美形その5は高身長天然
-カラン コロン
しゃがんで落ち着きを取り戻している(何度目よ…)と、誰か来た。
「シンおはよう」
今度の人は、シンさんっていうのか。振り返って入口の方を見る。
「…ん」
身長高っ!…あ、しゃがんでたわ。ゆっくり立ち上がり、シンさんを見る。いや、立っても感じる身長の高さ。何㎝あるのだろう。私より20㎝くらい上だよな、これは。
「…」
…あれ?なんだか見つめられている。見つめられているんだけど。ど、どうしたらいいのかあ…。
「…誰」
「あ、新しいバイトの子」
「…」
「う、海ですっ」
「…」
自己紹介をすると、帰ってきたのは無言。聞こえなったのかな、それとも、無視された?え、悲しい。悲しいよ。
「う、海です!よ、よろしくお願いします!」
「…」
少し大きめの声で再び自己紹介。でも、また無言なシンさん。…どうしたらいいんだろう。
すると バッチーンッ と輝くんがシンさんの背中を叩いた。そして一言。
「シン!起きろよ!」
え、ね、寝てたの!?立ったまま?え?すごい…。ってちがうちがう。無視されてなくてよかった。
「…ん、あ」
「海、シンは天然だから」
「え。あ、はぁ」
あれだけすごい音をたてて打たれたのにまだ反応が鈍いシンさん。どれだけ眠いの。
「シン自己紹介して」
薫さんがシンさんに言う。
「…シン」
…知ってます。
「フルネームゥ」
そうそう。ありがとう満さん。知りたかったのはフルネームです。
「…望月 真-モチヅキ シン-」
「漢字は望に月、真実の真ね」
「はい!あ!お、俺は、東條 海ですっ」
「…ん」
輝くんの補助をうけて真さんのフルネームをゲット。私も言葉遣いに気をつけて名前を伝える。すると、真さんは頷き、手こちらにのばしてきた。
何事?と思っていると、頭を撫で撫でされてました。
「え?」
「…よろしく、うー」
「…うー?」
「きっと海の事だよ」
「そ、そうですか。えぇと、こちらこそですっ」
頭は今だに撫でられてます。
「あ、あの真さん?」
「…ん」
「い、いつまで撫でてるんですか」
「…」
「…」
「…つい」
「い、いえ。大丈夫です」
真さん、ホントに天然!癒し!背大きくてこの性格って!ちなみにまだ撫でられたままです。
「あ、真おはよ」
「…ん」
すると着替え終わった晴が来た。
「海」
「はい」
「どう?」
「どうって、何が?」
晴はあたしの前にくるとくるっとターンした。華麗なターンでございますこと。
「制服だよ」
「あぁ」
「どう?」
「格好良いよ」
晴の制服はパンツとブラウスは私と同じだけど、首もとには何もなく、ボタンが3つ開いててセクシーです。フェロモン振り撒いてます。似合ってる。性格に合ってるかんじがする。
いつも教室で見てる晴とは全然違う。クラスの皆も、こんな晴の姿、予想出来ないだろうな。予想出来てたら怖いわ、そして想像力を尊敬する。
「そっか、ありがとう」
と満足げに微笑んでカウンターの方へ行ってしまった晴。何なの?何がしたかったの?イケメンの心は分からない。そして、真さんまだ撫でますかい?
「し、真さん。あのー、まだ撫でますか?」
「…だめ?」
「喜んで」
くっ、私には無理だ、あんなに可愛い顔されたら断れない。どうぞ、存分に頭を撫でていてください。
高身長天然との戦に敗れていた私に輝が近づいてきた。
「俺はっ!?」
「?…あぁ、輝も格好良いよ!」
むしろ可愛いよ!可愛さ満天だよ!!
輝は、黒の半ズボンに白いシャツ、その上に灰色のパーカーを羽織っている。髪の毛をピンクのピンでねじるように止めてアレンジしてる。元気いっぱいで可愛い輝にピッタリだ。その制服、満点。
「「俺たちはどうかな」ぁ」
そして、私たちの様子を見ていた双子が便乗してくる。してくると思っていたよ。短い付き合いなのに性格を把握しつつある私。人間観察が趣味&特技です。
「えぇと薫さんは、紳士的で格好良いですっ!」
「ふふ、ありがとう」
薫さんはパンツとブラウスは私と同じで、黒のベストを着ている。プラス黒のネクタイをして、英国紳士な雰囲気である。
「満さんも、格好良いですっ」
満さんも、薫さんと同じだけど、ネクタイの色が少し違うし結びのアレンジの仕方も少し違う。
「ネクタイが藍色で、落ち着きますねっ」
「…よく気づいたねぇ、ありがとうぉ」
え、誰でも気づくと思います。よく見ると違うし。
「…うー、可愛い」
「え?」
「…制服、似合ってるよ」
「っ!」
突然なんですか?
え、何コレ。照れる。照れる!!恥ずかしい!真さん微笑んでるし、頭撫でられてるし!ずっと撫でられているんですけどね。
ここで感じました。
「天然って怖い」
この会話を聞いて皆が思った。いやいやいや…海も天然でしょうが、と。