

「まったくだ。あの幽霊は何しにやって来たんだろ?」

さすがの幽霊も一体では、みなみちゃんたちは絡みにくかった。

「ちょっと出のゲストでは、キャラクターの個性を描くよりも、一瞬で終わってしまう・・・。」

「問題ですね、先生。」

「キュル。」

パンダも考え悩む。

「最近、思うけど、この作品も狂博士と助手のパンダのおまけ付き版みたいだね。」

「あの頭のおかしい博士とカワイイ助手の物語ですか?」

「みなみちゃん、助手を可愛く言いすぎ。」

「そ、そうですか!? みなみはカワイイですよ!?」

「キュル。」

飼い主に忠実なパンダ。

「問題は、私たち2人と1匹はキャラクターが完成しているのでいいが、虫歯ゲストキャラクターの描き方が短いと、そこら辺の何の個性も無いおっさん、おばさんと変わらないというところだ。」

美代先生は2000字で新キャラクターを登場させる難しさを言っている。

「前回の幽霊さんも1500字を過ぎたぐらいからの登場だと、個性が死んでましたね。」

「キュル。」

「じゃあ、今回は1000字から虫歯ゲストキャラクターに登場してもらおう。」

「はい。では患者さんは、どなたにしますか?」

「昔、何を書いたかな? データを探しに行くのが面倒臭い。読み返すのも面倒臭い。はあ・・・。」

美代先生はズボラである。

「次は、クーデターに巻き込まれ、記憶喪失になって、パン屋を開くヒロインか、ゲームが大好きだが、いつも眠っていて、助手のAIロボットに任せっきりのヒロインですかね。」

「キュル。」

みなみちゃんは、美代先生の代わりに過去作を読み返す。

「1話に二人は無いな。1人でも困っているんだから。」

「そうですね。それか虫歯ゲストキャラクターを冒頭から出演させますか? テレビドラマのドクターZみたいに。」

「あれも典型的なテンプレ貼り付け型のお約束だからね。」

「でも庶民にウケてますよ?」

「難しいのはいらないってことだね。正義が悪を倒すみたいな。水戸肛門とか大岡越後谷みたいなのと一緒だよね。」

「キュル。」

特に高齢者は現代の日本映画・ドラマの誰かを殺す作品は嫌っている。韓国ドラマの方を好む傾向にある。

「先生!? もうすぐ1000字です!?」

「なに!? 本編を始めなければ!? どうしよう!? どうしよう!?」

「キュル・・・。」

慌てる歯科医師と歯科助手に、お手上げで呆れるパンダ。


「すいません。歯を見てほしいんですが。」

美代歯科医院にお客様がやって来た。

「いらっしゃいませ。問診票に記入をお願いします。」

珍しくみなみちゃんが歯科助手らしい仕事をしている。

「書けました。」

「はい、ありがとうございます。お名前が青山虹子さん。職業はパン屋さんと。」

名前はついさっき思い出した。思い出せるのが奇跡だ。

「それでは診察室にどうぞ。」

「はい。」

みなみちゃんはお客様を診察室に通す。

「先生を呼んで来るので座って待っていてくださいね。」

「はい。」

みなみちゃんは美代先生を呼びに休憩室に行った。

「カモがネギをしょって、バンバンバン、バンバンバン!」

美代先生は休憩室で鴨葱の歌演歌バージョンを歌っている。

「先生、何やってるんですか!?」

「見て分からない? 新年会の出し物のカラオケの練習。」

「知りません。そんなことより、お客様ですよ。」

「そ、そんなこと・・・ガーン。」

落ち込む美代先生。

「キュルキュル。」

パンダもバカにして笑い転げる。

「ああ!? もう1500字!? 力づくでも診察室に連れて行きますよ!」

「い、嫌だ!? 仕事したくない!? やめろ!? パワハラだ!?」

美代先生はみなみちゃんに首根っこを掴まれて引きずられていく。まるで美代先生は駄々っ子の様だった。

「は~い。大きく口を開けて下さい。」

「あ~ん。」

美代先生の診察が始まった。

「これは!?」

「どうしたんですか!? 先生!?」

「歯と歯の間に食パンの耳が挟がってある。」

「ズコー!?」

患者の病名は、歯と歯の間に食パンの耳病であった。

「先生、私、治りますか?」

「大丈夫ですよ。直ぐに治りますからね。」

ここに患者と歯科医院の信頼関係が築かれる。

「ということで、みなみちゃん、後よろしく。」

いつも通り美代先生は休憩室に逃げる。

「先生!? 治すって言ったじゃないですか!?」

「誰も私が治すとは一言も言ってない!」

こうして美代先生は、みなみちゃんに任せて休憩室にラーメンを食べに行った。

「もう! 美代先生め! ここが潰れないのは、みなみのおかげだぞ! プンプン!」

「キュル。」

パンダもみなみちゃんのおかげだと思っている。それでは字数の関係で、ダイジェスト虫歯治療をご覧ください。

「みなみ、いきます!」

「みなみに治せない虫歯は無い!」

「くらえ! 奥義! クリーニング波動砲!」

「ああ~白い歯って、いいな。」

こうして患者、青山虹子の虫歯は美代歯科医院で治った。正確には最強の歯科助手みなみちゃんが治療したのである。

「ありがとうございました。」

「どうもです。」

患者さんは美代先生に感謝して帰って行った。

「美代先生、何もしてないくせに。」

「あ、さっきの患者さんがパンの無料券くれたんだけど・・・。」

「パンの無料券!?」

「みなみちゃんは要らないよね?」

「いります! いります! みなみは美代先生に忠誠を誓います!」

「キュル・・・。」

さすがのパンダも飼い主を間違えたと思う時もある。


つづく。

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