第1章 始まり
どうも、葛城湊です
前の作品を書いている途中にネトゲにはまり、こんなのも書いてみたいなっと思い立ったのがこの作品の始まりです。
楽しんでいただけるよう鋭意執筆いたしますので、面白いと思った方、気に入ったという方は是非ブックマーク、感想の方よろしくお願いします!
何気ない日常。何気ない日々。代わり映えのしない毎日を繰り返すだけの怠惰でつまらない、普通の生活。朝起きて、朝食を食べ、学校へ行って、勉強して、弁当食べて、部活をして、家に帰って、夕食を食べ、ふろに入って、寝る。そんなありきたりな生活を送っていくものだろうと信じていた。
高1の夏。この世界を、いや、私の価値観をすべてぶっ壊したあの出来事が起こるまでは―――。
その日はいつもと変わらない晴天だった。
とある町にある、とある道場の庭で。目を閉じ、呼吸を落ちつけて竹刀を構える少年。
「…すぅっ……ハッッッ!!!」
一呼吸ののち、振り上げられた竹刀はその鋭さを表すかのように強い風を起こした。
庭一面に広がっていた落ち葉の絨毯は少年が振るった竹刀たったひと振りのもとにはるか上空まで噴き上げられ、跡形もなく消え去った。
「…まぁ、こんなもんでいっか」
そういうと少年は持っていた竹刀をしまい、けだるげに家の中に戻っていく。
そのまま二階への階段を上り、「鈴の部屋♡」と書かれた札のかかった部屋の前で、部屋の主に向かい声をかける。
「おーい、鈴、朝だぞー……ったく、しゃーねーなー、入るぞ」
部屋に入ると、そこには布団にくるまって眠る小さな少女がいた。
スヤスヤと寝息を立てながら気持ちよさそうに眠る少女に近づくと少女から布団を引っぺがした。
「うにゃぁぁぁぁ…あれ?お兄ちゃん?おはよ…」
鈴と呼ばれた少女――寺崎鈴は眠たい目をこすりながら返事をした。
一方、兄と呼ばれた少年、拓斗は悪戯そうな笑みを浮かべている。
「おはよう、寝坊助。早く支度しねーと遅れるぞ」
「うん、わかった~」
少女は言われた通り着替えを始めようとして手を止めた。なぜなら…
「早く出てけこの変態!!!」
お兄ちゃんと呼ばれた少年が部屋を出ようとしなかったからである。そんな少年の末路は大抵悲惨な目に合うと決まっている。この少年も例外ではなく、枕に櫛・ティッシュの箱・バッグ・ポーチ・本etc…によって悲惨な目にあったのだった。
支度を終えた鈴はスマホをいじりながらご飯ができるのを待っていた。
彼女がプレイしているのは最近話題のRPG、≪ファントム・デューク・オンライン≫通称、PDO。世界中に5000万人を超えるプレイヤーが存在する人気アプリである。人気の理由は何といっても自由度が高いキャラメイキングと可愛らしい妖精獣と呼ばれるペットのようなパートナーのためだろう。妖精獣は卵から返すところから始まり、自分好みに育てていくことができるシステムだ。これにハマり、プレイヤーになった人も数多くいることだろう。鈴もそのうちの一人である。
そんなPDOでは、いろいろな場所で大会やイベントなどが定期的に開かれている。
鈴の支度の目的も近くで開かれる大会に参加するためだった。
「行ってきまーす!」
出てきた朝食を食べ終えると、会場に向かって歩き始めた―――運命の歯車が回り始めたことなど知るよしもなく。
しばらく道を歩いていると、ケータイからメールを知らせる着信音が聞こえた。カバンから取り出しメールボックスを開くと、そこには差出人不明のメールが届いており、いつもの勧誘か何かだと思った鈴は削除しようとしてその手が止まった。鈴の目にとある一文が飛び込んできたからである。その文面は…
『理想を現実にする力を授ける。しかし、その代償に現実を失う。覚悟を示せ』
「理想を現実にする力?…覚悟を示せってどうやって?」
すると、スマホの画面が光りだし、目の前に見覚えのあるシルエットが浮かび上がる。
「なんで…?どうしてコイツがこんなところに…」
そのシルエットはPDOよく見た、ハチ型のモンスター、イービルホーネットだった。
スマホをよく見ると、妖精獣の召喚画面が開いていて、鈴が育ててきた小さな銀竜の妖精獣―シルヴィが映っていた。
「何なの…これ…一体、どうなって…」
現実離れした突然の出来事に、鈴に戸惑いや恐怖といった感情が一気に押し寄せる。
「…よくわかんないけど、とにかくやるしかない」
押し寄せる感情に戸惑いながらも、鈴は戦うことを決意した。
「行くよ、シルヴィ!召喚!」
鈴が召喚を詠唱した瞬間スマホが輝きだし、鈴ごとまばゆい光で包み込み、眩しさのあまり鈴は目を閉じた。
しばらくして目を開けると、目の前には幾多の困難を共に超えてきた相棒、シルヴィと、臨戦態勢のホーネットの姿があった。しかし、鈴にはそんなことよりも気になる現象が目の前に広がっていた。
それは目の前に広がる光景が先ほどまでの道ではなく、PDOの中で何度も目にした、はるか遠くまで広がる草原だったからである。
「そんな…ここは…バルト草原?そんな馬鹿な…」
いきなり現実離れしたことが置きすぎて、混乱する鈴。
すると、鈴のスマホからメールの着信音がなった。
「今度は何…?『覚悟は示された。約束通り、汝に力を授ける。偉大なる創造主の御加護が汝にもたらされんことを』…何これ?意味わかんない!」
ついに抑えきれなくなった感情を吐き出した鈴は、目の前の光景を再び確認して、心を落ち着け、考えた。その結果、至った答えは―――
理想を現実に変える力=イメージが現実になる
現実を失う=ゲームの中に入る
というものだった。
鈴は常日頃から「ゲームの中で本物を見て体験したい」と考えるほどこのゲームにのめりこんでいた。それが現実になったと考えると、力や今の現状に納得がいく。ありえないことに変わりはないが。
整理がついてしまえば、後の対応は早かった。何しろ、偶然のような奇跡とはいえ、夢が叶ったのだから。
鈴は思考をやめ、目の前の戦闘に集中した。
「さぁて、いっちょやりますか!シルヴィ、戦闘開始!」
戦闘開始の合図を宣言し、鈴のPDOの中での初戦闘が始まった。
「やるとなったら先手必勝!!―――シルヴィ!疾風尾槌!」
鈴の掛け声とともに、シルヴィはホーネットに向かって突撃し、疾風を思わせる速さで槌のごとき尻尾をふるい、殴り飛ばした。
吹き飛ばされたホーネットは数メートル飛ばされた後、地面に落下し、光の粒子となって消えた。
「よっし!この程度の相手、私とシルヴィの相手じゃないわ!よくやったね、シルヴィ!」
「キュィィッッッ!」
二人(一人と一匹)は勝利を分かち合い、喜んでいた。
ところは変わり、バルト草原から少し離れた場所に位置する商業都市、ウェルニスタ。
街中を無数に走る路地のうち、街の西側から中央に向けて走る大通りから路地を一本入ったところにある酒場にて。
「また新しい能力者が現れたらしいぜ?いつもみたいに狩りにいかないのか?ジェイド」
「そうだね…彼女は特別だから。…会うのが楽しみだよ、鈴」
亜竜人の男にジェイドと呼ばれた黒いローブに身を包んだ男は不敵な笑いを浮かべながら、手にしたジョッキを飲み干した。
「お前は身内に甘ぇんだよ、ったく。まぁ、俺は目的さえ果たせればそれでいいがな」
「お前のそういう欲望に忠実なところが僕は好きだよ」
「ケッ、男のお前に好かれてもかけらも嬉しくねーよ」
「ひどいなぁ。まぁいいや。今回の仕事はしくじらないでね、バリステン」
バリステンはニヤッと笑うと、一気に酒を飲み干し、言った。
「あたぼうよ、俺様を誰だと思ってんだ。」
「そうだったね、頼んだよ。撃墜の狂戦士」
「おうよ。任せとけ」
そう言うとバリステンは席を立ち、店を出て行った。
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