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始めよう!異世界青春譚  作者: 如月北斗
異世界召喚編
2/5

第2話 異世界召喚

寒い。



俺は寒さに身悶えた。



身体が冷えている。

接地面は固く、枕もないみたいだ。

寝相の悪さのせいで、ベッドから落ちてしまったのだろうか?

それでも被っていた毛布は近くにあるはずだ。



眠気で瞼は開かないまま、近くにあるはずの毛布を手探りで探してみるが感触はない。



「・・・う、動いたぞ・・・。 なんだこいつ」


「何とも珍妙な格好をしておる・・・」



ん?寝ぼけているのか、まだ夢の中なのか?

知らない声がざわめいて聞こえてくる気がする。



いや、そんなことはありえない、気のせいか夢だろう。



俺は自宅で寝ている。

起きたら支度して仕事に行くんだ。

しかしながらまだ目覚ましは鳴っていない。

毛布はないが、まだ寝ていてもいいか。



「動きが止まった? 今度は何をするつもりだ?」


「いや待て。・・・・こやつ寝ておる! この儀式場の上で・・・・・」


「何て奴だ! おい! 起きろ!」


響く怒号に身体がピクリと反応した。



気のせいではなかった。確かに声が聞こえる。

足音と声から察するに、少なくとも二人以上はいるだろうか。

強盗か?泥棒か?

いずれにせよ目を開けるしかないみたいだ。



恐る恐る瞼を開く。



そして驚愕した。

思わず口をあんぐりと開けてしまう程に。



目に飛び込んできたものが、俺の想像を遥かに超えていたからだ。



眼前に映ったのは、魔方陣のようなものが敷き詰められた場所だった。

規則的に並べられたロウソク立てから漏れる淡い光は、部屋を燦々と照らすことはなく、ボンヤリと薄暗い部屋の概要を映し出している。



そして魔方陣の真ん中に座り込む俺の取り囲むように、見知らぬ者たちが立っていた。



「お、起きたぞ! 構えろ!」



その中でもっとも俺に近い位置に立つ一人が声を上げると、周りの連中は手にしている槍を一斉に俺に突き付けてくる。



「ヒッ!」



いきなりの出来事に状況が把握できず、ただ小さく悲鳴を上げることしか出来ない。



「ならん! 怯えておるではないか! わざわざ敵対しようとしてどうする!」


「ですが・・・」


「参謀のワシの言うことが聞けんか!? ルビウス将軍!」


「くっ・・・全員、武器を下ろせ!」



魔法使い風のローブに身を包む老人に諭され、ルビウスと呼ばれた青い髪の青年は不本意そうな顔を浮かべつつ命令を取り下げた。

この二人は、周りの兵士みたいな奴らに比べると大分雰囲気が違うように見受けられる。

なんというべきか・・・明らかに格が違う、オーラを纏っている的な感じか。



――た、助かった・・・のか? けど一体何なんだこれ、ドッキリか何かか?



「すまぬな、別世界の住人よ。 そなたは我らにとって未知の存在ゆえ。 無礼を許して頂きたい」



そう言いうと、申し訳なさそうに頭を下げる老人。



一般人を驚かすバラエティー番組でも見ているかのようだ。

ネタバラしのタイミングはまだなのだろうか?



「それはいいんですが・・・。 あのドッキリでしたーとかのくだりはやっぱりあるんですか?」



そして自分の格好を思い出し、ハッとする。

今の俺は完全に寝間着パジャマ姿だ。

さすがにこのままの姿でテレビに映るのは恥ずかしい。



というより素人のこんな姿を見て、視聴者が喜ぶとでもいうのか?

一昔前のテレビではよく見た光景だったが、最近のテレビ事情でそういうのはめっきり見なくなったと思っていた。

全国ネットか地域のローカル番組かは知らないが行き過ぎた企画であることには間違いない。



「ドッキリ? なんじゃそれは?」



老人は不思議そうな表情で首を傾げる。



「ははっ、演技が上手いですね。もしかして俳優さんとかなのかな?」


「・・・はいゆう?」



イマイチ話が噛み合わない。

非常に台本に忠実な役者だ。



あ、今気づいたけどこの人耳が尖ってる。

特殊メイクって初めて見たけど、まるで本物みたいに違和感なくできてるんだな。



「まだ状況が呑み込めていないと思うから簡単に説明するとのう。そなたは我らが魔王様により、ワシら世界、アースティリアへと召喚されたのだ」



「え? 魔王? アース・・・・テリア? 召喚?」



テリアではなく、ティリアじゃ。と細かい所に突っ込みを入れられる。



普段の日常生活で聞くこともないような単語に動揺し茫然とする。

アニメやゲームの中の話だろ、異世界召喚なんて・・・

子供ならまだしも、俺にはとてもじゃないが信じられる話じゃない。



とするとやっぱりドッキリ企画か。

『一般人にドッキリを仕掛けるとどんな反応をするのか!?』みたいな感じの。

特にカメラは見当たらないけど、ネタバラしがまだないってことはこのやり取りは演出上必要ってことだよな。



これは見方を変えると、日常生活にうんざりしていた俺には最高のプレゼントかもしれない。

詳しいことは分からないが、とりあえず変なことはしないで話を合わせておこう。

テレビに出たっていう、話のネタくらいにはなるだろう。



「つまり俺は異世界に召喚された・・・と?」


「そうなるのう。 そなたもいきなり召喚されて戸惑いもあるじゃろうが、まずは落ち着いてほしい。 魔王様に会ってもらわねばいかんしな」


「・・・・わかりました。それで魔王様はどちらにいらっしゃるんでしょうか?」



辺りをきょろきょろ見渡すが、それらしき人物は見当たらない。



ちなみに思い浮かぶ魔王のイメージというと、世界の半分を対価に仲間になることを要求してくる奴や、緑色で魔○光殺砲を使い、実は優しいあの有名な魔王くらいだ。



「うむ、魔王様はこの儀式場の上の階におられる。ひとまず我らについてきてもらおうか」


「わかりました」


「ルビウス将軍、そなたもついて参れ」


「・・・ハッ。ではお前たちは各自持ち場に戻れ」


「「「「「了解です! 将軍!」」」」」



ルビウス将軍の部下の近衛兵たちは力強く敬礼をすると、早足でこの場から去って行った。

その光景を「手の込んだエキストラだなぁ」と呑気に見つめる。



「では行こうかの、こっちじゃ」



厳正な扉を押しあけ、俺を手招きする老人。

ルビウス将軍は俺を軽く睨みつけると先に扉をくぐっていった。



どうやら彼はツンデレ風のキャラクター設定のようだ。

ものすごいイケメンだし、恐らくジャ○ーズ事務所の方なのだろう。

そういった方面には疎いので、誰かは分からないけど。

今はツン要素しかないが、そのうちデレ期が見れるのかな?



などと考えていたが、こんな事態に放り込まれたにも関わらず、自身がやけに落ち着いていることに驚いていた。

傍から見れば、動揺したり喚いたりしてもおかしくない状況だ。

しかし、何とかなるだろうという気持ちが強い。



もしかしたらこれは自分の夢なのかもしれない。

夢は自分の好きな展開になることが多いしな。



そんなこんなで俺は事情がよく分かっていないまま、魔王?との面会を行なうことになったのだった。



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