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2、これからどうする?

栗良「隊長、弾薬はどうするんですか?」


不知火「筆者に任せろ。」


筆者「えっ!?な、何のことですかな?」


栗&不「弾薬なかったらただのコスプレ軍団じゃねぇか!」

「そうか、あんたらは異世界から来たのか」


村の中央の広場で偵察部隊と勇者一行が話し始める。避難していた村人も、異世界の軍隊に興味があるのか、続々と集まってきた。小さい子供達には、若い隊員たちからお菓子が提供された。まるで終戦後の進駐軍になったようだと1人がぼやいた。


「あぁ、気がついたら俺たちを含め60名がこの世界に飛ばされていた」


「災難だったな、元の世界に戻るあてもないんだろ?」


「あぁ」


「俺たちにできることがあれば、何だってしてやれるんだが」


ため息をつく勇者の傍ら、杖を持った僧侶服の賢者がFVを眺める。


「それにしても、変な乗り物ですね。鉄の馬車なんて初めて見ますよ」


賢者は89式装甲戦闘車に興味心身だった。キャタピラをじっと見つめたり、主砲を触ってみたり。


「この鉄の棒は何でしょうか?」


「こいつは機関砲って言ってな、この筒からこれくらいの鉛の弾を撃ち出す兵器だよ」


「鉛……ですか?」


「百聞は一見に如かずってか。おーい香取、FVの主砲の威力見せてやれよ」


不知火はFVを整備していた長身の自衛隊員に声を掛ける。


「いいっすけど、壊していいものあるんすか?」


2人が唸っていると、麻の着物を着た村人が近づいてくる。


「それなら、あそこの砂山だったらいいよ」


「ご協力感謝する」


香取はFVのハッチから乗り込み。村人に教えられた砂山に向けて、35mm機関砲の主砲を向ける。


「弾薬無駄にできないから単射で」


「ラージャ」


耳を貫くような轟音とともに、主砲から放たれた弾が砂山を吹き飛ばす。驚愕する村人達、唖然とする勇者達。


「この辺りで俺たちを拾ってくれそうな国家ある?」


「あ、あんたらならどこの国も欲しそうだけど……」


「そ、それならイサラギ王国なんて良くない?いい領主に平和な国、ここから西へ5km行ったらカハール村があるの。さらにそこから2km行ったらイサラギ王国の王都があるの。何たって、私たちの旅の出発地点だしね」


「私たちもこの勇者バカの忘れ物取りに行くの」


そう言って勇者バカを殴る騎士。


「それなら一緒に連れて行ってやろう」


「いいのか?」


「遠慮するな。こいつに乗れば明日の朝には付くぞ。そういうことで栗良、エスコートよろしく」


「また、車両移動か……ケツ痛いよホント」


「とりあえずカハール村に向かうか、全員搭乗!」


不知火の号令で、隊員たちは車両に搭乗して行く。不知火がイサラギ王国の王都についた後の勇者たちのこれからを聞くと、魔王を倒すために北へ旅に出るらしい。ご苦労なこったと声を揃えて労う自衛隊員。


「目標カハール村、移動開始」


こうして自衛隊は異世界で勇者一行に出会った。ちなみに勇者一行の4人は、73式大型トラックに乗り込み、しばらくすると夢の世界へ旅立った。



しばらく山道を走っていると、空が暗くなり、満月が出てきた。軽機の窓から外を見る栗良は、ため息をつく。


「隊長、そろそろ夜です」


「あちゃー、ホントだ。どうする?」


「少し休憩を取りましょう。道無き道を走行するので、結構みんな疲れてますよ」


「よし、全車停止、ここで休憩を取る。交代で見張りを立てておけ」


「ラジャ」


その夜、不知火達が睡眠をとっている空き地に近づく影があった。それらの目は赤く輝き、手には棍棒や斧が握られていた。


数時間後、軽機の窓がバンバン叩かれる。


「隊長!隊長!」


「何事だ!?」


不知火は突然放たれた銃声と声で飛び起きる。


「敵襲!見張りが正体不明の敵と交戦中です!」


「敵は何だ!?」


「ゴブリンです!」


「総員起こし!各自自由に応戦せよ!いいか!?誰も死ぬんじゃないぞ!」


あちこちから機関銃や小銃の発砲音が響いてくる。不知火も軽機から飛び出し、RPGに出てくる緑の怪物、ゴブリンに銃身を向ける。


「くたばれ化け物め!」


躊躇なく引き金を引き、ゴブリンの醜い体に連射で5.56mmNATO弾を叩き込む。ゴブリンは甲高い悲鳴をあげて紫色の鮮血を撒き散らし、地面に倒れる。


「弾切れだ!弾倉交換リロードする!」


「ピキャッ!」


「くそこいつ!いつの間に!?」


89式に弾倉を装填する不知火の右側から、棍棒に鋭利な刃物を取り付けたゴブリンが、間近で殴りつけてきた。不知火は覚悟を決めて目を閉じたが、いつまで経っても痛みという感情はやってこなかった。


「大丈夫かジエータイ!」


「ゆ、勇者!」


装飾が施された両手剣を持った勇者が、不知火に攻撃しようとしていたゴブリンを、凄まじいスピードで横薙ぎした。ゴブリンは胴体が真ん中で真っ二つに切れ、息絶えた。


「今の今まで寝ていて悪かった!ここは魔物が多く出る山路だって伝えるのを忘れていた」


「助かった!本職さんがいれば百人力だ!」


「私たちも忘れないでよね!」


トラックの荷台から、残り3人が飛び出してきて、魔法やら騎士道精神爆発剣技とか山賊切りとかで、自衛隊を苦戦させていたゴブリンを文字通り捻り潰した。


「周囲に敵影なし!」


「よし!誰か遺体を確認チェックして来い!」


栗良と部下が、夜道に倒れたゴブリンの遺体を足で動かし、生きていないかチェックする。


異常無クリアし!隊長見てください、こいつら面白いもん付いてますよ」


「これは紋章か?」


黒色の盾を模した紋章が、ゴブリン達の装備に描かれていた。


「ジエータイ、どうやらこいつらは魔王軍のようだ」


「これがか?」


「やっぱり情報は確かだったんだ」


「どういうことだ?詳しく話してくれ」


「俺たちが旅に出た後、魔王の配下である黒魔術師が、各地の魔物に呪いをかけたんだ。魔王の忠実なる僕にするためにね」


「それが、行動を活発化させているんだな?」


「そ……そうよ」


初めて聞く声に反応した一同は、銃や剣を声の主に向ける。そこには、ボロボロの服を着た耳長の少女が、血だらけになった傷口を抑えながら立っていた。


「私はカハール村に身を寄せているエルフです。どうか私たちの村をお救い下さい」


少女は、不知火達の前で額を地面に付けるのであった。

次回は村を奪還!…の予定です。

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