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94.

 須田は再び警察署に戻っていた。そろそろ山中の絵が完成していてもよさそうだった。応接室に入ると、石村と山中の姿はなく、三島と清水だけがいた。

「例の絵はもう完成しましたか」

 須田がそう声をかけると、三島は須田に顔を向けた。すっきりしたような笑顔だった。

「はい、これから仕上げだそうです。別室で仕上げると言ってましたけど」

「そうですか。私はちょっと様子を見て来ますので、すみませんが、三島さんと清水さんはもう少し待っていてください」

「わかりました」

 須田はその一言を聞いて部屋から出て行こうとした。

「須田さん、今は待つのが苦痛じゃないんです。だから、大丈夫です」

 三島の言葉に、須田は振り返ってうなずいてから部屋を出た。三島ほど明るい展望を持っていない須田は、自然と早足になっていた。

 山中は予想通り資料室にいた。本来は資料を閲覧するための机を占領して作業をしていた。須田が口を開く前に、山中は振り返った。

「もうすぐ完成です。なかなかいい絵になりそうですよ」

「そうか。まあ、さっきの状態でも役に立ったよ。どこの倉庫かは特定できた」

「そうですか。三島さんでしたっけ? 彼女はすごいですね。ここまで描かせてくれるなんて、ホントうれしいですよ」

「それは、こちらとしても助かる。まあ、満足のいくように仕上げてくれ」

 山中はにやりと笑った。

「さすがに須田さんはわかってますね」

 須田も軽く笑って、山中の肩を叩いてから資料室を出た。しかし、すぐに立ち止まると、何かを考え込むように正面の壁をじっと睨みつけた。

 芸術家肌の山中が満足できるほどの絵を描かせる三島という女は何者なのだろうか?

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