3、目の前の殺戮は見過ごせません!
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こんな短い話しかかけませんが、野球と掛け持ちして頑張って行きます!
顔にドーランを塗りたくって、双眼鏡を覗く自衛隊員。その先には、もうもうと黒い煙を上げる村があった。
「隊長、どうやら魔王軍によるやりたい放題加減が理解できなくなりました」
「うん、俺もそう思う。幾ら何でもやり過ぎだろ?」
不知火と栗良の目線の先は、村の広場に散乱する死体の山だった。まだそこは村の中心部ではないのか、魔物の数も少なかった。
「とりあえず作戦会議に入ろう」
草むらから抜け出した2人が向かう先には、自衛隊偵察部隊が姿を隠す林がある。そこでは、衛生隊員の三ツ矢がエルフ少女の外傷の手当てをしている真っ最中だった。内臓器官や脳などは、賢者の回復魔法によって元どおりになっていた。
「ティアさん、調子はどうですか?」
「皆さんのおかげで、幾分良くなりました。感謝しております」
「それは良かった、賢者もありがとうな」
「どうってことありませんよ」
魔王軍に襲われているカハール村から、命からがら逃げてきたエルフのティア=デア=マラソーは、村を奪還するため、自衛隊に協力することにした。
「総員集合!これより作戦会議を始める!」
自衛隊員8名+勇者一行4名+エルフ1名からなる13名の奪還部隊は、不知火の作戦内容に耳を傾ける。
「みんなも知っていると思うが、カハール村を襲っている連中は、昨夜俺たちのことを襲ってきた魔物の本隊と考えてもおかしくない。よって、最低戦力で見積もっても、ゴブリン50体と戦う覚悟を持っておいた方がいい」
「ご、50でありますか…?」
「あぁ、それとティアさんから聞いた話では、村の中心部にある冒険者ギルドに生き残った村人全員が立て籠もっているらしい!」
「その通りです」
「作戦はこうだ!まず我々が車両の機動性を駆使して陽動作戦を行う、そして、勇者以下3名は、ティアさんにギルドの位置まで案内してもらい、防衛戦に参加する。我々がある程度敵を片付けたところで、大反撃を開始、村から魔物を一掃する!」
「「「うぉお!意義なぁあし!」」」
「ではカハール村奪還作戦を開始する!」
隊員達は車両に搭乗する。本拠地に移動の命令を出した不知火は、軽機の助手席から89式を突き出し、先陣を切って村に突撃していった。
「撃てっ!撃てっ!」
「隊長!十時方向の家屋の裏にトロールを発見!」
軽機からM2重機関銃や89式を射撃しながら爆走していると、家屋の裏に大きな魔物がいるのを確認できた。緑の剛毛で覆われた巨体を持つトロールは、自衛隊の姿を見ると、雄叫びをあげて走ってきた。
「キャリバーを食らわせろ!」
「りょ、了解!」
部下にM2重機関銃を撃つように指示する。軽快な音を立てて発射される12,7mmNATO弾だが、トロールの厚い皮膚に阻まれ、貫通には至らない。
「隊長!全然効きません!」
「構うな!当て続けろ!」
しかし、幾ら弾を叩き込んでも、トロールはビクともしない。
「こちら香取、ライトアーマーは退避せよ。主砲の連射いくぞ」
「マジか!?」
栗良はハンドルを巧みに動かし、トロールの左下に滑り込ませる。トロールが軽機に振り向こうとした瞬間、路地から出て来たFVが、機関砲を連射し、トロールの体をメタメタにしていった。
「……うわ、これ夢にでるわ」
不知火達の目の前にあるのは、緑色のミンチ肉になったトロールの死体だった。不知火達は、喉の奥からこみ上げてくる異物を押しとどめ、他に何かいないか捜索を開始した。
「ん?」
「どうしました?」
「今そこで何か動かなかったか?」
「自分は見えませんでしたが」
「止めてくれ、少し見てくる」
不知火は軽機の助手席から降りると、村の家屋に入って行く。89式に付けたハンドライトを照らして、地下室に入って行く。
「悪魔!」
「のわっ!?」
赤い髪をした少女が飛び出し、念力かよくわからない力で不知火を吹き飛ばす。
「待て!おじさんは味方だ!君を助けに来たんだ!」
「……本当?」
「本当だとも!外には仲間がいっぱいいる!勇者さん達もいる」
「分かった」
不知火は少女を抱っこすると、急ぎ足で軽機に戻る。栗良が唖然とする中、通信担当の隊員から無線が渡される。
「隊長、強襲班からの通達です。ギルドの確保に成功。我々と合流し、掃討作戦に入るとの事です」
「よし、とりあえず一度合流だ。FVに連絡!ギルドに向かうぞ!」
軽機とFVは、道中にいる魔物を排除しながら、村の中央にあるギルドへと向かう。