世界最重要人物!? (⋈◍>◡<◍)。✧♡
「どうもです~♪」
美代先生が多くの記者に囲まれている。カメラのフラッシュが無数に光りまくる。
「美代先生、ラーメン大好き大使に任命された、お気持ちはいかがですか?」
美代先生は、ラーメンが好きすぎて、浅間山荘事件以来のラーメンのイメージアップに貢献したということで、表彰されている。
「んん、いわゆる一つの、どうもです~♪」
美代先生は、恐らく、ラーメンの味よりも、お湯を入れて3分で食べられるというのが、ラーメンが好きな理由である。
「詰めて詰めて、詰めまくるのよ! パンパン!」
「キュル!」
みなみちゃんとパンパンは必死に袋に、カップラーメンを詰めていた。
「これで、ご飯代をうかせるのよ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
みなみちゃんは、もらえるだけカップラーメンを持って帰る気だ。パンパンもご飯代がうけば、その分、好物の笹団子を買ってもらえるのを知っている。
「どうもです~♪」
これは、いつからラーメン好きになったのか分からない歯科医師と、ラーメンだけでなく、野菜の詰め放題も大好きな歯科助手とパンダの、何があってもくじけない物語である。
「なんだこれは!?」
美代先生たちは、渋谷大学病院にやって来た。
「道まで、人が溢れていますよ!?」
患者と思われる、助けを求める人々の列が、病院の外まで広がっていた。まさに阿鼻叫喚の世界が広がっていた。これが、パンデミック!
「すいません、通してください。」
「パンパン、大丈夫?」
「キュル。」
美代先生たちは、人混みをかき分け、なんとか病院にたどり着いた。
「やっと着いた・・・はあ・・・はあ・・・。」
「病院の中も、人でいっぱいですね!?」
「キュル!?」
病院の中も避難してきた人々で溢れていた。人々の顔は、伝染病の不安と空腹で疲れ切っていた。
「お腹空いた・・・ラーメンが食べたいな・・・。」
「これじゃあ、食堂もダメなんでしょうね・・・。私の食べ放題が・・・。」
「キュル・・・。」
美代先生たちは、走ってきたので、お腹も空いていた。
「お腹空いた・・・。」
そこに、小さな男の子がやって来た。
「お姉ちゃん、なんか食べ物ちょうだい。」
「ごめんね、僕。今は食べるものが無いんだって。」
「そんな!? お腹空いたよ!? うえええええん!?」
子供は泣き出してしまった。困ってしまう、みなみちゃん。
「僕、ラーメンは好き?」
「うん、カップラーメンが好き。」
「わかった。私がなんとかしてあげよう。」
「本当!? 約束だよ!?」
「ああ、約束だ。」
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指切った~♪」
美代先生は、小さな男の子と指切りをした。
「よし! 食料備蓄庫に行って、非常用のラーメンを、みんなに配ろう!」
「おお!」
「キュル!」
美代先生たちは、地下にある食料備蓄庫に向かった。
「鍵がかかってますね。」
「キュル。」
美代先生たちは、食料備蓄庫の扉の前に着いた。鍵がかかっていて、開けることができなかった。
「これでは、ラーメンを食べることができない!?」
美代先生たちは、立ち尽くしてしまう。
「奥様、いけません。」
「ベテランのおばちゃん!?」
そこに、ベテランのおばちゃんと東西北さんトリオが現れた。
「東です!」
「西です!」
自己紹介をしている東西北さんが、みなみちゃんをジッーと見つめている。
「え? 私ですか?」
「そうそう。」
「みなみちゃんです!」
「北です!」
「4人合わせて、アイドルユニット「東西南北」です(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
「え!?」
みなみちゃんだけは、このノリについていけなくて、棒立ちして、顔は戸惑っている。しかし、今は作品だけでなく、イベント、コンサートをして、儲けないといけないので、声優さんもダンスも必須である。作品を書くときに、どこかにアイドルユニットないし、イメージソングを歌えるキャラクターの必要が、作品に求められる。
「どうしてダメなんですか?」
「日本政府がパンデミックの病原菌が何か分からない間は、食料を食べてはダメだと言うんです。」
「そんなバカな!? こんなにラーメンが食べたいのに!?」
「美代先生、そこは、お腹を空かしている人がたくさんいるんだぞ!? です。」
「ごめんごめん、つい本音が。」
美代先生は、正直な大人さ。
「私が責任を持ちます。」
「え?」
「私が責任を持ちますから、非常食を非難してきた人々に配ってください。」
「ダメです!? そんなことをしたら奥様のお立場が!?」
ベテランのおばちゃんは、美代先生のことを心配する。
「私は元々、貧乏人です! 立場なんかどうでもいい! 困っている人々を助けるために医者になったんだ!」
美代先生は、本当は自分が、カップラーメンを食べたいだけである。
「先生、カッコイイ~♪」
「キュル~♪」
みなみちゃんとパンパンも、カップラーメンを食べたいだけである。お腹が空いて、ギュルギュルと鳴いている。
「分かりました。奥様が、そこまで言うのなら。」
「ありがとう、ベテランのおばちゃん。」
ベテランのおばちゃんが食料備蓄庫の扉を開けた。
「さあ、お腹の空いている人々に、ラーメンを配るんだ!」
「おお!」
美代先生の指示で、みなみちゃん、パンパン、ベテランのおばちゃん、東西北さんで食料を運び出し始める。しかし、パンデミックの性で、病院関係者の人員も不足している。このままでは、スムーズに人々に、食料を配ることができない。
「先生、食料はあるのに、人手が足りません!?」
「クソ!? 目の前に大好きなカップラーメンがあるのに!?」
たかが1病院に自衛隊を呼ぶ力は無い。パンデミック中は、未知の病原菌のため、人々は外出できない。恐らく病院の医師や看護師も例外ではない。
「どうしましょう?」
「・・・そうだ!? みなみちゃん。」
「はい?」
「シークレットライセンスを貸して。」
みなみちゃんは、シークレットライセンスのカードを美代先生に渡す。
「どうするんですか?」
「こうするの。」
美代先生は、カードを真っ二つにへし折った。
「ギャア!? そんなことをしたら、あの人たちが来ちゃいますよ!?」
「いいよ。食料を配ってもらうんだ。」
美代先生は、医師になるだけのことはあり、頭の回転が速かった。
その頃、世界保健機関(WHO)。
「ああでもない、こうでもない。」
事務局長が、パンデミックの原因も分からぬまま、時間だけが過ぎていた。
「まだ病原菌の発信源は分からないのか!? パンデミックは、今も世界中に広がっているんだぞ!? なにかないのか!? このままでは地球は、チョコキノコに滅ぼされしまうぞ!?」
事務局長は、苛立っていた。チョコキノコなどという、未知の病原菌に人類は、手も足も出ないのである。
「事務局長!?」
1人の国連の職員が全力で走ってくる。
「なんだ!?」
「日本の歯科学会で、残念賞レポートで、歯からチョコキノコが生えてくる新種の細菌を発見したというレポートが発表されています!?」
「なんだと!?」
「渋谷大学病院の名誉教授で、この女医は、歯から生えるチョコキノコだけでなく、歯から生えるイチゴも、治療に成功しています!?」
「すぐに日本政府に連絡だ! 私も日本にいくぞ!」
事務局長のキレキレの指示が矢継ぎ早に飛ぶ。
「ドクター美代に会わねばならん!」
事務局長は、美代先生の半分死んだような目をしている写真を見ながら、やっと見つけた解決の糸口に喜んだ。
「運んで。」
「え?」
美代先生たちの元に、黒服の集団が現れた。
「運んで。」
「日本秘密庁の安部景子です。」
「運んで。」
「シークレットライセンスを破損した罪で連行します。」
美代先生は、運んでの一点張り。安倍さんは職務優先で対立する。
「おまえら! 緊急事態と言うのが分からないのか! 世界はパンデミックで、これだけ多くの人々が、病院に避難してきているんだぞ! さっさと食料を配るのを手伝わないと、困ってる人々を見殺しにする日本秘密庁と世間にばらすぞ! 」
美代先生は、食料が配れてないので、まだお昼ごはんのカップラーメンが食べれていないのでイライラしている。
「・・・。」
安倍さんは、黙って考え込む。人助けと職務との間で板挟みなのである。
「わかった。今後は、日本秘密庁の職員証か、シークレットライセンスを持っている人間は、大学病院の食堂の利用を無料にしよう。」
「なに!? 無料だと!?」
安倍さんの心は、無料という言葉に心が揺れている。
「おまえに、それができるのか!?」
「私は大学病院の若奥様だ!」
安倍さんの心は決まった。
「全員! 非常食を配るのを手伝うぞ!」
「おお!」
日本秘密庁の職員は、備蓄倉庫から非常食を配るのを手伝い始めた。これでスムーズに食料が行き渡るだろう。
「安倍さん、ありがとう。」
「困った時はお互い様ですね。」
安倍さんは、困っている人を助けるのは、人道的支援であり。食堂の無料利用で決めたのではないと言っている。
「みなみちゃん、今度は食堂に行って、ラーメンのお湯を沸かすのを手伝おう。」
「は~い~♪」
「キュル~♪」
みなみちゃんたちは、ラーメンを食べるのが近づいたと喜んでいる訳ではない。
「ルルルル~。」
その時、安倍さんの携帯電話が鳴った。
「はい、安倍です。小泉長官!?」
電話の主は、日本秘密庁の長官、小泉純子だった。
「はい、分かりました。」
安倍さんは電話を切った。
「美代先生。」
「はい。」
「あなたを、世界最重要人物として、連行します。」
「はあ?」
美代先生は、こいつ頭がおかしいんじゃないかと心の中で思った。
「連れていけ!」
「ええ!? ちょっと!? 何するんだ!?」
黒服の男が2人係で美代先生を両脇から抱えて連れて行く。
「助けて! みなみちゃん!」
美代先生は、手を伸ばして、みなみちゃんに助けを求める。
「行ってらっしゃい~♪」
「キュル~♪」
助手とパンダは、お腹が空いたので、食堂にラーメンを食べに行く方が先だった。
「裏切り者!?」
美代先生は、安倍さんと共に、地下の食料備蓄庫から去って行った。
安倍さんと連行されている美代先生は、病院の駐車場にやって来た。
「うわあ!? 」
美代先生は駐車場に止まってある、黒い車に放り込まれる。安倍さんも乗り込む。そして、車が動き始めた。
「いたたたた!? 世界最重要人物なら、もっと大切に扱ってよ!?」
「すいません。長官の命令で美代先生の命を守らなけらばならなくなりました。」
「はあ!?」
美代先生には、何のことだか分からない。
「あう~♪」
「なに? この子?」
車の中には、年齢は女子高生ぐらいの女の子が座っていた。
「この子は、イスラちゃん。日本秘密庁の対テロ最終兵器です。」
「はあ!?」
「イスラちゃんがいる所が1番安全です。」
「あう~♪」
「ずっと、思っていることがあるんだけど、あんたら頭おかしくない?」
日本秘密庁が過去作品のキャラクターなので、もちろん、コミカル&パロディー路線である。
「安心してください。この作品は、美代先生とみなみちゃんのお話なので、我々は、目立たないし、爆破シーンとかも無いので。」
「爆破シーンって・・・。」
「我々は、ただの護衛だから。」
美代先生は話についていけていない。
「で、この車は、どこに向かっているの?」
「青山の日本の国連。」
「国連!? どうして、そんなところに!?」
美代先生は、テレビも見ないし、朝からラーメンのことばかりだったので、まったく世界情勢を知らない。
「あれ? 美代先生、自分の立場が分かってないんですか?」
「あう?」
「え?」
「この記事を読んでください。」
美代先生は、安倍さんからタブレットを渡される。
「うわあ!? 私の写真だ!?」
記事には、美代先生の顔写真があった。記事のタイトルが、「The savior of the world, Miyo doctor.」だった。
「世界の救世主!? ドクター美代!?」
美代先生は驚いた。自分が世界新聞に載っているのもビックリ。自分が世界の救世主と書かれていることもビックリである。
「え~、なになに。全世界で35億人の感染が確認されている新型ウイルス「チョコキノコ」。これは歯からチョコキノコが生えてくるという細菌である。世界の医療機関、世界保健機関も、新種の細菌に対応する方法を持ってはいなかった。そうなんだ。」
美代先生は、この事実を初めて知った。
「しかし、世界に聖女が現れた。日本の美代ドクターだ。彼女は、日本の渋谷大学病院の名誉教授で、大学病院の院長のご子息と婚約中である。・・・私の個人情報が全世界に配信されている・・・。」
美代先生は、世界クラスの歯科医師になってしまった。
「美代ドクターは、虫歯からチョコバナナが生えてくるという新種の細菌を発見し、レポートを提出している。今回のパンデミックの「チョコキノコ」だ。さらに、美代ドクターは「チョコキノコ」を完全治療している。このパンデミックを終息させることができるのは、美代ドクターだけだ。・・・。」
美代先生の頭の中は、パンデミックのように混乱している。
「なんだこれは・・・。」
「大丈夫ですか? 美代先生?」
「あう?」
安倍さんとイスラちゃんは、美代先生を心配している。
「グルグル・・・。」
美代先生の頭の中は、一度に大量の情報が入ってきて、混乱している。それを美代先生の脳みそは、テトリスのように、一つ一つ丁寧に整理していく。そして、頭の中の整理が全て終わった。
「わかった。」
美代先生は、世界で起きていることを理解した。そして、世界を恐怖のどん底のパンデミックに陥れている新種の細菌「チョコキノコ」も治療したことがある。さらに、病原菌の発信源も、ほぼ特定できている。そして、この事態を解決できるのは、世界で自分1人だということも確信した。
「ハハハハハ~♪」
美代先生は、突然、不気味に笑い出した。
「おいしい~♪ おいしすぎる~♪」
美代先生は、笑いが止まらなかった。
「私がセレブになる!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
美代先生の目標は、開業して、お金持ちになることである。
「カモがネギをしょってきた~♪ バン! バン! バン!」
これは、美代先生の十八番、カモネギの歌である。美代先生は、セレブになるのが夢で、お客さんを金づると思っている、金の亡者である。
「イスラちゃん、この人、本当に世界最重要人物かな?」
「あう・・・。」
安倍さんとイスラちゃんは、美代先生を疑いの眼差しで見る。
車は、もうすぐ国連に着こうとしていた。
つづく。