骨董屋
皆さんは幽霊やUMAを信じますか?。
所謂、オカルトってやつだ。自分は信じていなかった。
人生ってやつはそんな夢物語は通用しないからだと思っていた。こんな高校一年の子供が人生を語って申し訳ない。自分の名前は木村大治。大を治めるで大治だ。なんとも名前負けしているだろう。友達と呼べる友達もいない。恋愛経験もない。
「バラ色の青春」とは全くふざけた言葉だ。でも、そんなに気にしちゃいない。とあるラノベでの主人公は「友達をつくると人間強度が落ちる」と言うなんとも哲学的で素晴らしい言葉だと作者様を崇める今日この頃である。
さて、話の本題に移ろう。自分は先程も言ったとおりオカルトは信じない人間だった。過去系だ。高校一年の一学期、桜舞い散る春に自分は、自らの人生を180度変えしまうある男に出会うことになる。
それは本当に偶然。いや、必然だったのかもしれない。長くなるし、つまらない話かもしれない。でも聞いてくれますよね?皆さん。
高校一年の一学期も中盤に差し掛かろうとする頃。相変わらずのぼっちライフを送り、必要な時に人と話す程度だ。まぁ一人のほうが落ち着くし、趣味である読書なんかも中々はかどるというものだ。しかも、窓際の一番後ろの席という最高のポイントだ。
「ねぇ?」と右隣で声がする。
読者の妨げをされ、少し不機嫌そうに右隣をみると黒髪ロングの美人の女子、俺の学校での癒し、峯麗しい越後坂理子様ではありませんか。
男とは全くどう仕様もない生き物だな。と心の底でつぶやき
「どうしたの?」
と眉間に少し力を入れ顔を整える。
「大した用事じゃないよ。今日、大治くん掃除当番だって伝えに来たの。」とニコリと理子さんは微笑む。
なんと、天使の微笑みに悪魔の囁きが一度にくることがあるだろうか。大きな期待を込めて
「理子ちゃんも掃除当番?」と聞いてみた。
うんと綺麗に頷き、理子さんは
「よろしくね!」
と握手の手を出してきた。おいおい、自分にも遂にリア充のフラグが!?と武者震いして、その綺麗で繊細な手と握手した。授業開始のチャイムが鳴り、
「また、放課後ね!」と理子さんは手を振り、彼女の席に戻った。
あゝ神様、本当に一瞬の幸せをありがとう。と皮肉を込め、心の中で呟いた。
放課後、教室掃除を理子さんと自分でしていた。そこで、屈んでちり取りと箒を使いながら器用にゴミを取る理子さんを眺めた。
心ではパンツが見えそうという下心で眺めていた。お恥ずかしい話だ。ふと気がついた。理子さんのちり取りを持つ左手に包帯が巻いてある。
細かく言えば手のひらに。「左手どうしたの?大丈夫?」と気を使い聞くと理子さんは「大丈夫大丈夫!大したものじゃないから!」と微笑んだ。自分は適当な相槌をうつ。「ゴミ捨て行って、終わりだね」と一息吐きながら理子さんは言った。掃除も終わり二人で帰ることになった。神様本当にありがとうと空を拝んだ。
取り留めのない会話が続くあのTVが面白いとか芸人が好きとかあのアーティストのライブがあるとか。
自分って意外に喋れるなと改めて実感する。どこに住んでるの?と自分は自然に切り出した。
H町だよと理子さん。電車で通ってるんだと返す。自然に。大丈夫。自然なはずだ。大治くんは?と質問返し。
自分はマンションを借り一人暮らしをしている。そう遠くはない。歩いて二十分くらいだ。
はやく家から出たい一心から猛勉強し、いや、そこまででもないか。とりあえず、この南高に合格して今に至るわけである。このことを話すと「骨董屋って駄菓子屋知ってる?」と理子さんは聞いてくる。
ちょっと怖い顔をして。「知らないなー。どこらへんにあるの?」と聞くと詳しく教えてくれた。喫茶店や花屋やスーパーなどが立ち並ぶ小さな商店街がこの街にはある。そこの隅っこの方にその店はあるのだという。
「そこがどうかしたの?」
と聞くと
「出るんだって!!」と急におっきな声をだす。びっくりさせる気だったのだろう。そこまで動じなかった自分ははははと笑った。
「あー!信じてないでしょ!?」
とちょっと不機嫌そうに理子さんはいう。まあねと返した。
「なら行ってみなよ!」
と言われ、ノリでわかったと答えてしまった。まぁ美人との約束を無げにするわけにもいかない。全く、男子とは滑稽である。駅まで理子さんを送り、買い物がてらに商店街にいくことにした。スーパーで買い物をして喫茶店メリッサを抜け、美容室、コインランドリー、花屋などを通りすぎ。
「あった!」
ペンキで看板にでかでかと骨董屋と書かれ小さな縦看板には質屋と書いてあり、その端っこに駄菓子有りますと書いてある。
何より、ボロい。これは出るとか言われても仕方ない。なんてことを考えつつ店内に入る。かび臭いし薄暗い店内。真っ直ぐ奥にレジがあった。テレビが置かれ、小さな机があり灰皿に吸殻が山積み、また、その奥にはお湯の湧いたやかんと湯呑がある。そして、座布団には予想外の人間が座っていた。頑固そうな老人を期待していたが
。無性ヒゲを生やし、長い髪を後ろでまとめ、甚平を着てタバコをふかしていた。しかも若い。まだ20代後半くらいだ。その人はやる気のない声で
「いらっしゃーい」
と片手をあげ、テレビに釘付けだ。しかし、何から何まで変わった店だ。洋物のアンティークのティーカップから日本の工芸品、はたまたレアな文庫本や漫画、洋書まで揃っている。すると店主であろう男が喋った。
「何買いにきたんだい?」
えらくイケボである。いいえ、お構いなくと流したが文庫本が少し気になっていた。いろいろなものがある。夏目漱石などもありその値段はなんと100万越である。それをふつうに触れてしまって、まずいのではないかと考えていると肩にぽんと手を置かれた。気がした。おもわず、うわっと飛び上がってしまった。しかし、後ろには誰もおらず、店主は相変わらずレジでタバコをふかしている。
「本当に出たよ。まじかよ。いや、気のせいだろ。」
と言い聞かせ、懐かしの駄菓子を1つ買う。
「はーい、毎度ありー」
とやる気のない声で接客をされ、また店主はタバコをふかす。こんなところ早く立ち去ろうと足早に出入口に向かうと何かに足が引っかかり、そのまま転び、古そうな壺を手で押し付け床に落とし大破。一瞬の沈黙。自分は走って逃げ出した。後ろから店主らしき怒号が聞こえるが無視。あんな気味の悪い店もう二度と行かないと心に誓い、帰路を走り抜けた。
「ったく……最近のガキはようー。でも、勝手に戻ってくるさ。きっとね。」