67.
一通り家捜しを終えた須田は、カーテンの隙間から外を監視していた。今回の件に関わる誰かが、確実にここに来るはずだという確信があった。
結果はすぐに出た。三島の父親と称していた男、清水裕仁が道路を渡って、このビルに向かってくるのが見えた。
そして、ノックの音が響いた。須田は黙ってドアを開けて、驚きの表情を浮かべた清水を、黙って部屋に引きずり込んだ。
「妙なところで会いますね」
須田の言葉に、清水は目を泳がせて、どう答えたものかと頭をひねっているようだった。
「余計な心配は必要ありませんよ、あなたのことはある程度わかっていますから」
「そうですか」清水は安心したようなあきらめてような様子になった。「いろいろお調べになったんでしょうね」
「ええ、あなたと三島さんが親子でないことはすぐにわかりました。三島さんは最初から私に偽名を名乗ってなかったので」
「ええ、あの時からいずればれるとは思ってました。まさかこういう形で、またあなたと会うことになるとは思っていませんでしたが」
清水は清々した表情になっていた。須田は清水に応接用のソファーをすすめて、自分も向かい側に腰を下ろした。
「詳しい話を聞かせて頂けると期待してもかまいませんか?」
「ええ、わかっている範囲でお話します。でもその前に一つ確認しておきたいことがあります」
「三島さんでしたら、安全な場所に居ます。これ以上危険な目にあうことはありません」
「そうですか」清水は安堵の溜息をついた。「実はここに来たのは、彼女を預かっていると連絡を受けたからなんです」
須田はうなずいた。清水はその反応を見て、続けた。
「もうご存知でしょうが、私と彼女は親子でもなんでもありません。まあ遠い親戚なんですが。それで、突然連絡があって、どうしても力を貸して欲しいことがあると言われたんです」
「それが親子と偽って家を借りて欲しいという、ということだったんですか」
「それは頼みごとの一部でした。もちろんいきなりそんなことを頼まれても、はいそうですかとは言えません。詳しい事情を話してくれるように言いました」
誰かが鍵のかかっているドアを開けようとしている音で、清水の話は中断された。須田は立ち上がって、ドアの陰になるような場所に移動した。清水には動かないように身振りで指示をした。




