終わりΩと始まりα
世の中には害するモノが現れれば、それを排除するための半勢力の力が働く。
それはこの世の理の1つである。
しかしその半勢力は己を守る術と、自分を守る為にしょうがないと吐いて相手を殺すのだ。
それは善ではないが、悪でもないのだ。
しかし、悪を倒すのは善、即ち正義のみだ。
いや正しくは、悪を倒せば正義なのだ。
人類は類最終試練、“絶対悪”の御旗を討ち、正義を掲げる事は出来るのか。
青年――アジ=ダカーハはこの世界の最後の都市へと向かっていた。
都市は見えている所まで来ていた。
しかし、彼は此処まで破壊を繰り返していたが、ある事を危惧していた。
それは、己を超える者の存在の有無、だ。
無数の都市や町、村を悉く無へと変えてきたが全て手ごたえが無さ過ぎたのだ。
これから当たる最後の都市に彼を超える者が現れなければ、彼の手により世界ごと無にしてやり直す必要ことになるのだ。
だが、人類の兵器は全て彼に掠り傷すら与える事は不可能だったのだ。
次が最後の都市、此処まで手ごたえなし、この二つの条件ともう一つ。
彼はこの世界の悪の試練として生まれた。
この世界のみの為に悪の試練として生まれたのだ。
その為、この世界がこの試練を超えられないとすると彼の存在は不確定なものになってしまう。
つまり、試練では無くなり希薄な存在に変化される。
彼はこの状況を生み出した原因は、人類の早くに進み過ぎた文明だと考えている。
本来ならもう少し遅れて今の文明になるはずだったのだ。
そのイレギュラーが呼んだのが、早すぎた悪の試練の誕生というイレギュラーなのであると考えている。
このイレギュラーは“paradox”となるはずなのだが、この“paradox”を回収するべき天軍は何かあったのか降りてこなかった。
“paradox”が回収されずに進む結果は決まっている、即ち終末の到来だ。
今回はそれに当たってしまうという不運が発生したのだ。
と、青年が思考を巡らせていると最後の都市の門の目の前に到着した。
青年は元の覚悟とは別の覚悟を決め、その姿を変貌させた。
高さは三尺程にまで膨れ上がり、肩からは龍の頭蓋を生やし、首を三本の三頭龍へと変えた。
純白の三頭龍への唐突な出現によりパニックになった人々の悲鳴が上がり、ドタバタと去ろうとする足音があらゆるところから聞こえた。
三頭龍は空へと飛びあがり都市を見下ろすように見回したが、やはり英傑の気配はなかった。
三頭龍は一瞬悲しそうに顔を歪めたが、彼に向けて超電磁砲が打たれたが、それを容易く打ち消した。
そして三頭龍は終わらすことにした。
『我が必殺の“覇者の光輪”で終わらせてやる………』
三頭龍は目の前に巨大な炎の球体を作り出した。
覇者の光輪とは伝承で世界の三分の一を滅ぼすと言われる閃熱系最強の一撃であり、終末論を引き起こす引き金である。
『さらばだ………人類よ………』
地上に向かって振り下ろし、世界は光に包まれた。
己の身が滅ぶのも覚悟していた。
これでこの世界は滅び、終焉を迎えたのだ。
しかし、時間が経てど身が滅ぶ感じはしなかった。
光が開けて目の前に現れた光景に三頭龍は驚愕した。
三頭龍が立つ崖から見える光景は先ほどとは明らかに別の世界だった。
すると、脳に直接言葉が流れてきた。
―――ここは、忘れられた者たちの世界、『幻想卿』―――と。
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