69.
三山がいきなり出しゃばってきたのは須田にとっては誤算だったが、どうやら結果的には悪くなかったようだった。吉田はすっかり縮み上がっていて、今ならゴキブリにも平身低頭して何でも吐きだしそうだった。
「それではまず、吉田さんが今回の件に関わることになった本当の理由を話してもらいましょうか」
「それはその、大得意になってくれそうなところから依頼があったので」
「その依頼主は誰です?」
「いえ、それはちょっと勘弁してもらえませんか」
三山が吉田のソファーの背中を思い切り殴りつけた。
「この後に及んでまだそれか、お前は」
須田はそれを手で制して、吉田に穏やかに話しかけた。
「では、依頼主は置いておくとして、なぜあなたが三島さんをここに連れ込んでいたのか、教えてもらいましょう」
吉田は普通の人間なら気の毒に感じて顔を背けたくなるような様子だったが、須田と三山はそんなことには全く無頓着だった。清水だけが気の毒そうにしていた。
「あの、口封じです」
「殺すつもりだった?」
「まさか、いや私は何も知りませんよ。ただ指示された通りにしただけなんです」
「それくらい想像つくだろ、このバカが」
三山の一言に、吉田は絶句してうつむいた。
「とりあえずあなたにはその気も、そういったことになるとも考えていなかったとしましょう。さて、次の質問ですが」須田は言葉を切って、吉田を正面から見すえた。「前田武志という人物はご存知ですよね」
吉田は無言で首を縦に振った。
「どうやって知ったかは、まあ別にいいです。あなたがその人物に関してどういった情報を聞かされていたか、それを教えてもらいましょうか」
「危険、危険でうるさい奴だと、そう聞かされてました。やらなくてもいいことばかりやる男だと」
「なるほど。ところで、この部屋から私が5年前に関わった事件のファイルが見つかったんです。あの事件はごく少数の人間しか知らないはずなんですが、どこから情報を手に入れたんでしょう」
「そ、それは」
須田はいきなり立ち上がると、テーブルを引っくり返した。そして足を外して、そこに作られていた隙間に隠されていた錠剤を取り出して見せた。
「これの入手先と同じじゃありませんか?」




