58.
須田は突然切れた電話の内容を考えるよりも先に、すぐに三山に電話をかけた。
「三島から連絡があった。どうもまずい状況らしい」
「どれくらいまずいんだよ」
「すぐに動かないと最悪のケースになりそうだ」
「ああ、それはそれは。で、俺にどうしろって?」
「3丁目のファミレスのあたりで人手が必要だ」
「あの小汚いところか。ファミレスで悶着があって応援が必要ってわけじゃないよな?」
「確証はないが、それはないだろう。電話をかけてる時に連れ出された可能性が高い」
「それだと、近くに居るかどうかわからんぞ」
「それでも押さえておく必要があるから、とにかく人手が必要だ。聞き込みは俺がやる」
「そうか、ちょっと待ってろ」
三山は電話を置いて、近くの誰かに人を集めるように指示を出した。須田はしばらくやりとりする声を落ち着いて聞いていた。
「とりあえず5人そっちにまわせそうだ。しかしこりゃ堅気の仕事じゃないな」
「警察はこの状況じゃまだ動けないからな。それと、お前のことを堅気だと思ってる奴はいないから安心しろ」
「嫌な話だな全く。ほとんど堅気だろうがよ俺は」
「それじゃ頼んだぞ」
須田は三山の愚痴は無視して電話を切った。そしてすぐに石村に電話をかけた。
「三島の件で動きがあった」
「まずいことか」
すぐに本題に入った須田の緊迫した雰囲気に、石村も声を緊張させた。
「3丁目のファミレスから俺に電話があったんだが、その途中で誰かにつかまった」
「そいつはまずいな。この状況じゃこっちはあまり動けないぞ」
「それならもう手配済みだから、すぐに動けるように準備だけしておいてくれ。最終的には絶対必要だ」
「了解。大物を見失わないでくれよ」
「できるだけやってみるつもりだ」
須田は電話を切って、ジャケットを手に取った。引き出しから作業用の厚手のグローブを取り出してポケットに突っ込みながら、勢いよくドアから外に出た。




