どうやら攻略に失敗したようなので、復讐しようと思ったのだけど……。
ご都合主義的に今回も進みます。
気にしてはいけない!
とある乙女ゲーム。
そして、とあるヒロインのぼんやりとした呟き。
――とある館の庭園にて。
「すまない、リリ。俺はマリアーナのことが好きなんだ」
「ごめんなさい、リリ様」
私の目の前で、婚約者だった筈のオーランド(公爵家の長男)は突如現れたマリアーナ(子爵家の令嬢)に心奪われたのだ、と私ことリリーナ(伯爵家の令嬢)にそう言った。
……ちょっとまって。
「いきなり何ですの? オーランド様、私という物がありながら……」
「マリアーナは、俺に本当の愛を教えてくれた。君にも良くしてもらっていたが、彼女は……」
怪訝な顔で問う私に、オーランドはべらべらとマリアーナがいかに良い女性なのかを語る。青筋がたちそうになるのを堪えていると、マリアーナがそんな私をみてくすくす笑っている。「いい気味だ」とでも言っているようだ。
婚約解消され、私は笑いあう2人を見てぐっ、と拳を握り締めた。
ふざけないで。政略結婚をなんだと思っているの……?
現在、貴族たちは現王派と王弟派に別れている。そして水面下では色々ごたついているのだ。現王派のトップとナンバー2が結びつくために私らの婚約があったっていうのに!! 私の家であるロベルタ家とハルバナン家が結束を固めて現王を守らないといけないって知っているだろうに!!
言っておくけど、ロリマー家(マリアーナの家)は中立である……。
2人のいちゃつく姿を見ながら、私はもう一度拳を握り締めた。
いいだろう。だったら悪役にでもなってしまえばいい。
2人について情報を収集しようと思い、サロンへの顔出しなどをしていると、子爵令嬢マリアーナについておかしな噂を耳にした。あの令嬢、オーランドを手にするため、私が彼に送った手紙や贈り物をセンスのない物にすり替えていたらしい。その他にも、オーランドに近づくためだけに別の殿方に声をかけ、気のあるそぶりで誘ったりもしていたそうだ。
証拠を探すが、そこはなかなか見つからない。途方にくれていたら、一人の男性と知り合った。マリアーナを愛していたのに騙されてしまった不幸な伯爵家の嫡男、ガンヴィーノ。彼もまた、一矢報いたくて情報を集めていたという。
「女々しいと言われるのは仕方ないだろうな。だが、俺にもプライドがある」
「気持ち、わかりますわ……」
因みにヴィオウルフ家(ガンヴィーノの家)は現王派のナンバー3。社交界ではオーランドと並んで花形ですっごくモテモテなこの方もマリアーナに騙されていたとは……。
そんな中、私とガンヴィーノはとある情報を得る。マリアーナが実は王弟派に属する伯爵の娘である事が発覚した。彼女は子爵家の令嬢と伯爵の不倫関係で生まれたらしい……。これってスキャンダルじゃない? 悲しい事にロリマー子爵はその事を知らないようで妻瓜二つのマリアーナをすっごくかわいがっているようなのよね。
運良く証拠が入手できると、今度は棚ぼた式にマリアーナの目的とその証拠を入手。彼女は現王派をぼろぼろにするために現王派の男たちを手玉に取っていたらしい。
絶対に許せない……っ!
私が闘志に燃えていると、ガンヴィーノがぎゅっ、と私を抱きしめる。
「っ?!」
「落ち着くんだ、リリアーナ。もし、君に何かあったら俺は……」
その震えた声に、私の胸に痛みが走る。彼の言葉がとても身に沁みてしまった。うん、無茶はしない。家族のためにも、ガンヴィーノの為にも。
その後どうなったかというと、王弟派はよくて爵位降格やら追放。悪い場合は処刑という結果になった。マリアーナだけじゃなく、色んな人間がやらかしていたという事ね。ご都合主義的に進んでいった事件を思い出して頭が痛くなったわ……。
王弟本人が望んだ事ではないとは言え、諌め切れなかったという事で謹慎。王宮のとある場所にある部屋に閉じ込められている。その後責任を取って自害しようとしたのを王に止められたらしいがなんともいえない。
そして、マリアーナはというと、修道院送りである。オーランドが嘆願して処刑は免れた物の、それと引き換えに彼は勘当されて家を追い出されている。
政敵はきれいさっぱり消えてしまった。やり方に聊か強引なものを感じてしまう私は、そこで沸いた不信感をいかに沈めるかを考える。傍らには夫となったガンヴィーノがいる。彼と一緒ならば、私は戦える気がしていた。
私は女性で初めての文官として起用され、夫婦で王をサポートする事になった。正直ただの令嬢で収まるのは面白くなかった。政治的な争いは苦手だけど、こういう形で王に尽くせるのは嬉しい。夫と共に王国を支えるために、私は今日も王宮へ向かう。
読んでくださり有難うございます。
グダグダ感は今回も満載です。