79.
須田は前田と連絡先を交換して別れた。後をつけることも考えたが、今更やることでもなかった。
それよりも問題が山積している場所に戻るために、電車に乗った。まだ電車は空いている時間だったが、須田は立ったまま頭を働かしていた。
まず街に戻ったら、吉田の事務所に戻るべきか、それとも三島と清水に会って話を聞くべきか。悩みながら電車を降りた須田だったが、電話がそれを解決してくれた。
「おい、今は平気か?」
石村からだった。
「大丈夫だ」
「お前の言ってた清水って男が来たんでな、まあその連絡なんだが。そっちはどうなってる?」
「今回の件の震源地の一つから話が聞けた。有益かどうかは、確認の必要がありそうだ」
「なるほど、こっちで預かってるお客さん2人か」
「そっちで何か聞き出せたか?」
「どの程度の話なのかは、お前の話とつき合わせてみないとわからんな。まあ、あの女は大したもんだよ、今回の件がなんとかなりそうな気がしてきたくらいだ」
「お前がそこまで言うとは珍しいな」
「まあ面白そうな話だからな。もうちょっと証拠をかためて上に持ってけば、大喜びで食いついてくるだろうよ」
「そうなると、こちらとしてはあまり嬉しくないな」
「こっちだってそれは嬉しかない。面倒な部分はお前のほうで先に処理しておいてもらいたいな。それで、どこからも文句が出ない部分だけこっちにまわしてくれよ」
「色々知ってそうな言いかただな」
「いや、知らないぜ。まあ、お前が熱心にやってることは、簡単じゃないことが多いからな。それに、今の状況で何もないと考えられるほうがどうかしてるだろうが」
「わかった。話はそっちで聞く」
須田はそう言って電話を切った。そして、すぐに三山に電話をした。
「よう、密会はどうだった?」
「これからそれを確認しにいくところだ。悪いが、そっちのほうは頼む」
「ああ、わかったよ。このクソ野郎は俺の店で接待しておく」




