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7.

 須田は気分転換のために、机の上に積んでおいた資料を片付け始めた。別に好きなわけではないのだが、なんとなく頭がスッキリする。机の上が半分ほど片付いたころ、ノックの音が響いた。

「どうぞ、開いてますよ」

「失礼します」

 ドアを開けたのは若い女だった。女は落ち着きなく、事務所内を見回していた。須田は女を落ち着かせようと、穏やかな笑顔を浮かべた。

「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。どうぞ、お掛けになってください」

 女はまだ不安そうだったが、須田に言われるがまま、椅子に腰を下ろした。

「あの」女は少し口ごもったが、すぐに意を決したようにしゃべり始めた。「あの、私は三島理恵といいます」

 表情には出さなかったが、須田は内心では少し驚いた。依頼人の彼女とやらが現れるとは思っていなかった。

「私のことをあなたが知っているかはわからないんですけど」

 三島は言葉を切って、須田の顔を凝視した。須田はうなずいた。

「存じあげてますよ。何故かは答えられませんが」

「それじゃあ、私がここに来た理由はわかりますよね」

「今ひとつわかりませんね。よろしかったら、詳しい事情を話していただけませんか?」

 三島は大きく溜息をついて、しばらく視線を宙にさまよわせた。須田の顎のあたりで、それを止めた。

「そうですよね、それが一番ですよね」

「もちろん、秘密は守ります。安心してください」

「はい、わかりました」

 三島は力強くうなずいた。須田はボールペンと紙を用意した。

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