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87-10=77 各々の恋愛模様

多くのヒロインズには申し訳ないのですが、彼女たちはローテーションすることになりました。

初日の自己紹介の後、わたくしたちヒロインではない3人を中心に10人くらいのグループができて、その塊で行動しようとしたときはどうしようかと思いましたわ。

いえ、1グループ10人は多いと思いますが、なんとか捌けない数ではありません。

問題なのは、わたくしがコンスタンスさんやセシリアさんとお話ができないということです。わたくしたち3人が集まれば、自動的に30人超えのグループになってしまうものですから。

本当にこれどうしたらよいのかしらと思っておりましたら、ヒロインズで小調整が行われたようです。

その調整というのが、ローテーションでした。


ヒロインではない3人がグループになり、ヒロインズが日替わりで3人加わります。

その3人って、正規ヒロイン+わたくしの友人達の分ですわよね。

結局わたくしの友人達はどこへいってしまったのでしょうか・・・。わたくしに対するイエスマンでしかなかった友人なのですが、今の状況はアウェイすぎます。

イエスマンに心の癒しを求めなくてはいけないなんて、ちょっと病みかけておりませんか?



そのローテーションも始まってはや1月が経とうとしており、この異様な状態になれてしまいました。

では、今日の3人を紹介いたしますわね。

上から下まで完璧コーディネイトし、ちょっと澄ました感じの"お嬢さん(ヴィア)"、

瞳が緑がかっているから"ミドリさん(シルヴィア)"、

自称が"サリー"のカワイイ花には棘がある系"サリーさん"の3人です。


サリーさんは、最初からわたくしのことを敬称付きで呼んできます。そのサリーさんにつられてか、わたくしを"様"つけする方がちらほらいらっしゃいますの。

皆様、他の2人のことは愛称で呼んでいるのに、なぜでしょうか? わたくしは"友人枠"ではないというアピールなのでしょうか。

そこまではっきりと区切られると、へこみます。


本人曰く、

「だってぇ、この呼び方でなれちゃったんですぅ。メレディス様のことちゃ~んと尊敬してるから良いでしょ? 許してください。ね?」


このセリフを上目遣いで、ちょっとすねた感じで言われてしまいましたら、「ダメ」とは言えませんでした。


「サリー様、おさすがです!」

「一生ついて参りますわ」

「はい、はい。あたしも"メレディス様"って呼ばせてください」

「やった~。"メレディス様"、"サリー様"ばんざ~い」

「「「「ばんざーい」」」」


サリーさんの奥で数人のヒロインズが盛り上がっていました。なぜ、同じヒロインなのに、"サリー様"なのでしょうか? ヒロインの中にも格差がでてきているとか、そういうことですの?



そのサリーさんですが、かなり優秀な方です。


「メレディス様ぁ。おはようございま~す。ね、ご存知ですか??」

「おはよう、サリーさん。何についてお聞きなのかしら?」

「うふふ。実は、ですねぇ。在校生代表だった騎士クラスのファーガス先輩なんですけどぉ。新入生の一人にヒ・ト・メ・ボ・レ。しちゃったらしいんです。その人のこと"妖精姫"って呼んでて、もう1週間くらい探し回ってるみたいなんです。で、ローザ先輩がそんな婚約者(ファーガスせんぱい)の態度にすっごく怒っちゃって。やけ食いしてたら5キロ肥っちゃったらしいんですよぉ。正直、ローザ先輩はもうちょっと太ったほうがいいと思うんですよね~。ほら、今までの体型が針金みたいだったじゃないですか? お手持ちの制服やドレスやらのバストやらウエストやらが軒並みきつ~くなちゃってぇ、ご友人達に愚痴をこぼしてたみたいなんです。放課後デートにお出かけした際、ファーガス先輩本人から直接『丸くなった?』って言われたみたいで。今朝からダイエット始めるって言って、学園の外周を走りこんでるところなんですよぉ。お好きなデザート・・・、せっかく取り寄せた五番路のパイシューもお預けだそうですよぉ。わざわざ、マルガリータさんが朝1番で買いに並んでいらしたのに、もったいないですぅ。実は余分に購入して、ご実家の侍女仲間にも差し入れされたそうで。すっごく美味しいってジェリーさんが感動してました。実は、数が足りなくて、侍女達の中で朝イチじゃんけん大会が行われたんですぅ。アイコが52回も続く、連続アイコの新記録樹立だったんですが、食べれなかった1人は、すっごくかわいそうだと思いませんか? そのふ」

「それは! 本当に、お気の毒ね」


サリーさんは本当に優秀な方です。

話を途中でさえぎられて、唇をとがらせて拗ねた様子をみせますが、どんなに可愛く見せようとしても本当に優秀な女性です。

優秀な方なのですが、このお話好きはどうにかならないものでしょうか。しかも、サリーさんの言うところの"今朝"は本当に今日の朝のことなのです。いったいどこから情報を仕入れているのでしょうか、正直恐ろしいです。

彼女のお話が正しい証拠に、件のローザ様がお取り巻きと一緒に息を切らせて在ランニング中です。

それにしても、ファーガス先輩が、"浮気"ですか。


「ファーガス先輩はローザ様の何が気に入らないのかしら?」

「え~っとですね。なんでもローザ先輩の髪が、昔はきれ~いな目も眩むほどのプラチナブロンドだったそうなんです。でもぉ、成長するにしたがって、どんどん色が濃くなってきて、今はほとんど茶色じゃないですか? それが嫌みたいなんですよぉ~。人の価値って外見じゃないと思いませんか。それを知って、ファーガス先輩へのあこがれが軽蔑になる女生徒達多いんですよぉ。実際に芸術系クラスの先輩方にリークしたときは、すっごいブーイングでした。え~っと、ファーガス先輩の好みって、信じられないくらいほそ~い人じゃないですか? ローザ先輩は、婚約者に決まってから必死で体重コントロールされていて、その苦労をご存知の方々も多くいたから、なおさら反応がすごかったんです。週一回の楽しみが、たった1杯のゼリーだなんて悲しすぎます。そんな苦労を重ねて、日々努力されていたのに、髪の色だけで他の女性に魅かれるなんてって、もう、すっごい悲劇的じゃないですか? 文科系の先輩方に五割マシマシでローザ先輩をおそった悲劇について吹き込んでおきました」


その話が本当なら、わたくしだって怒りますわ。加えてやけ食いもするでしょう。

身内びいきですが、婚約者の顔をたててランニングを行っているローザ様は本当にできた女性だと思います。

わたくしが男性なら、ぜひともお嫁さんに欲しいと思いますわ。

・・・ローザ様は従姉妹なので、お嫁さんはムリなのですが。わたくしのお姉さまと同い年でいらっしゃるので、小さい頃はよく遊んでいただきました。

わたくしに価値のある薬草類をおしえてくださったのも、ローザ様でしたっけ。・・・ローザ様、ご存知でしょうか、蝉は厳選しなくてはお金になりませんでした。

残念なことに、ご婚約者様が決まってからは、淑女教育に忙しく、お会いすることはなくなってしまったのですが・・・あら? 従姉妹(ローザ)様の婚約者って・・・あら? あれ? ではファーガス先輩って、もしかして。



「あ、おはよ~。二人とも。今日も早いんだね」

声をかけてきたのはセシリアさんでした。なんというタイミングでしょうか。嫌な予感がして、彼女の髪を見ます。

彼女の大きくふんわりとカールした白金の髪が、朝日に照らされて明るく輝きます。柔らかな髪はボリュームがあり、彼女の背中を緩やかにうねって流れて落ちていて。

象牙色の柔肌、といっていいような若く瑞々しい肌、透き通るような澄んだ青い瞳。


「・・・妖精姫・・・?」

「さすが、メレディス様はご慧眼です。そのと~り。ファーガス先輩の妖精姫は、この、セシリア・エヴァンスさんなんですぅ」

「そうね、だって、(ヒロイン以外には)金髪はいないものね・・・」

「でも大丈夫ですよぉ。再会イベントは()じゃあありませんからぁ」

「そう。なら安心ね。・・・ん? サリーさん、今なんておしゃって?」

「え~? 何言いましたっけ? え~っと。新入生には、金髪多いですもんね。ファーガス先輩が"妖精姫"を見つけられないのも仕方ないかな、って思いますよぅ。セシリアちゃんは白金って感じですけど、もっと金!って色の金髪もいますしぃ、ファーガス先輩にとってはすっごく目移りする年なんじゃないでしょ~か」

「ねぇ、ねぇ~。なんの話してるの?」

「おっはよ~。なになに、3人で内緒話ですか。まぜてまぜて~」

「おはようございます。あら、皆さんで内緒話ですの? まぁ、私は関係ありませんけど、私達をのけ者にするのは感じ悪くありません? いえ、私はそうは思いませんが、一般論としてです」


お嬢キャラではなく・・・まさかのツンキャラでしたか。


「なになになになに。ん~、漂うラブのニホヒ。さてはコイバナしてたでしょう!」

「まっ。恋愛話ですって。その、私達は勉強をしに来ているはずでしょう。恋愛に現を抜かすなんて、そんな。私達にはまだ早いと思いませんの。いえ、その、一般論としてですわ。私は、恋愛(そんなの)、興味ありませんけどね」


お嬢さん・・・真っ赤になって言っても、こちらがリアクションに困ってしまいますわ。

すぐ横のセシリアさんも、生暖かい目をしているではありませんか。

でも、ミドリさん(シルヴィア)はどうして"恋愛話"なんて持ち出したのでしょうか?


「きゃ~わかっちゃったの。お嬢さん(ヴィア)には好きな人がいるのね!」

「そう、そのとお~り。セシリアちゃん、正解!」

「あ、な、ちょっと。何を言い出すの」


今のお嬢さん(ヴィア)の反応は、間違いありません。

それにしても、サリーさんはともかく、セシリアさんより鈍いのでしょうか、わたくし。

でも・・・13才で恋愛云々って、お嬢さん(ヴィア)じゃないけど、早熟すぎませんか?

家の紹介ではなく、自主的行動ですわよね。


「ヴィアちゃんの憧れの男性は、騎士クラスの3才年上のオーランド先輩でっす。好きな食べ物は肉がっつり赤肉。好きな動物はトラ、憧れの人は騎士団副長。幼い頃にその副長に剣の腕をみこまれて、孤児から養子になった過去がありま~す。好きな動物がトラなのも、副長の二つ名が"白虎"だからですねぇ。好きな異性は副長の奥方。初めてやさしくしてくれた大人の女性らしいですよ~。騎士クラス内での人気は可もなく不可もなくですね。実技は得意でも座学、儀礼関係がにがてみたいで、成績としては中の上くらいです。いや~、騎士クラスは実技の配分が大きいので、中の上におられますが、配分次第では中の下にもなりかねない、危険水域に片足をつっこんでいますぅ。特に、文武両道を良しとするファーガス先輩とは馬が合わず、こ・・・もご」

「はい、ちょーっとストーップね」

「なるほど。そのオーランド先輩という方が、お嬢さん(ヴィア)の片思いの相手なのね」

「あ、な。ち、ちょっと・・・その、あの」

「ん~? 詳しく知ってたみたいだけど、なになに。有名人なの??」


サリーのおしゃべりは、セシリアさんによって物理的に止められました。

すでにお嬢さん(ヴィア)は耳まで真っ赤になって震えています。


「ぷはぁ。ちなみにヴィアちゃんと会ったのは、入園式当日のことですぅ。人いきれに倒れてしまったヴィアちゃんを抱え上げ、保健室まで運んでくれた騎士(候補)様こそがオーランド様で、そのときヴィ・・・むぐ」

「あら、すてき」

「きゃ~ん。オーランド様カッコイイ~」

「うわ、なになにそれなに。乙女の理想の王子様じゃないですか! やだ。もっと早く教えてくれたら良かったのに!」

「だっ、誰が! その、先輩のかっこいいところを広めるものですか!」

「や~ん。女子トークしようよ~」

「告白! 告白! ねえねえ、コ・ク・ハ・クしないの?」

「そ。な、あ、ちょ・・・うぐ。む、り」

「・・・ふぅ。ちなみにお嬢さん(ヴィア)が毎日しっかりおしゃれしているのは、オーランド先輩と毎・朝! な・ぜ・か!顔を合わせるからでぅ・・・きゅう」

「! ちょっとはだまりなさい!」


セシリアさんとお嬢さん(ヴィア)のあわせ技でサリーさんが止められました。

女性って、ときどきえげつないですわよね。

ミドリさん(シルヴィア)も、手こそ出していませんが、興味深そうに話に参加しています。


「ね、ね、ね、ね。で? かっこいいの? かっこいいの?」

「ふっ。もちろんですわ。そう、オーランド様ほどかっこよい男性はいらっしゃいません!」


あ、お嬢さん(ヴィア)が開き直ったようです。オーランド先輩のかっこよさについて、語り始めました。軽く自分の世界に入っているようです。

ですが、ここは天下の往来しかも寮から校内への廊下なのですが、そのままにしてよいものでしょうか?

そのうちにご当人が通りかかるのではと、気が気ではありません。

ちらちらと先輩方の視線を感じます。ただ、こちらではなく、ちょっと離れたところにも注目されている男性がいらっしゃるようですが・・・どなたでしょうか。


「ええ、その時のオーランド様のすばらしさは、私には表現しきれません。あの方は無作法にも倒れてしまった私を、優しく抱えてくださったのです。その、たくましい胸に抱かれ、私は、私は、その時間がずっと続けばと!」

「あ、オーランド先輩。おはようございま~す」

「」

「おはようございます、先輩」

「え、え、えええ、? 本人!? お、おはようございます」

「おはようございますぅ。サリーがオーランド先輩のご紹介をする前から、ちょっと離れて様子をうかがわれてましたよね~。より詳細にはお嬢さん(ヴィア)が合流してすぐからでしょ~か。きゃ~あぁあぁん。おアツイことで、サリー感激ですぅ」


あ、お嬢さん(ヴィア)がエラーストップしました。

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