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71.

 吉田はあまりにも動揺したせいか、何を話すべきなのかもわからなくなっているようだった。放っておくと見苦しい弁明ばかりをいつまでも繰り返していそうだった。

 須田は三山にその場をまかせて、清水を連れて事務所の外に出た。

「どうやら簡単にはいきそうにありませんから、清水さんは三島さんのところに行ってあげてください」

「ええ、わかりました。場所は、どこでしょう?」

「警察署ですよ。私が連絡しておきますから、石村という刑事を呼び出してもらえれば大丈夫です」

 清水は少し返事をするのを躊躇した。須田はそれを見逃さなかったが、見なかったふりをした。

「話のわかる男ですから、何も心配はいりませんよ」

「わかりました」

 清水は力強くうなずいた。

「警察署の場所はわかりますか?」

「ええ、大丈夫です」

 須田は歩きだした清水の後ろ姿を見送ると、石村に電話をかけた。

「よお、何か進展はあったのか?」

「まあ、あったんだけどな、なかなか難しい」

「そうか。それで、まさか用件はそれだけじゃないだろうな」

「ああ、今そっちに三島の父親だということになってた人物が向かってる。歓迎してやってくれ」

「それは面白いな。逃げる心配はないのか?」

「逃げるのなら、とっくにやってるはずだ。それなりの覚悟があるだろうから、うまく背中を押してやれれば、いい話が聞けるだろう」

「大事なお役目、感謝するぜ。そっちも早いとこいいニュースを持ってこれるようにしろよ」

 石村は皮肉っぽい調子でそう言って電話を切ろうとした。須田はそれを遮るように口を開いた。

「いいニュースはないが、嫌なニュースならある」

「なんだ?」

「吉田がドラッグの不法所持をしている。確証はないんだが、出来心でそこらへんで買ったというわけじゃないような気がする」

「弱いな、物があるならそいつは押さえられるだろうが、そこから先はどうなるかわからんぞ」

「それがそうでもなさそうでな。詳細は不明なんだが、どうやら吉田は3年前に奥と関わりを持っていたらしい。その時は興信所止まりで、何もわからなかったようなんだが」

「なるほど、それで絞ってるわけか」石村は少しの間黙っていた。須田には受話器の向こうでにやりと笑う石村の顔が想像できた。「それじゃ、そっちのほうは頼んだ。それより注意しろよ、黒幕をやってる奴はどんな手段をとってくるかわかったもんじゃないからな」

「ああ、そっちも気をつけてくれ」

 須田は電話を切って、再び吉田の事務所の中に戻っていった。

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