96.
石村は浮かない表情で、ブラックの缶コーヒーを須田に放り投げた。
「どいつもこいつも、仕事ってのがわかってんのかね」
須田は缶コーヒーを受け取って、一口飲んでから顔を上げた。
「そもそも仕事として関わってない人間のほうが多いな」
「そうかもしれないけどな。どいつもこいつも好き勝手にやってるようにしか見えないんだよ」
「それをどうにかしようとしてるんだろ」
「ああ、そうだ。でもな、現実には俺は派手に動くことはできない。つまり仕事になってないわけだ」
「私的なスタントプレイだな」
「不本意ながらな」石村は缶コーヒーを飲んで顔をしかめた。「それをどうにかすれば、得する奴だって多いはずだろ」
「損する人間のほうが多いんだろ」
須田は軽く言ったが、石村は暗い表情になった。
「ああ、そうなんだろうな。うんざりするぜ、まったく。こんなことで手をだせないなんてイライラする」
「それはわかるが、先走るのはやめてくれよ。せっかくここまで出てきてくれてるんだから、今公的な連中がでしゃばるのはまずい。引きずり出すまで、もう少し待つ必要があるだろうな」
「わかってる、わかってるよ。お前の言う通りだ。だからさっさとこっちが動けるようにしてくれ」石村は壁の時計を見た。「こんな時間だ、そろそろ絵だって完成してるだろ」
「それだけで、解決までは行かないだろうな」
「それでも、近づきはするだろ。いいから働けよ」
「そうだな」
須田はコーヒーを飲み干して、空き缶を石村に手渡した。立ち上がってドアノブを握ってから振り返った。
「鍵は三島だ。何者か調べなきゃならない」




