53.
石村との話を済ませた須田は、事務所に向かっていた。石村相手にかなり口を滑らせた結果がどうなるかはわからなかったが、おそらくあいつなら何らかの動きをしてくれるだろう、と須田は予想していた。
たとえ個人的に動くだけだとしても、石村は警察に所属している。つまり、警察が動いていると錯覚させる可能性がある。何も得られなかったとしても、今回の件の当事者たちにプレッシャーだけはかけることができる。そうなれば何か出てくるかもしれない。
考えているうちに、須田は事務所に到着した。ドアを開けて暗い事務所に入ると、電話の留守番電話を知らせるランプが点滅していた。須田は明かりをつけてから再生ボタンを押した。
「ああ、俺だ」三山の声だった。「さっきまでお前の依頼人と飲んでたよ」
須田はメモ用の紙とボールペンを手元に引き寄せた。
「あれは相当切羽詰ってるな。初対面の俺に対して、自分のやってることに協力してくれと言ってきやがったよ。まあもっとも、俺のことはある程度知っていたのかもしれないけどな」数秒沈黙があった。「そういうわけだから早めに連絡をよこせよ。どうにも妙な感じだ」
留守番電話はそこで終わった。須田はメモを一度見返すと、すぐに受話器を取って、三山に電話をかけた。すぐに三山がでた。
「ああ、遅かったな」
「真面目に仕事をしてたんだ」
「そりゃご苦労。 俺の留守電よりもいい情報はあったか?」
「それはこれから出てくるかもな。偶然にも警察の人間が私的に動く見込みだ」
「なるほどなあ、それは期待できそうだ。でもこっちもなかなか面白いぞ」三山はもったいぶるようにタメを作った。「嘘つきな愚か者の話だ」
「どこらへんが嘘だったんだ」
「どっかのヘボ探偵に話したことは大体嘘だとさ」
「なるほど」
「おや、ショックは受けないのか?」三山はいかにも笑いをこらえている雰囲気だった。「かませ犬にされたんだぞ」
「今となってはどうでもいいことだ。それに、最初の依頼通りの男の嫉妬を満足させるなんてものなら、今頃報告書を作って終わりにしてる」
「俺なら門前払いだけどな」
「それはそうと、早いところ内容を話してくれ」




