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43.

 須田は帰りの新幹線の中で、景色を見ながらこれからの事を考えていた。いよいよ5年前の事件とのつながりはハッキリしたように思えた。大平の言った前田と今の依頼人が同一人物だという明確な証拠は無いのだが、須田はすでに同一人物だろうという確信を持っていた。

 そうであるならば、問題は前田が須田に依頼を持ち込んできたのはなぜか、ということだった。偶然であることはあまりありそうにない。須田の事務所は一般にはほとんど知られていなくて、飛び込みの依頼などはほとんどないからだ。何も知らずに依頼を持ち込んで、偶然にもそれが5年前の事件と深く関わっているというのは、確率的に低すぎる。

 考えられるありそうな可能性は、前田が5年前の件の決着をつけようとしているということだった。自分の兄弟が死んだか殺されたかしたことの真実を探ろうとしているのかもしれない。そして、その関連に唯一気づくことができるのが、かつて失敗した探偵、須田正人なのかもしれない。それにしも、なぜ今なのか。それが一番わからない。

 そこで須田は考えるのをやめた。理由などはどうでもいい、今は目の前の依頼を解決するのが重要だ。目の前の問題に取り組んでいけば、おそらく答えは見えてくる。

 須田はそう考えて目を閉じたが、携帯電話が鳴った。

「はい、須田です」

「おい、お前今どこだ」

 電話は石村からだった。少し切迫したような様子だった。

「出張帰り中でな、1時間半くらいで戻れる予定だ」

「そうか、それじゃあ戻ったらすぐに署に来てくれ」

「何があったんだ」

「あの襲われた女、三島だったか。彼女がまた襲われた」

「彼女は無事か」

「ああ、それは大丈夫だ。彼女の病室に乱入しようとした男がいたんだが、病院の職員がなんとか押さえている間に、パトロールしてた警官が間に合った」

「そうか。それで、その男は何者なんだ」

「名前はまだわからん。チビの筋肉野郎らしいんだけどな、まあ目立つ男のようだからすぐにわかるだろ」

「わかった、戻ったらすぐにそっちに行く。その男の写真を用意しといてくれ、知ってる奴かもしれない」

「期待してるぜ」

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