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1、テンプレ過ぎる勇者御一行様

急遽、仮本拠地として張った広場の天幕には不知火と部下達が机を囲んで座っていた。


「まぁ、グタグタしてても何も進まないし、いっちょ偵察にも行ってみませんか?」


「あ、俺もそれ賛成サンセー


「だよな、このままじゃ飯なくなって、喉乾きまくって仏さんに一直線だな」


「臨時で偵察部隊を編成しましょう。バイク2台、軽装甲機動車ライトアーマー1両、89式装甲戦闘車ライトタイガー1両でいいでしょう」


「トラックも1両追加」


「要員は俺を含めて8名でいい、それ以外は周辺の監視と水場の確保だ」


こうして自衛隊は偵察部隊を派遣することになった。


「それにしても隊長、異世界ってどんな感じですか?」


「いきなりなんだ栗良、何を期待してるんだ?ちなみに俺は手のひらサイズの妖精ちゃんや喋る木を期待してる」


「自分はですね隊長、エルフ狙ってんすよ」


「あぁね。エルフって美形ばっかだったな。でも絶賛年上だぞ?年齢的にいったらお前は極度の熟女好きだな」


「夢を壊すこと言わないで下さいよ」


軽装甲機動車の運転席で栗良がダレる。そんな彼を見て助手席でケラケラ笑う不知火。すると、前方の偵察バイクから無線が入った。転移位置から移動して50分後の事だった。


「たーいちょ、前方の開けたところに村があるのが確認できますが……いかがなさいます?」


「うんとね、村人刺激しちゃだめだから、とりあえず遠めからの偵察だな。左の森で停止」


「アイサー」


偵察隊は村から300m離れた森に車両を停止させ、双眼鏡を覗いて村を偵察する。


「人っ子一人いませんね」


「留守かな?昼休みにしては早すぎるし……よし、栗良ついてこい。残りはここで待機、周囲を警戒して可能な限り車内から出るな。もし俺たちに何かあったら真っ先にFVで突撃してこい」


「ラジャ!」


不知火と栗良は88式鉄帽テッパチを被り直すと、89式5.56mm小銃を目元で構えながら、少しずつ背中合わせで村に入って行く。


「すみませーん、誰かいませんか〜?」


「誰かいたら返事してくださーい!」


「まーるでゴーストタウンだな。神隠しにでもあったのか?」


2人は近くにあった家屋のドアにへばりつく、アイコンタクトと手信号で合図し合い、息を合わせて突入した。


「自衛隊だ!動くな……って誰もいねーし」


「隊長、飯が置かれたまんまですよ?食いかけっていうか何というか、今から昼飯だったらしいですね」


2人が突入した部屋には、四人分の昼ごはんが並べられており、スープなどは湯気が立った状態だった。


「なんかやな予感がしますね」


「お前もそう思ったか?俺も同感だ」


「このシュチュエーション、どっかで見たことありますね……ゾンビとか」


「あのな、ゾンビなんて現実世界じゃ可愛いもんだ。犬なんか出て来てみろ、軍用犬なんて俺たちじゃ瞬殺される。ゾンビ化してたらなおさらひでぇ」


「やつらじゃないことを祈りますか」


「あぁ……」


89式を構えながら外に出ると、不意に空気が切り裂くような音がした。反射的に2人が左右に飛び退くと、先ほどまで2人がいた場所が地面ごとスッパリ切れた。


「あぶねっ!?」


「栗良!敵!11時方向!気をつけろ!こいつ想像以上に素早いぞ!着剣して近接戦闘に備えろ!」


「了解!着剣!」


2人は89式小銃に銃剣を付けると、トリッキーな動きで村の屋根を飛び回る目標に狙いを定めた。そして単射で3発撃ち込む。


「かすった!」


「なんて野郎だ!銃弾を避けてやがる!」


すると、地面に降り立ったそれが、腰元に剣を構えながら突撃してきた。不知火はとっさに89式を横に持ち替え、上段から振り下ろされた剣を受け止める。


「こなくそが!」


金属がぶつかり合う音がして、小銃の側面に剣が弾かれる。すかさず不知火は小銃を持ち替え、打撃をしようとするが、剣に弾かれ小銃を手放してしまう。しかし、不知火のほうも、サイドアームであるH&K社製USP拳銃を引き抜き、襲撃者の剣を捉え、銃弾で手から弾き飛ばした。


「これで五分五分だこんにゃろ!」


またしても殴りかかってきた襲撃者に対して、徒手格闘で応戦する不知火。たが、根本的に身体能力が違いすぎているため、なかなか決定打が取れないどころか。確実に不知火の方が追い詰められていた。栗良は、襲撃者に銃を向けるが、2人の戦いが凄まじいため、援護できない状態だった。


そのうち、不知火の右ストレートが襲撃者にかわされ、懐への侵入を許してしまう。予想通り、襲撃者はアッパーを不知火の顎に叩き込み、不知火は後方の屋根に吹っ飛ぶ。


「隊長!?」


「はぁ、はぁ、魔王軍め、手こずらせやがって」


「魔王軍?お前、今、魔王軍って言ったか?」


襲撃者に質問を投げかける栗良、襲撃者は「今更何を?」と言って栗良に近づく。


「勇者!あんた何やってるの!」


その途中、勇者はいきなり現れた金髪の騎士に後頭部をぶん殴られる。雑魚キャラ顔負けの鈍い悲鳴を出した勇者と呼ばれた襲撃者は、頭の半分を地面に埋め込まれる。


「うぬぅ……ぷはぁ!何すんだよ騎士!」


「あんたねぇ!この人たちが魔王軍とか言って調子乗ってやりあったけど、この人たち、魔王軍の紋章すらありはしないじゃない!」


「ほ、本当か?でも服装が魔王軍っぽいし」


「うん、俺たち魔王軍じゃないもん。それは本気ガチで。それと、この服は俺たちの正式な戦闘服だから以後お見知り置きを」


「じゃあ、あんたらは誰だ?」


「俺たちは日本国、陸上自衛隊だ」


「ニホン?リクジョージエータイ?」


「ようするに、日本って国の軍隊だよ」


「軍隊なのか……って、そういえば!あいつをほったらかしたまんまだ!」


3人の後方、家屋の壁に打ち付けられてうめき声を上げる不知火の姿があった。すると、青っぽい神官服を着た女性が、不知火に近づいて行く。


「あの……大丈夫ですか?」


「いんや、大丈夫じゃねーわ」


「あばらが折れてますね。もう、長くないでしょう」


「……そうか、今思えば、悔いが残る人生だったな。田舎のおばあちゃん、元気かな?」


「隊長!しっかりしてください!」


「瞼を閉じるとそこにおばあちゃんが……」


「たいちょぉお!?」


「長くもたない……ただしそれは、このまま放っておいたらです」


「はえっ?どゆこと?」


「私が治癒魔法で治します」


「ち、治癒魔法だって!?」


「☆○$◇¥★!」


女賢者が呪文を詠唱すると、不知火の周りに緑色の湯気が立ち、キュピンという音がすると、何事もなかったかの様に不知火が立ち上がる。


「信じられない……治った?」


「ま、まさか、あばらを魔法で治したのか!?」


「えぇまぁ」


「おーいみんなー。やっぱ、どこにも魔王軍はいねぇぜ!村人避難させて失敗だな。」


「彼女は女戦士です」


「勇者、賢者、騎士、戦士ときたら……あなたたちもしかして?」


「はい、勇者一行でございます」


「「定番きたぁぁあ!」」

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