表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/140

8.

「私は、ある男と半年ほど前からつきあってたんです。最初はおかしいところは何もなかったし、うまくいってたんですけど、少し前から妙な感じがするようになったんです」

「何かあったんですか?」

「彼は私の家に来ると、何かを探しているような感じがしたんです。最初は気のせいだと思ってたんですけど、違いました。彼は確かに何かを探していました。それで、友達に相談したら、安田さんという人を紹介してくれたんです。しばらくの間は安田さんの言う通りにしていたんですけど、一昨日安田さんの所に行ったとき、机の上に私の名前といっしょに、ここの住所が書いてるメモが置いてあったんです」

「それで、ここにいらっしゃったんですか」

「なんというか、その、ここに来れば悪いことにはならないんじゃないかって、そう思ったんです」

 三島の言葉に、須田は軽くうなずいて、三島の目を覗き込んだ。

「なるほど。本当にそれだけですか?」

「いえ、実は」三島はバックから封筒を取り出した。「今朝こんな手紙が家にきていたんです」

 その封筒には、三島理恵様とボールペンで書かれているだけだった。切手は貼っていない。

「読んでもかまいませんか?」

「どうぞ」

 須田は封筒の中から、切り取られて三つに折られた大学ノートの切れ端を取り出した。広げてみると、あまりきれいとはいえない字で紙が埋めつくされていた。

 ざっと読んでみると、この手紙に書いてある重要なことは二つ。安田を信用するなということと、須田正人、つまりここを頼るようにということだった。須田は紙をたたんで封筒に戻して、三島に差し出した。

「不思議な手紙ですね」

「ええ。でも、なんとなく無視できないような気がしたんです」三島は封筒を受け取って、バックにしまった。「それで、もし、仕事として頼んだら、いくらくらいかかるんでしょうか?」

「残念ですが、今の状況では依頼をお受けしたとしても、何も出来ないと思います。それに、依頼を受けたとしても、あなたからではなく、その手紙の送り主から代金を受け取るべきだと思いますね」須田は少し身を乗り出した。「おそらくその男、あるいは女は、私の知っている人間でしょうからね。まあ、そういうことで納得していただけるのなら、この依頼、引き受けさせていただきます」

 三島は驚いた顔で、しばらく黙っていた。気を取り直すと、頭を下げた。

「じゃあ、よろしくお願いします」

「契約完了ですね。それでは、連絡先を教えていただけますか。それから、このことは口外しないようお願いします」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ