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「久しぶりに第1話を読んだわ。」
美代先生は忙しい激務なので、過去作を読み返す暇がない。この物語は、基本的に作者の記憶力だけで書かれている。
「鴨葱の歌も懐かしいな。」
「歯からチョコキノコが生えているは、インパクトがありましたね。」
みなみちゃんも、もう過去作のことは、そんなに覚えていない。
「キュル。」
まだパンパンすら出ていなかった。
「やっぱり医者ものは、患者を変えれば適当でも物語が1話書けるのが楽でいいね。」
「そうですね。綾ちゃんなんか忘れてました。」
「細菌娘か、元気にしてるかな?」
「・・・。」
美代先生とみなみちゃんの顔が青ざめる。
「閉鎖だ!? みなみちゃん早く玄関を閉めて!?」
「はい!? 先生!?」
「どうして、うちには変な客しか来ないんだ!?」
それは、ラノベだから。また従業員が変な客と思っても、お客様であることには変わりない。ほぼ90%は変な人間がお金を落として売り上げは成り立っている。
「せ、先生・・・。」
「どうした!? みなみちゃん!?」
「て、手遅れです。」
美代歯科医院の入り口から、4人の女の子が入ってくる。
「最近娘!?」
「誰が細菌娘よ! 元々は私の話の番外編から生まれたくせに!」
アイデアやネ申とは、突然に降臨されるものであり、必然は無い。降臨されるために努力を重ねるしかない。
「なにを!? 野菜防衛隊は1で終わったが、みなみちゃんは今回で4までつづいているんだぞ!? すごいだろ!?」
美代先生も女子高生の細菌娘を相手にムキになって言い返す。
「ギギギギギ!」
目から光線を出して見つめ合う歯科医師と女子高生。
「で、綾ちゃんは何しに来たの? 学校はいいの?」
「いいのだ! 今は冬休み! 歯が痛いの。見てほしいのだ。」
細菌娘の女子高生の名前は綾ちゃん。
「毎日、冬休みのクセに。」
「なにを!? 三流歯科医師!」
「ギギギギギ!」
美代先生と綾は仲良しであった。
「はいはい。綾ちゃん、問診票を書いて。」
「はい。」
綾は問診票に名前を書く。
「綾野綾? 私の南野みなみと似た感じだね。」
「みなみちゃん、南野さんだったんだ。」
「綾ちゃんは、綾野さん。」
「キャハハハハ!」
妙な所で共鳴する仲良しな歯科助手と細菌娘。
「それにしても今日は友達3人は静かね。」
「作者が名前を忘れたんだって。」
過去作を読み返してこなければ。ただ10万字あるので、かなり時間がかかってしまう・・・。通勤・通学の合間に読んでほしい。
「第2話を読んだけど、まだ友達の名前が出てこないね。」
社会人は自由になる時間が少ないので、ネット小説でも、読むと書けない。書くと読めない悪循環である。どちらかに絞るとどちらかが死んでしまうのだ。厳しい・・・。
「美代先生、あと9万字あるから、そのうち出てきますよ。」
「9万字か・・・やだ。」
美代先生は読書など面倒臭いことは嫌いな、今時の30才前後の女性である。
「今回で6万字追加されるから、合計16万字の超大作になりますよ。」
「キュル。」
みなみちゃんとパンパンはいやらしそうな顔で笑いながら言う。
「16万字!? ・・・疲れた。綾ちゃんの相手はよろしくね。」
そういうと美代先生は休憩室に去って行く。仕事を従業員に丸投げする悪徳コンビニ店長ならぬ、歯科助手のみなみちゃんに丸投げする悪徳歯科医師なのだった。
「ガーン!? そんな!?」
「キュル!?」
パンダも思わず驚いた。
「まあ、いつものことです。」
「キュル。」
普段通りなので、みなみちゃんとパンパンは諦めている。一般の大人の社会人が上司、年上、先輩に思う理不尽だな~と共感していることだろう。
「それでは綾ちゃん、診察室にご案内します。」
「は~い。」
どこか楽しそうな、綾ちゃん。昔は嫌いだった歯医者さん。特にギギギギッという歯を削る音。
「歯医者さん楽しいな~。」
しかし今では美代先生とみなみちゃんとパンパンとも親しくなり、嫌いな歯医者さんが好きになっているのであった。
「美代先生は後でとっちめてやる!」
「キュル!」
会社でも嫌な人が休みでいないと、何も変わらないオフィスでも、今日は1日幸せを感じられ、スムーズに仕事が進み結果も良いのである。社会人として大人の対応、接し方ができない人は、周りの全員が辞めてほしいと思っている。
「はい、綾ちゃん。お口を開けて下さい。」
綾は診察室で診察台の上に座り、リクライニングのイスを倒され横になり、歯科助手のみなみちゃんが口の中を覗き込む。
「また虫歯ランドができてますね。」
虫歯ランドとは、綾の口の中にだけできる細菌のための夢の国である。年間入場細菌数は1兆以上である。
「では、治療を始めます。」
気が付けば字数が1900字なので割愛する。
「みなみ、いきます!」
この掛け声で治療が始まる。
「クリーニング波動砲!」
最強の歯科助手みなみちゃんの一瞬で歯を真っ白にする必殺技である。尺が無く苦しい時にアイデアとは生まれるものである。
「終わりましたよ。」
「わ~い! 真っ白! ありがとう! みなみちゃん!」
歯が痛くて暗い顔をしていた女子高生の女の子に笑顔が戻った。
「どういたしまして。」
「キュル。」
仕事にやりがいと充実感を感じる歯科助手とパンダ。
その後の美代先生。
「ない!? ない!? 私の買いだめしていたカップラーメンがない!?」
もちろん美代先生のカップラーメンはみなみちゃんが自宅に持ち帰ったのだった。
つづく。